第6話:深核フェーズ1開放──“黒”と“光”の初共闘
影獣が吠えた。
王都前広場の空気が裂け、
黒い霧があたりに散る。
その巨体は、ルイより十倍以上。
霧でできた肉体は揺らぎ、
中心に“赤黒い球”が脈動している。
(あれが……影獣の“核”……
俺の深核に似てる……!)
深核が胸で震える。
『喰える……喰えるぞ……
あれは“同族の欠片”……』
(静かにしろ! 今は暴走したら終わりだ!!)
だが暴れようとする黒を
セリアの光が押し止めている。
「ルイ……!
今はまだ深核を使える……行って!」
「ありがとう、セリア。離れんなよ!」
リュミアも続く。
「こちらの光核は維持しますわ!
暴走だけは抑えてみせます!!」
(二人が……俺を支えてる……
なら、行くしかない!)
◆
影獣が地を蹴った。
――速い。
「来るぞ!!」
ユリウスの叫びと同時、
影獣の爪が地面を割りながら迫る。
周囲の騎士たちが反応しきれない速度。
「……っ!」
ルイは拳を構えた。
「深核……
第一制御形態《フェーズ1》、起動!」
黒が拳に集束する。
完全な暴走でもなく、
白光のように暴れもせず、
ただ静かに“凝縮”された黒。
右腕が黒い紋様に染まる。
ユリウスが目を見開く。
「あれは……影の魔力じゃない……
“質”が違う……!」
◆
影獣が跳ぶ。
巨大な爪が振り下ろされる。
ルイは動かない。
ただ、深呼吸をし――
「――“黒穿”」
拳を突き出した。
瞬間、
黒い衝撃が一直線に伸び、
影獣の腕を貫いた。
「ガァァァッ!!」
影霧が爆ぜ、腕が弾ける。
(……やれる……!)
◆
祓魔師たちがざわめく。
「今のは……何の魔法!?」
「詠唱もなし……!?」
「いや、属性が違う……深淵の……?」
影獣は怒り狂って突進してくる。
「次は……これだ!」
ルイが地を蹴る。
影獣の脇腹へ飛び込み――
「“黒裂”!!」
黒の刃のような衝撃波で
影霧の肉体を裂いた。
影獣は苦痛の咆哮をあげ、
霧が崩れ落ちる。
◆
「ル、ルイ……すご……!」
セリアが呆然としながらも、
しっかり光核を維持している。
リュミアも震えていた。
「深核の……制御……
数百年、誰も成功していない禁忌を……
少年が……?」
ユリウスは納得したように頷いた。
「やはり……“鍵”か。
深核を使い、暴走せずに技として出すとは……」
◆
影獣が最後の力で襲いかかる。
赤黒い核が丸見えになっていた。
(これが……奴の弱点!)
黒がルイに囁く。
『それを砕け……
喰らえば“強さ”が増す……』
(喰わねぇよ!)
ルイは拳を握り――
「行くぞ……!」
セリアの光が後押しし、
リュミアの光が深核を安定させる。
黒い拳が煌めく。
「――“黒砕”!!」
拳が赤黒い核に命中した瞬間、
影獣の肉体が一気に崩壊――
黒い霧が空へ消えていく。
「……ッ!!」
ルイはその勢いに押されながらも、
しっかり着地した。
深核は静かだ。
セリアの光核が温かく包む。
「……ルイ、
大丈夫……?」
「ああ。
二人のおかげで、ちゃんと戻れた。」
セリアは安堵してルイの胸にしがみついた。
「よかったぁぁぁぁ!!」
「ちょ、お前……みんな見てるって……!」
周囲がざわつく。
「鍵候補……本物だ……!」
「少年が……影獣を……?」
「光核の少女と王女殿下が支えて……?」
ユリウスが静かに言う。
「ルイ。
今ここで、正式に認める。
――お前は深核使い《アビスベアラー》だ。」
そして。
「それを制御し得るのは……
“光核を持つ少女たち”だけだ。」
そう言って、二人――
セリアとリュミアを見た。
◆
こうしてルイは
“初めての深核戦闘”を制し、
その存在を王都に知らしめる。
だがこの勝利は、
さらなる厄災の序章でしかなかった。




