第4話:王都地下“影穴”──三勢力共闘の初戦
王都中心街の奥――
石畳の隙間から立ち上る黒霧は、
まるで“世界の裏側”へ続く穴の息遣いのようだった。
「……ここか。」
ユリウスが短剣を抜く。
「警戒しろ。
これは“門”ではないが……
影穴。
影界と現世の境界が削れてできる“裂け目”だ。」
「つまり……穴の向こうに影がいる?」
「ああ。
しかも今回は“呼ばれて”集まっている。」
(呼んでるのは俺じゃないからな……
勝手に寄ってきてるだけだからな……)
◆
入口前に、既に二つの勢力が集まっていた。
王都近衛の白銀部隊。
教会の祓魔師たち。
二組の指揮官が、ユリウスに声をかける。
「影狩り部隊副隊長。
まさか本当に“鍵候補”を連れてくるとは。」
「子供を危険に晒す気か?」
厳しい視線。
冷たい空気。
そのすべてを、リュミアが一歩前に出て払った。
「彼は必要です。」
王女の言葉は、それだけで周囲を黙らせた。
「ルイ・アーヴェントは――
影穴が開くたびに必ず反応する。
つまり、この現象の“核心”を感じられる唯一の者。」
(いや、感じたくて感じてるわけじゃ……)
「彼なしでこの穴を閉じることは不可能でしょう。」
(さらっとすごいこと言った!!)
教会側の祓魔師が眉をひそめる。
「しかし殿下……
あの少年は深淵の気配を――」
「黙りなさい。」
氷のような声だった。
セリアが少しだけ驚いた顔でリュミアを見る。
(リュミア……外見は優雅なのに、中身はめちゃくちゃ強い……)
リュミアが振り向き、ルイにそっと問う。
「ルイ。
影の気配、どう感じますか?」
「……うん。
“奥”に、ひとつ――でかいヤツがいる。」
その瞬間、ユリウスと祓魔師、近衛軍が同時に目を見開く。
「奥……!? まだ視認できないはず……!」
「いや、確かに……揺れている……!」
ルイの瞳には、
影が生き物のように“蠢く”様子が映っていた。
(奥のやつ……今までの影と違う。
“知性”あるタイプだな……)
深核が微かに反応している。
◆
「全隊、構えッ!!」
ユリウスの号令で、
三勢力の武器が一斉に引き抜かれる。
リュミアが光の魔法陣を展開し、
セリアも胸に手を当て光核を震わせた。
(セリア……少しずつ光核の制御が上達してる……!)
2人の少女の前に立ち、
ルイは深呼吸した。
「よし……行こう。」
「ルイ!! 無茶はだめ!」
「しないよ。
無茶は“死ぬ前提”ってことだし。」
「そ、そうだけど……!」
リュミアは微笑む。
「大丈夫。私が守りますわ。」
「いや私も守るから!!」
セリアが声を荒げた。
2人の間に小さな火花が散る。
(お、おお……これヒロイン同士のやつだ……!)
◆
ユリウスが短剣を前に構える。
「ルイ、合図を頼む。」
「……くる。」
影穴の奥で――
巨大な影が、ゆっくりと立ち上がった。
それは獣の形をしているが、
骨のような四肢に、霧でできた背中。
口は闇に裂け、赤い光が滲む。
「“影獣”……!」
「いや違う!!
これはもっと“上位”だ!!」
祓魔師たちが叫ぶ。
(分かる……あいつ、今までの影と格が違う……!)
深核が熱を帯びた。
『……食らわせろ……』
(やべ、深核が出た……!)
穴の奥から、
影獣の咆哮が轟く。
「ルイ!!」
セリアの光核が爆ぜ――
ルイの手を掴む。
「大丈夫。
光核が深核を抑えるから!」
(……セリア、強くなったな……)
リュミアも魔法陣を展開する。
「行きますわ!
三勢力合同――第一波、迎撃開始!!」
「総員――前へ!!」
影穴から影獣が飛び出す。
王都の心臓で、
ルイたちの“初の合同戦闘”が始まった。




