第3話:王都“エルディア”の心臓――王女リュミアとの邂逅
王都エルディアの中心街を抜けたときだった。
「――止まれッ!!」
甲高い声が響き、道がぱっと割れた。
白銀の鎧を纏った近衛軍が走ってくる。
街中なのに、完全武装。
普通じゃない。
(え? 俺なんかした?)
ユリウスが即座にルイの前に立つ。
「来るぞ。“王族の行列”だ。」
(え、王族!?)
近衛が次々に道を固め、
中央通りを覆うほど巨大な白い馬車が現れた。
王城の紋章――“光の翼”。
(絶対偉いやつ乗ってるやつじゃん……!)
人々がざわめき、跪く者まで出始める。
「お、おい……あれ王女殿下じゃねぇか?」
「なんでこんな街中に……?」
「しかも直々に……誰を迎えに来たんだ……?」
(迎え……? まさか……俺じゃないよな……?)
ユリウスがため息をつく。
「予想通りだ。
王家も“鍵候補”を直接確かめる気らしい。」
(やっぱり俺かーーー!!!)
◆
白馬車の扉が、ゆっくりと開いた。
眩しいほどの光があふれ――
一歩、少女が降り立つ。
「……きれい……」
思わずセリアが呟いた。
金糸のような長い髪。
湖のような蒼い瞳。
白と金の純白ドレス。
空気が変わるほどの存在感――
王女リュミア・エルディア その人。
(……やば。王族オーラ半端ない。)
だが次の瞬間、
リュミアは人混みを真っ直ぐに歩き、立ち止まった。
目の前には――ルイ。
「あなたが……ルイ・アーヴェント様ですね?」
「えっ!? あ、えっと……はい。」
セリアがピクッと反応して腕を掴む。
(なんか敵意出てない!?)
◆
リュミアは品よく微笑む。
「影門事件、そして学院地下の本命門。
すべての中心で名が挙がった少年。
ずっとお会いしたいと思っていました。」
(言い方が怖い……でも綺麗……)
近衛たちは緊張しっぱなし。
ユリウスだけが眉をひそめていた。
「殿下、なぜ急にここに?」
「父が言いました。
『鍵候補を見誤るな』と。」
その言葉に――
ルイの胸の黒と白が、微かに震えた。
(……なんで王家まで“鍵”って知ってんだ?)
リュミアは続ける。
「私には“見える力”があります。
光核を見る目――
そして……あなたの中の黒い揺らぎも。」
(えっ!? バレてる!?)
セリアがルイの前に飛び出る。
「ルイに変なことしないで!」
「しませんわ。」
リュミアは穏やかに笑う。
「ただ……彼の力は“国家級”。
王都へ入る前に、
一言だけ伝えたいことがあったのです。」
「……?」
ルイが聞き返そうとした瞬間――
リュミアの瞳が、ふっと陰を帯びた。
「――気をつけて。
本命門が動きました。」
(……!!)
周囲の時間が止まったように感じた。
「城下三番街の地下――
“影の穴”が開きかけています。
あなたが来たことで、影が呼応したのです。」
(いや俺呼んでない……! 呼ばれてるだけ……!)
リュミアは続ける。
「私も現地へ向かいます。
あなたも来るのでしょう? ルイ様。」
「……行く。
行かないと……多分、もっとこじれる。」
リュミアも微笑む。
「ええ。
あなたが動くと、世界が大きく揺れますから。」
(やっぱり怖いこと言った!!)
セリアは完全に警戒した目つき。
「ルイを巻き込まないで!」
「巻き込むつもりはありませんわ。
ただ――彼が世界を救うなら、
私はその力になるだけ。」
(あ、これ……完全に“ヒロイン追加フラグ”だ……)
◆
そのとき、ユリウスが短く告げる。
「……殿下。
“穴”から、魔力大放出だ。」
「早い……!」
空気が震えた。
王都の中心で――
黒い霧が、天へと噴き上がる。
そしてリュミアは言った。
「ルイ。
一緒に来てください。」
黒が呼ぶ。
光が反応する。
そして王都最大の事件が、幕を開けた。




