第25話:影狩り試験──“黒狼”の気配
影狩り部隊との合同訓練が始まって二日目。
ルイとセリアの前に立つユリウスは、
いつも以上に険しい顔をしていた。
「今日の課題は……“影残滓の追跡戦”だ」
(追跡……? 戦うだけじゃないのか?)
ルイが疑問に思うより早く、
ユリウスは指で地面を弾いた。
“影”が地面に滲み、ミミズのように蠢いた。
「こいつは《低位影核虫》だ。
弱いが――足が速い。逃せば森に散る。」
「捕まえるの……?」
「違う。倒す前に、“核”を見極めて報告しろ。
影と戦うなら、まず核を見る癖をつけろ。」
(なるほど……影は全部“核”から再生するもんな)
セリアが緊張気味に頷く。
「ルイ、行こう……!」
「おう」
◆
二人が走り出すと同時に、影虫も滑るように逃げ始めた。
「速っ!」
「ルイ、右!」
セリアが前に出て光の粒子を散らして進む。
その瞬間――
ルイの胸の奥が“熱く震えた”。
(……来た)
《黒》が、影の波動に反応する。
視界の端だけが、わずかに暗く染まる。
「ルイ!? 大丈夫?」
「大丈夫……まだ制御できる……!」
影核心が脈打つように震え続ける。
(……追ってる影虫の反応じゃない。
もっと……近い。もっと“デカい”……?)
嫌な感覚が背中を這った。
◆
ユリウスの声が背後から飛んだ。
「ルイ、感じたな?」
「感じた……これは……」
「低位影虫じゃない。
“影獣”が森の奥にいる。」
(影獣!? そんなの聞いてない!)
「試験内容、変更だ。」
ユリウスが短剣を抜いた瞬間――
森の奥で“黒い波動”が爆ぜた。
地面が震え、鳥が逃げ散る。
「来るぞ。構えろ!」
ルイの《深核》が震え、
セリアの《光核》がそれに反応して光を帯びる。
「ルイ……あれ、ヤバい……!」
木々を押し割るように巨大な影が現れた。
四足。
狼のような姿。
黒い煙のように揺らめく毛並み。
そして眼だけが真紅に燃えている。
「……影狼かと思ったが――違うな」
ユリウスの声に焦りが混じる。
「これは……“影狼の上位種”。
黒炎狼フェンリスの幼体だ。」
(フェンリス!?
これ……俺の“深核”に反応してる……!)
黒炎が狼の口から漏れた。
「ガアアアアァァァッ!!」
ルイとセリアの肌が焼けるような熱に襲われる。
「ルイ、下がって!! これは危険すぎ――」
「……いや、逃げねぇよ」
黒い炎を前に、ルイは静かに足を踏み出した。
(わかる……“こいつ”は敵じゃない。
――呼ばれてる側だ。俺が。)
胸の《深核》が脈打ち、
黒い波紋がルイの足元に広がる。
黒炎狼の赤い目が、ルイをまっすぐ見据えた。
セリアが叫ぶ。
「ルイ!! 危ないってば!!」
ユリウスは目を細めた。
「……おい。
まさかだが――」
ルイの影が、わずかに狼の影と“繋がった”。
「フェンリス幼体が……
双核持ち(デュアルコア)に従属しようとしている……?」
(まって……ペットイベント……
これ、ガチで来たやつだ……!!)
黒炎狼フェンリスが大きく牙を剥き――
“従属の一撃”をルイへと放ってきた。
(来る……!!)




