第23話:光核の訓練開始──セリアの“本能”が牙を剥く
影狩り試験場の奥には、さらに広い円形の訓練区画があった。
黒い大地に、白い紋章が刻まれた円。
そこだけが異様なほど光を帯びている。
「ここが……光核の訓練場?」
セリアが小さくつぶやいた。
ユリウスは無表情のまま説明する。
「影狩り部隊が使う“光核・専用抑制フィールド”。
光核は強すぎると周囲を焼く。
だからこうして力を“閉じ込める”必要がある。」
(……え、そんな危険物扱いなの?)
セリアは緊張したように指を組む。
「わ、私……そんなに危ないのかな……」
「少なくとも、お前は“学院史上最強”の光核保持者だ。」
「そ、そんなの初めて聞いたんだけど……!?」
◆
ユリウスが手を叩く。
「ルイは外で見ていろ。
セリアの光核は“刺激”に弱い。
深核が近いと暴走率が上がる。」
「あ、じゃあ俺ここで——」
「いや、ここにいろ。」
「どっちだよ!!?」
「近づくなという意味だ。」
(言い方ァ!!)
◆
ラザールが優しく笑う。
「セリア。
まずは“光核(Lumen Core)の流し方”を学ぼう。
君が普段やっている魔力操作は……まだ“人間の魔力”なんだ。」
「え……?」
「光核は本来、“魔法”ではない。
“魂力”だ。」
ルイが首をかしげる。
「魂……力……?」
「そう。
魔力よりも深く、強く、純粋。
そして……暴れやすい。」
(あ〜〜〜〜セリアがよく爆ぜてるのって、それが理由か……)
◆
ラザールはセリアの手を取り、胸の位置へ触れさせる。
「静かに、ゆっくり感じて。
光核の呼吸を。」
セリアの瞳が細められる。
「……うん……なんか……暖かい……
光が……呼吸してるみたい……」
「その通り。
それを……解き放て。」
「え、いきなり!?」
「大丈夫。ここは安全だ。」
(いや安全じゃないでしょ絶対!!)
◆
セリアは深呼吸し、姿勢を整えた。
ルイには分かる。
“あのモード”に入ったときのセリア特有の静けさだ。
(セリアの光核……暴走寸前の前の、あの感じ……)
◆
次の瞬間、
ぱん!
と空気が弾けた。
セリアの髪がふわりと浮く。
淡い光が彼女の体の内側から漏れ始め——
「……くる……!」
光核が、目覚める。
◆
白い光が足元から駆け上がり、
セリアの周囲を数メートルにわたって照らし出した。
「なっ……!」
「これが……光核の“素”か……!」
ユリウスでさえ息を呑む強さ。
だが次の瞬間。
バチッ!!!
光が暴れた。
「セリア!!」
「だ、大丈夫っ……!!
まだ……制御できる……!」
だが光核はセリアの意志を超えて広がり、
訓練場全体を照らすほどの光柱へと変わっていく。
◆
(やべぇ……!)
ルイは直感的に理解した。
セリアの光核——
“覚醒寸前”だ。
◆
セリアは必死に踏ん張る。
「だめ……!
広がっちゃ……!」
光が天へ向けて暴れ跳ねる。
ルイの目が細められる。
(セリア……怖がってる……)
深核がざわめき、
名前もない影が“主”を助けようと揺れた。
(……待ってろ。
今、お前の出番じゃない)
ルイは一歩踏み出す。
◆
「セリア!!」
「ルイ……っ!」
「大丈夫だ。
お前は一人で戦うんじゃない。」
その声に、光がわずかに弱まる。
(やっぱり……俺の声が一番届くんだな)
そして、ルイは静かに手を伸ばした。
「……セリア。
俺だけを、見ろ。」
その瞬間——
光核が、セリアの意識と一体化し始めた。
(……ルイ……?)
光核
『その声……共鳴する……』
(あ……これ……)
光核
『名を……呼んで……ほしい……』
(……名前……)
◆
ルイの瞳が揺れる。
(光核にも名前が必要なんだ……
じゃあ近いうちに、“名付けの儀”は……二つ同時か)
セリアは震える声で言った。
「ルイ……
私の……光……怖くない……?」
ルイは笑った。
「怖いわけないだろ。
お前の光は——」
「——俺が守る光なんだから。」
光が一気に静まり、
訓練場は再び静寂に包まれた。
◆
こうして——
セリアの光核(Lumen Core)は“覚醒寸前”
ルイとの共鳴で初めて自我を見せ
名を求め始める
そんな重要な変化を迎えることになる。
だが、これはまだ前兆。
深核と光核——
“二つの核の名付け”が始まる時、
世界のルールが揺らぎ始める。




