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転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第3章:王都編

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第18話:影狩り試験──“黒の共鳴”が牙を剥く

 学院裏庭。

 昼のはずなのに、空気はやけに冷たい。


 木々の影が長く伸び、

 風が吹けば黒い粒子がちらりと散る。


(……やっぱりいる。影の気配だ)


 ルイは一歩踏み出し、拳を握った。


 セリアはすぐ後ろに付き添い、

 その横には――影狩り部隊シャドウハンター副隊長・ユリウス。


「試験開始まで三分だ。集中しろ」


 淡々とした声。

 だがその視線は、獲物を見る獣のように鋭い。



 ユリウスは短剣を抜き、地面に突き立てる。


 カツンッ。


 その瞬間。


 地面に走った影が、まるで“呼び声”に応じるように揺れた。


「……出るぞ。」


 黒い霧が地面から噴き上がる。


 けれど、それはただの影獣ではなかった。


 低く、蠢く。

 目が五つ。

 腕が四本。

 脚は獣のように歪んでいる。


 学院の疑似門で見た影と比べても“質”が段違いだ。


「なっ……なにあれ……!」


 セリアが息を呑む。


(影残滓じゃない……“準核影セミコア・シャドウ”……!

 こいつ、普通にやばいやつだろ……!)



 ユリウスは短く言い放つ。


「ルイ。

 これを三分、引きつけてみせろ。」


「ひ、引きつける!? 倒すんじゃなくて!?」


「倒せなくていい。

 ただ“死なずに戦え”。

 影はお前を狙う――それを利用しろ。」


(こいつほんっっっと容赦ねぇ!!)


 セリアがルイの前に飛び出す。


「待って! ルイを一人で前に出すなんて――!」


 しかしユリウスは首を振った。


「光核の少女。

 君がそばにいると“均衡が崩れる”。

 黒が暴走する可能性が高い。」


「な……っ」


 セリアは言葉を詰まらせ、ルイの方を見る。


「ルイ……行かせたくない……」


 揺れる瞳。

 震える手。


 ルイはその手をそっと握った。


「……すぐ戻る。

 たぶん、俺が一番よく知ってる。

 逃げたら――もっと危なくなる。」


 言葉は静かだったが、決意が込められていた。


「……ルイ……信じる。」


 セリアの光が微かに震え、

 その優しい光がルイの黒へ“触れないように”遠くで揺れた。



 影が動く。


 ドンッ!!!


 獣の脚で地面を踏みしめ、

 四本の腕を一気に開く。


 目がルイだけを見据えた。


(……来る!)


 ルイは地面を蹴った。


 跳ぶ。

 回避。

 影の腕が風を裂き、地面が抉れた。


 もう一撃、もう二撃。


(速い……! でも、見える……!)


 胸の奥の“黒”が脈打つ。


『……喰らえ……』


(やめろ! まだ暴れるな!)


 ルイは深呼吸し、足の位置を変える。


 影の腕が迫り――


「っらぁ!!」


 回転しながら拳を影の“中心”に叩き込んだ。


 影が吹き飛び、木に激突する。


 だが――


 影はすぐに立ち上がった。


 裂けた体が自動で修復されていく。


「……再生持ちか。

 おい、ルイ。油断するな」


「知ってる!!」



 影が突進してくる。


 四本の腕が、同時に。


(避けられない──!)


 その瞬間。


 胸の黒が、ぐつりと泡立つ。


『……もっと……喰わせろ……』


(ダメだっつってんだろ!!)


 だが影の腕が迫る。


 ルイは一瞬だけ黒を解放した。


 ――ズンッ。


 地面に黒い紋が一瞬浮かび、

 影の腕が“弾かれた”。


「っ!?」


 ユリウスが初めて声を漏らす。


「今の……防御……?

 いや……“拒絶反応”……!」


(……やばい……今の、完全に深淵側の力……!)


 黒は勝手に囁く。


『もっと……解き放て……』


(やめろ!!)



 三分が経とうとした瞬間。


 影は咆哮し、

 形を“変えた”。


 腕が八本。

 脚が二本から四本に。

 口が横に裂ける。


 これはもう――


(準核影じゃない……

 “半核影デミ・コア”だ……!!)


 ユリウスが叫んだ。


「ルイ!! 下がれ!!

 そのクラスはまだ早い!!」


(いやいやいや無理!! 下がる暇ない!!!)


 影が一気に飛ぶ。


 セリアが叫ぶ。


「ルイいいいいい!!」



 その瞬間。


 セリアの中の“白”が爆ぜた。


 遠くにいるはずの彼女の光が、

 ルイの“黒”に触れた。


 世界が白と黒に裂ける。


『……光……? やはり来たか……』


『黒……っ、離れて……!』


 魂核が激しく揺れた。


 黒が暴走しかけ、

 白が必死で押し返す。


 胸が焼けるように熱い。


(やばい……このままだと……!)



 ルイは叫んだ。


「セリア!! 近づくな!!

 光と黒が……混ざる!!」


「でも……!!」


「大丈夫!!

 だから……見るだけでいい!!!」


 その言葉にセリアの光が震え、止まった。



 そしてルイは――


 黒を“ほんの少しだけ”解放した。


「……来いよ。」


 影が突進する。


 黒い軌跡。

 裂ける大地。

 空気が震える。


 ルイの拳が、黒い残滓を纏った。


 ――ドンッ!!


 影の核を貫く。


 半核影は絶叫し、

 霧となって消滅した。



 静寂。


 風が吹き、草が揺れる。


 ユリウスがゆっくり歩み寄った。


「……合格だ、ルイ。」


「はぁ……はぁ……

 死ぬかと思った……」


「死ぬ試験だからな。」


(いやお前ほんと容赦ねぇよ!!)


 セリアが駆け寄り、

 限界ギリギリの光を抱えてルイを抱きしめる。


「もう……ほんとに……っ!」


「……ごめん。」



その時、ユリウスが低く呟いた。


「ルイ。

 君の黒は“扉を開けたがっている”。

 王都へ行けば――必ず“呼び声”が強くなる。」


(……わかってるよ。

 でも俺は沈まない。)


 ルイは立ち上がり、拳を握る。


「行こう。

 まだ……始まったばかりだから。」


これは

“王都影門事件”の序章にすぎなかった。

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