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転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第3章:王都編

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第15話:王都の影──“監察局本部”が動く

 学院外縁の戦闘が落ち着き、

 深淵の残滓も散り、

 ルイたちは一旦寮まで戻っていた。


 だが。


 学院の空気は、

 “鎮まった”のではなく――“凍りついた”。


 理由はひとつ。


 王都から――

 監察局の本部組織が派遣されたからだ。



「……来たか。最悪のタイミングだな」


 学院長ベルムートが苦々しい声で呟く。


 正門前には黒い馬車。

 その車体には、剣と天秤を組み合わせた紋章。


 ――王都監察局《本局》。


 地方支部ではない。

 本局直属の“特命班スペシャル・オフィス”。


 学院の教師でさえ近づけないほど空気が張りつめている。


(なんか……ヤバい人種の匂いがする)


 ルイは背後にいたセリアの手を握ってやる。


「ルイ……怖い……」


「大丈夫。俺の方が怖いから」


「えっ」



 馬車がゆっくりと止まり、

 黒い外套の男が三人降りてきた。


 だが一番最後に降りた人物に――


 学院全体が一瞬で息を呑んだ。


 白銀の軍服。

 背まで届く黒い髪。

 鋭すぎる灰色の瞳。


 彼は静かに名乗った。


「王都監察局・特命執行官、

 ――“灰刃はいじん”オルファス・ヴァルクス」


(名前からして怖すぎるだろ!!)


 ラザールでさえ目を細める。


「本局が……動いたか」


「ラザール君でも驚くのかね?」


「彼は王都の“切り札”だ。」


(切り札って……切る方? 切られる方?)


 オルファスの視線は、すぐに一点へ向いた。


 ――ルイ。


 その目はまるで“対象物”を見るようで、

 恐怖ではなく“無機質”だった。


「アーヴェント・ルイ。

 学院影門事件の最重要観察対象――確認した。」


(確認されたくなかった!!)


 周囲がざわめく。


 教師たちも、生徒も、ラザールさえも。

 彼の登場は、それほど重かった。



 オルファスは、何の前置きもなく言った。


「ルイ・アーヴェントを――

 一時的に 王都監察本部へ同行させる。」


「はぁ!?!?」


 思わず声が出た。


 セリアも叫ぶ。


「ルイは行かせません!!」


 オルファスが冷静に返す。


「これは命令だ。

 光核保持者も関係ない。」


「関係ないわけある!?

 ルイがいなかったら学院みんな死んでたんだよ!!?」


 珍しくセリアが感情むき出しで怒鳴った。


 オルファスの灰色の目が、ほんのわずか揺れる。


「……光核保持者がここまで感情的とは。

 興味深い。」


(いや今そこじゃない!!)



 ラザールが一歩前に出る。


「オルファス殿。

 ルイ君はまだ子どもだ。

 学院の保護下に置くべきでは?」


「子ども――?」


 オルファスはゆっくりと、

 ルイとその胸の奥の“核”を見るように視線を重ねた。


「……子どもではない。

 あれはもう、“鍵”だ。」


(やばい、この人ぜってー話通じねぇタイプだ……!)



 セリアが震える声で言う。


「ルイを……連れてくなら……

 わたしも行きます……!」


 だがオルファスは、微塵も表情を変えずに告げた。


「光核保持者は現状危険度Aa。

 本局への同行は許可しない。」


「なっ……!」


(超ランク高ぇじゃん俺たち!!

 喜べないけど!)



 そのとき。


 ルイは、一歩前に出た。


「……ひとつ質問」


 オルファスの目が細まる。


「言え」


「俺を連れていく理由って――

 “学院地下の本命の影門”が、俺に反応したから?」


 周囲が静まり返った。


 だがオルファスだけは、ためらいなく言った。


「そうだ。」


「……やっぱりか」


 ルイは胸に手を当てる。


 影の主の囁きが、胸の奥で薄く響く。


『来るぞ、鍵よ。

 王都は“最初の入口”だ』


(……知ってたよ)


 ルイはゆっくり顔を上げる。


「行くよ。

 でもただ一つだけ条件。」


「条件?」


「セリアとラザールは――

 どちらも王都に同行させる。」


(俺だけなら完全に孤立する。

 この二人は外せない)


 オルファスは静かにルイを見た。


 長い沈黙の後――


「……よかろう。」


「マジで!?」


 周囲がざわつく。


 ラザールも小さく驚いた。


「異例だな……本局が譲歩するとは」


「鍵の安定が優先だ」


 淡々と返すオルファス。


 そして。


「三日後、王都本部へ向け発つ。

 それまでに全ての準備を整えろ。」


言い残すと、

灰色の外套が翻り、王都からの使者たちは去っていった。



残された学院は――

圧倒的な存在の“余韻”だけに支配されていた。


セリアは、ぎゅっとルイの手を握る。


「ルイ……絶対、一緒に行くからね」


「あぁ。俺もセリアいないと困るし」


「今さら素直ね」


(いや本音なんだけど!?)



こうして――


ルイは王都本部へ“鍵”として連行されることが決まった。


だが、この決断が

王都・教会・魔王軍の三勢力を巻き込む巨大渦を生むことを、

このときの彼らはまだ知らない。

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