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転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第2章:学院編前編

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第58話:王都冒険者ギルド――“測定不能少年”ふたたび

 翌日、王都中心街の一角にそびえる巨大な建物の前で立ち止まった。石造りの三階建て。正面には冒険者ギルド“アルフィア支部”の紋章が掲げられ、表には大きな掲示板、そして絶えず人が出入りする重たい扉。これが、王都最大のギルドだ。


「ここが……冒険者ギルド本部“アルフィア支部”か」


 ラザールが淡々と呟く。

 俺は内心、ほんの少しだけ胸が高鳴っていた。


(ゲームでしか見たことなかったやつだ……)


 隣のセリアがそっと覗き込む。


「緊張してるの、ルイ?」


「ルイなら大丈夫だろ。俺とミリアもいるしな」


「そ、そうですよ。四人で行けば怖くありません!」


(いや怖いのはお前らじゃなくて、“測定器”なんだよ……毎回壊すやつ……)


 そんな内心を抱えつつ、ギルドの扉を押し開けた。


 中に足を踏み入れた瞬間、ざわめきと酒の匂いと鉄の金属音がいっせいに押し寄せてくる。カウンター前には剣や杖を持った冒険者たちが列をなし、奥のテーブルでは地図を広げて何か話し込んでいる。


 受付嬢は、きりっとしたポニーテールの女性だった。


「学院からの紹介ね。書類は届いているわ」


 ラザールが紹介状を渡すと、受付嬢は目を通し、ちらりとこちらを値踏みするように見てきた。


(まぁ、完全に子どもだしな……見るよな……)


「では順番に、魔力量測定と適性検査を行います」


 ああ……来たか。やっぱりあるよね測定器。


 まずアレンが水晶石へ手を当てる。


「アレン・ヴィスト。魔力総量、中の上。火属性寄りの混合型。……うん、Bクラス相当ね」


 続いてミリア。


「ミリア・ローゼ。魔力総量、中。風属性主軸の支援型。Cクラス相当」


(おお……二人とも普通に優秀じゃん)


「セリア・エルノア」


 セリアが恐る恐る手を置いた瞬間だった。


 白い光が、爆発するように水晶石から噴き上がった。

 ギルドのざわめきが、一気に静まる。


「な、何だ今の……!?」

「すげぇ……!」


 受付嬢が息をのむ。


「……上位光核。王都でもほとんど見ないレベルよ……」


 職員たちが慌てて書類を持ってきてひそひそ話し始めた。

(セリア、ここでも規格外か……)


 そして――本番が来た。


「最後、ルイ・アーヴェント君」


 全員の視線が一斉に集まる。

(さて……どうなることやら)


 俺はゆっくり手を水晶石へ置いた。


 次の瞬間。


 水晶石の奥で、黒と白がぐちゃりと混ざったような光が生まれた。


「っ……!」


 ざわっ、と空気がひきつる。


 白い光が弾け、同時に底から黒い霧が滲み上がった。

 水晶石が嫌な音を立てて震える。


 バキッ。


 ひびが走った。


「ま、まただよこれぇぇ……!」


(学院入試のときとほぼ同じ展開!!!)


 慌てて手を離したが遅い。

 水晶石は内部から焼け焦げ、黒く染まり――


 ドン、と小さく破裂した。


「きゃっ!?」「な、なんだ!?」「壊れたぞ!?」


 ざわめくギルド内。

 受付嬢は青ざめた顔で呟いた。


「……“測定不能”……?」


 その瞬間、奥の扉が重く開いた。


「騒がしいな。何事だ?」


 出てきたのは肩幅の広い中年の男。片目には古傷、片腕は義手。

 ただ立っているだけで“ギルドマスター”の圧がある。


「マスター、この子が……」


 受付嬢が説明しようとした瞬間、ラザールが一歩前へ。


「測定器の不具合だろう」


 淡々と、迷いなく言い切った。


「この子の魔力量については王立学院が“特殊ケース”として保証している。詳細測定は王宮が許可を出してからだ」


(さらっと情報封印した……!)


 ギルドマスターは俺をじっと見つめる。

 生身の眼光が刺さるように鋭い。


「……なるほど。王都ってのは時々こういう面倒なガキを送り込んでくる」


(ガキ扱いはやめてくれよ……!)


 言い返したいのを飲み込み、にこっと笑っておく。


 ギルドマスターは受付へ向き直る。


「ランクはEからだ。“観察対象”として、俺の印をつけておけ」


「了解しました」


(観察対象って言い方さらっと怖いんだけど……)


 こうして俺たちは正式に“冒険者”となった。

 ギルドカードを胸に収めたその瞬間──


 ギルドマスターが、誰にも聞こえないほど低く呟いた。


「……測定不能、ね。

 学院、王宮、教会、監察局……

 どいつが先にこのガキを取りに来るか、見ものだな」


 そのつぶやきは、酒場のざわめきに飲まれて消えていった。

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