表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第2章:学院編前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/101

第52話:学院崩壊 ── “鍵”と“光核”の共鳴**

 影門の主が、本体の上半身を門の向こうから押し出してきた。


 その瞬間、世界の空気が変わる。


 風がピタリと止まり、

 影が逆流し、

 景色の色調が一段、暗く沈んだ。


(……ヤバい……!

 これはもう、“災害”とかじゃねぇ……)


 魂核の黒が、理屈抜きで怯えていた。

 本能的に「関わるな」と警鐘を鳴らしてくる。


『……鍵……

 ようやく……触れられる……』


 影門の主の“眼”が、ゆっくりと一点を射抜く。

 ルイへ向けられた、純粋な“捕食者の視線”。


 見られただけで、地面に細かいひびが走り、

 空気が押し潰されるように重くなる。


「くっ……!!」


 アレンは膝をつき、歯を食いしばった。

 ミリアは声をあげることすらできず、ただ震える。


 教師陣は結界を再構築する余裕もなく、

 影の圧に耐えるだけで精一杯だった。


「ルイ……行かないで……!」


 セリアが必死に抱きついてくる。

 光翼は揺れ続け、小さな肩がこわばっていた。

 それでも、彼女の光は確かにルイの黒を押さえ込んでいる。


(……俺の黒……

 セリアの光で、まだ……ギリギリ保ってる)


 だが、影門の主は容赦しない。


 巨大な腕が、重力なんて無視したような軌道で振り上がった。

 次の瞬間、学院の塔が影の波動に飲まれ、音もなく崩れ落ちていく。


 瓦礫が舞い、炎が上がり、あちこちから悲鳴が飛んだ。


「──全員、伏せろッ!!」


 ラザールの叫びが、轟音を切り裂いた。


 それと同時に、影門の主の掌撃が空を裂く。


ドォォォォォォン!!!


 学院中央棟が、一撃で粉砕された。


「や、やべぇ……!!」


「校舎が……!!」


「こんなの……勝てない……!」


 恐怖と絶望が、一気に広がっていく。

 その中で、ラザールだけが前に立っていた。


 左半身を覆う黒い鎧が、さらに強く光を帯びる。


「……これ以上は……通さん……!」


 影門の主が、どこか呆れたように、しかし確かな敵意を込めて呟く。


『裏切りし者……

 その力は……もう使うな……』


「うるさい。

 俺はもう“お前たちの同胞”じゃない」


(……同胞……?)


 ルイの胸の奥がざわつく。


(まさか……ラザールも……深淵出身……!?)


 問い詰める暇などなかった。


 影門の主が、再び腕を振り下ろす。


 学院の地面がえぐれ、

 瓦礫が空へ舞い上がり、

 防衛線は完全に決壊した。


 同時に、ルイの魂核の黒が “もう一段階” 膨れ上がる。


(ぐ……っ……!!

 やば……限界……!!)


「ルイ!!」


 セリアが抱きしめてくる。

 光翼が悲鳴のような光を撒き散らしながら、必死に黒を押さえ込む。


「お願い……!

 戻って……!!」


 白が黒を包み込む。

 けれど、今回は押さえきれなかった。


 黒の核のさらに奥から、

 何か別の“何か”が目を覚まそうとしている気配がする。


(……だめだ……

 これ以上……開いたら……!!)


 視界が黒で塗りつぶされていく。


 その闇の奥から、影門の主の声が響いた。


『来い……鍵……

 お前は……“こちら側”の主……』


「違う!!」


 セリアの叫びが、闇を切り裂く。


「ルイは……ルイだよ!!

 誰にも、渡さない!!」


 光翼が弾けるように輝いた。


 金色の羽根が空に散り、

 セリアの胸奥の光核が、一段深く脈動を始める。


 覚醒の第一段階。


 影門の主が、わずかに一歩引いた。


『……白核……!?

 そんな光が……この世界に……?』


 その一瞬の隙を、ラザールは逃さない。


「ルイ!!

 このまま黒を抱えたら“向こう側”に引かれる!!」


(わかってる……でも……止まらねぇ……!)


 胸を押さえても、黒と白は互いを噛み砕くように暴れ続ける。


「ルイ……っ、ルイ……!!」


 セリアは、涙混じりの声で名前を呼びながら、さらに強く抱きしめた。


 その瞬間だった。


 ルイの胸の光が、白と黒の二色にぱっくりと割れた。


(……割れ……た……?)


 魂核を覆っていた外殻が、音もなく砕け落ちている。


(まずい……!!

 これ……本当に……やばい!!)


 影門の主が、愉悦すら滲ませて手を伸ばしてくる。


『そうだ……鍵……

 その核こそ……深淵の主の器……』


(俺は……違う……!!)


 内側からの叫びと同時に、黒が反転する。


 影門の主の周囲に渦巻いていた影が、

 一気にルイへ向かって吸い込まれていった。


『……な……!?

 鍵が……影を喰らうだと……!?』


 世界全体の影の濃さが、目に見えて薄れていく。


「ルイ……!?」


「なんだこの現象……!」


 生徒も教師も、誰ひとり理解が追いつかない。


 ただひとり、ラザールだけが震える声で呟いた。


「……始まってしまった……

 深淵核の“第二段階”……」


(第二段階……!?)


 ラザールが叫ぶ。


「ルイ!! 戻れ!!

 これ以上は……どちらの世界にも戻れなくなるぞ!!」


 だが、黒は言葉を聞かない。

 黒は白を飲み込み、白は黒を巻き戻す。


 魂核そのものが、真ん中から裂けていく。


(……ああ……やばい……

 本当に……戻れな……)


「ルイ!!!」


 セリアの叫びが、黒と白の境界を貫いた。


 金色の光翼から溢れた光が、真っ直ぐにルイの胸へ流れ込む。


 光が黒を包み、白を繋ぎ止める。


(……あ……

 光が……入って……)


 亀裂だらけだった魂核が、一瞬だけその崩壊を止めた。


(セリア……!!)


 その光景を見て、影門の主が震える声を上げる。


『……鍵と……光核が……

 “共鳴”した……!?』


 大気が震え、地面がうねり、

 世界そのものがたわんだ。


 影門の主が怒りの咆哮を空へ叩きつける。


『やめろ!!

 鍵は深淵のもの!!

 光に触れるな!!』


 ラザールが、怒鳴るように言い返した。


「遅ぇよ……!!

 もうルイは“どちらか一方”じゃない!!

 ルイの核は──

 黒と白の“両方”だ!!」


 ルイの身体から、白と黒が同時に弾け飛ぶ。


 夜空を切り裂く白。

 世界を貫く黒。


 光と影が衝突し、

 凄まじい衝撃波が学院全体を飲み込んだ。


 塔が折れ、壁が崩れ、地面が裂ける。


「きゃあああ!!」


「アレン!! ミリア!! 伏せろ!!」


 爆煙が学院を覆い隠す。

 影門の主の巨体は、灰色の煙の向こうで輪郭だけを揺らしていた。


『……鍵……

 その核……

 本当に……“主の器オリジン”……』


(……主……?

 俺は……何者……なんだ……?)


 影門の主の巨腕が、再び動き始める。


 学院を、世界を、

 “鍵ごと”深淵へ引きずり込むために。


『来い……鍵……

 お前の帰るべき場所へ……』


(違う……!!

 俺は……!!)


 黒と白が胸の内側で吠える。


(俺は……ここで──生きる!!)


 ルイが、ぐらつく足で立ち上がった。


 その瞬間、影門の主の“眼”が大きく揺れる。


『……ありえぬ……!!

 鍵が……“自我”を持つだと……!?』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ