表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第2章:学院編前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/101

第51話 黒の逆流――“鍵”が影を喰らう瞬間

 影門の主が放った咆哮が、学院を丸ごと震わせた。

 地面はひび割れ、空は波打ち、空気そのものが黒い砂のように崩れ落ちていく。


 ラザールの足場は砕け、教師たちが張っていた結界は悲鳴を上げながらきしみ始めていた。


「くそ……っ!! 持たない!!」


「第二層結界が……崩壊──!!」


 怒号も指示も、すべて影の濁流に呑まれていく。


 その中心に、ルイがひとり膝をついていた。


 細い肩が震え、胸の奥からは黒と白が止まらず噴き上がっている。

 黒が世界を侵食し、白が命を繋ぎ止めるように閃光を吐き続けていた。


(もたない……本当に、壊れる……!!)


 魂核の白と黒がぶつかり、身体の内側で雷が鳴るような痛みが走る。


 影門の主が、深淵を揺らすような声を落とした。


『苦しいだろう……鍵……

 その器は“光”に向かぬ……』


「やめろ……!」


 セリアが光翼を広げて駆け寄る。

 しかし影の圧が壁のように押し返し、足が止まった。


「ルイは……影でも深淵でもない!!

 わたしが──引き戻す!!」


『光の器……邪魔だ。

 お前は世界に“存在してはならぬ”』


 禍々しい触手が、何本もセリアへ襲いかかる。


「セリア!!」


 叫んだ瞬間──ルイの魂核が破裂した。


 胸の奥で黒と白が激突し、世界そのものが震えるような衝撃が走った。


(……いやだ……!

 まだ……全部失いたくない……!!)


 黒が溢れ、白が悲鳴を上げる。

 セリアの泣き声だけが、遠くでも確かに耳に届いた。


「ルイ……ッ!!

 行かないで……っ!!」


(……行かない……

 誰が……勝手に……!!)


 胸がドクンと脈動し、黒い奔流が天に吹き上がった。


『……ッ!?』


 影門の主が、一瞬だけ後退する。


 噴き出した黒は暴走していた。

 けれど──形が違う。


 それは周囲に漂っていた影を引き寄せ、

 まるで“食べる”ように吸い込み始めた。


 黒が影を喰らっている。


「……ルイ……?

 何、その……黒……」


 セリアが言葉を失ったまま、震える声で呟く。


「喰って……る……?」


 影の主が深淵そのものを震わせるような声を漏らした。


『不自然……!!

 なぜ……“深淵核”が……

 影を喰らう……!?』


 ラザールの瞳が大きく見開かれる。


「……まさか……!

 ルイ……お前の黒は……影じゃない……!」


(……影じゃ……ない……?)


 ラザールは苦しげに歯を食いしばりながら続けた。


「影は“深淵の落とし子”だ。

 だが……深淵そのものは──影の“上位”。

 本質が……違う……!」


(上位……?)


 彼の声が叫びに近くなる。


「ルイの黒は……影の核じゃない!!

 深淵の“根源”だ!!」


『やめろ……!

 鍵の覚醒は……今ではない……!!』


 影門の主が門を震わせ、世界全体に悲鳴のような音が走った。


 ルイの黒は暴れ続け、意識が半分闇に沈んでいく。


(……だめ、だ……

 このままじゃ……俺……)


 その暗闇に、白い光が触れた。


「ルイ……」


 セリアが涙を浮かべたまま、震える両手でルイの頬に触れた。

 光翼が激しく明滅しながら、彼を抱きしめる。


「戻ってきて……

 わたし……ずっと隣にいるから……」


 光が黒に触れ、火花のように爆ぜる。

 だが暴走を押さえ込むのではない。


 黒が──白を認識した。


 白に引かれ、黒の奔流が徐々に沈静化し始める。


(……セリア……

 俺……まだ……)


 影門の主の怒号が空気を震わせた。


『光の器……!!

 鍵に触れるな!!

 壊れるぞ!!』


 セリアは涙をこぼしながら、震える声で叫んだ。


「壊れるなら──一緒に壊れる!!

 ルイをひとりにしない!!」


 その瞬間、黒が鼓動のように鳴った。


ドン……!


 世界中の影が震えた。


 影門の主が、一歩後ろへ引いた。


『――鍵の黒が……

 光に……馴染んだ……!?

 そんなこと……ありえぬ……!!』


 ルイはゆっくりと手を伸ばす。

 その先には、影門の主の巨腕。


(……お前らの言う“鍵”がなんだか知らねぇけど……

 好き勝手に使われるつもりはねぇ……!!)


 黒が手に凝縮し、小さな“牙”のような形を作った。


(これが……俺の……黒……)


 ルイは握りしめ、その黒牙を放った。


「食らえよ……!」


 黒牙が影門の主の腕を穿ち、黒い外殻を削り取る。


『ぐ……ッ……!!?』


 影門の主が、初めて“痛み”を発した。


『鍵……!!

 その力は……!!

 本来……“深淵の主”の……!!』


(深淵の主……?

 俺は……)


 問いを口にする前に、学院の防壁が砕けた。


バリィィィィィィン!!


「ルイ!! セリア!! 下がれぇぇぇ!!」


 ラザールが叫んだ。


 影門の主の“本体”が、ついに門の奥からせり出してくる。


『鍵……

 今度こそ……掴む……!!』


 光と影が衝突し、

 世界の崩壊が、いよいよ秒読みを始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ