第48話:戦端裂く光――セリア覚醒と巨影の咆哮
巨影シャドウ・コロッサスの拳が落ちた瞬間、世界が千切れるかと思うほどの揺れが学院全体を襲った。地鳴りの唸りが胸の奥まで食い込み、空気が一瞬で緊張に凍りつく。
迎撃しなければ、学院が崩れる。
その刹那。
「ルイ……大丈夫……?」
セリアの身体から光が“噴き上がった”。
金色の羽の幻影が背へ広がり、足元には円環が刻まれるように輝く。
学院が昼間のような明るさに染まった。
「は……?」「すげぇ……」
周囲の生徒や教師が息を飲んだ。
(お前……そこまで……)
ルイの胸で白核が反応し、セリアの光核と“共鳴”した。
沸騰していた黒核が一瞬だけ静まる。
『……光の巫……か……』
巨影が呟く。深淵の声が混じった、耳を裂くような低音。
セリアは震えていた。怖い。震える手。
――でも、目は迷っていなかった。
「……ルイを……守る……!」
その言葉と同時に、光そのものが意思を持ったように巨影の拳へ駆けた。
ラザールがその姿を見て、目を細める。
「……ついに覚醒か。光巫女ミコ。
そして“鍵”を守る者……」
「教官、セリアが危ない!!」
アレンが叫ぶ。
「いや……危ないのは巨影のほうだ」
ラザールの静かな声は戦場を支配する者の響きだった。
巨影の腕が振り下ろされ、影の波動が大地ごと押し潰そうと迫る。
セリアは恐怖を飲み込み、両手を広げる。
瞬間、光の障壁が立ち上がった。
影と光がぶつかり合い、大気が爆ぜた。
学院の中心に、巨大な閃光が広がる。
「セリア!!」
小さな身体で叫びながら、ルイの魂核が激しく脈動する。
(守られるだけなんて……嫌だ。
俺も――戦う!!)
足元から伸びる影の触手がルイを捕らえようと迫る。
だが、黒を押し返すように白が燃えた。
「──どけぇッ!!!」
白光が爆裂し、巨影の足元に突き刺さった。
黒い霧が飛び散る。
「あれ……ルイの光……?」
ミリアが呟き、アレンは目を見開いた。
「……聞いたことねぇぞ、あんな光……!」
巨影が低く唸った。
『……鍵……“白と黒”を併せ持つ器……』
ラザールの眉がわずかに動く。
巨影とラザールが視線を交わした。ただの敵意ではない。
まるで互いの“正体”を知っているかのように。
「巨影よ……貴様の主は、なぜここまで動いた」
『……鍵……に呼ばれた……』
(呼んでねぇよ!!)
ルイの叫びは影に無視された。
『鍵……返せ……“深淵”の還元を……』
「させるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
セリアの放った光の槍が巨影の腹を貫いた。
学院中の視線が釘付けになる。
「嘘……一年であれ撃てるの……!?」
「……いや、あれは才能の領域じゃない……!」
巨影が苦悶の咆哮を上げ、影が飛散し周囲を侵蝕した。
「セリア! 後ろ!!」
影の触手が迫る。
ルイは即座に走った。
白い光が地を滑るように伸び、触手をすべて“蒸発”させる。
「……あの子……
セリアを守るためだけに……動いてる……」
ミリアが震える声で言う。
「俺たちより何歩も先の戦い方してるな……」
アレンは苦笑しながらも、目を離さなかった。
巨影が、影をうねらせながら立ち直る。崩れた巨体が自己再構築を始めた。
『……鍵……光巫……
ならば……“主”が来る……』
(……は!? 本気のやつ、まだ来てないのかよ……!)
セリアが震える。
「ルイ……怖い……。でも……あなたは……わたしが守る……」
光核がさらに脈を速める。
もう後戻りはない。
学院が、大地の底から脈打つように震えた。
旧校舎の地下で、“本門”が完全に目覚め始める。
巨影が空へ咆哮を放つ。
『主よ……鍵モ……光巫モ……ここニ……』
風が止まり、影が一斉に同じ方向へ流れた。
世界そのものが息を潜める。
(……来る……!!)
途端に、旧校舎の地下から黒い“竜巻”が噴き上がった。
深淵門の“主”――降臨の予兆。




