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転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第2章:学院編前編

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第44話:本門発現 ― ラザールが視た“鍵の色”

 黒い亀裂が学院の空に走った瞬間、結界全体が低く唸り、学院中の空気が震えた。

 空そのものが軋むような音を立て、魔力の流れが逆巻き、肌に刺さるほどの冷気が降りてくる。


(……もう隠しきれないな。これは世界規模の反応だ)


 魂核の“黒”はざわつき、暴れ出す寸前の獣みたいに唸っている。

 逆に“白”は、それを抑え込むために必死に光を張っていた。


「ルイ……あれ、門だよね……?」


 セリアは震えながらも目をそらさなかった。

 その瞳はまるで“門の奥”にある何かを見つめているように淡く光っている。


(セリア……お前の白核、門に反応してる。普通じゃない)


 白が揺れれば、黒も揺れる。

 二つの力が学院の空に呼応していた。


 


 学院本棟の作戦室では、学院長が椅子から勢いよく立ち上がり、杖を掴んで震えていた。


「……本門が動いた、だと……? 第二の門すら対処できていない状況で……これは最悪の事態だ……!」


 監察局隊長は冷静な声で告げる。


「本門は“世界災厄級”です。学院ごと飲み込むつもりで出てきています」


「なぜ学院なのだ!」


「誘導した者がいます。内部に」


 作戦室の視線が一斉に、灰ローブの男へ向けられた。


 その男は、薄笑いを浮かべたまま肩をすくめる。


「……まさか私だと言いたいのかね?」


「お前以外に誰がいる」


「証拠がなければ無意味だ」


(この余裕、完全に黒側の匂いするんだよ)


 だが監察隊長は追い詰めすぎず、優先事項を変えた。


「黒幕は後回しだ。今は学院の生徒を守るのが先だ」


 そこで、ずっと黙っていたラザールが口を開いた。


「――守るだけで足りると思わないほうがいい」


「ラザール教師……?」


 ラザールは遠くを見るような目つきで空を見上げる。


「本門が開けば、影は“器”を求めて学院中に溢れ出す。

 最初に狙われる者は決まっている」


「誰だ?」


 ラザールは一拍置き、静かに答えた。


「――“光の器”と“深淵の器”」


 室内が凍りつく。


(……俺とセリアってことだよな)


 監察隊長が表情を曇らせる。


「貴様……その情報をどこで……?」


「観測した」


「何をだ?」


「学院に存在する“特異な魂核”を」


 ラザールの瞳がわずかに金色を帯びて揺れた。


(やっぱりこの人、ただの教師じゃない)


「学院に二つ……いや正確には三つ。“鍵”に繋がる核がある」


(……三つ? 俺とセリア、あと一つは誰だ)


「一つは……ルイ・アールフェルトだ」


 作戦室の空気が激しく揺れる。


「なんだと!? 赤ん坊の頃は低出力と――」


「隠しているだけで、隠しきれてはいない。魂核の色は……俺には見える」


(終わった……バレてるじゃん完全に)


 ラザールは淡々と続ける。


「学院は選ばなければならない。“鍵”を守るか、使うか……殺すかだ」


「ラザール! 何を言っている!」


「事実を言っているだけだ。本門が最初に狙うのはルイだ。間違いなく」


 一方その頃、生徒寮の前。

 黒い霧が空の亀裂から絶えず溢れ、学院全体を覆い始めていた。


(来る……多分、すぐ来る。魂核が騒ぎすぎて分かる)


 セリアが不安で泣きそうな顔を向ける。


「ルイ、怖いなら……逃げよ?」


「逃げない」


(逃げたところで追ってくるし、お前だけ置いて逃げるとかあり得ない)


 そのとき。


「ルイ! セリア!」


 アレンとミリアが駆けてきた。


「……お前ら、ここにいたら危ねぇだろ!」


「危ないから来たんだよ!」

 アレンは剣を握りしめて叫ぶ。


「仲間だよルイくん。隠されても……分かるよ」

 ミリアも杖を構えた。


(……お前ら……そんな言われ方したら、もう頼るしかなくなるだろ)


 その瞬間、空の亀裂が大きく裂けた。


 ギ……ギギギ……ッ!!

 空間が引きちぎれ、黒い巨大な“口”が開く。


『――ケイ……』


(やべぇ……本当に来た)


 学院中で悲鳴が上がる。


「アレン、ミリア、セリア……下がれ!!」


 ルイの魂核が暴れ、胸の奥で“白”が強く光る。

 それに応じるように“黒”も蠢き、爆発寸前の圧が体中を走る。


(抑えないと……ここで暴れたら俺が影門になる……!)


 そこへ背後から落ち着いた声が響いた。


「……ルイ」


 ラザールだった。


「お前が何を隠しているかは、もういい。

 今は――生きろ」


(……え?)


 ラザールの瞳が“本当の色”に変わる。

 金と蒼の二重円が回転するように光り、普通の人間の目ではあり得ない輝きを放つ。


(……それ、どう見ても普通じゃないだろ……)


「鍵よ。本門がお前に触れようとしている」


 黒い霧が、生徒寮の前へゆっくり降りてきた。

 影の腕がゆっくり伸び、ルイへ触れようとする。


『…………ケイ……』


(来る……!)


 白と黒が激しくぶつかり合い、魂核が悲鳴を上げる。


「ルイ!!」

「ルイ、下がれ!!」


 影の腕がルイの胸へ触れかけた、その瞬間――


 爆発するほどの“光”が走った。


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