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転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第2章:学院編前編

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第38話:学院に潜む黒幕――“監察局の裏切り者”

 旧校舎の偽装門を破壊した翌日、学院は妙に静まり返っていた。影の気配は弱まったはずなのに、空気は重くのしかかり、どこか“誰かに見張られている”ような圧が肌を刺す。


(……監視されてる。黒がピリついてる)


 胸の奥の黒核が微かに震えた。セリアの手をそっと握ると、白核がふわりと広がり、黒のざわつきを押し込んでいく。


「ルイ……また胸がざわざわしてる……?」


「うん。でも大丈夫」


(黒が“応える準備”をしてる気配……これ危険なやつだ)


 


 放課後、ラザールから呼び出しの声がかかった。


「ルイ、セリア。来てくれ」


 表情は普段以上に硬い。部屋にはアレンとミリアも呼ばれており、空気がピンと張り詰めていた。


「今日の午前、監察局から報告があった。旧校舎の影反応は“自然発生”だと」


「自然!? あれが!?」

 ミリアが素で声を上げる。


「そんなわけないだろ! あんなデカいの自然で出るかよ!」

 アレンも信じられない様子だ。


 ラザールは重く首を振った。


「……監察局の内部で、“誰かが意図的に情報を書き換えている”」


(やっぱり……内通者がいる)


「つまり……」

 ミリアが呟く。


「学院に……黒幕が潜んでいる……?」


「その可能性が高い」


 ラザールは壁の地図に描かれた魔術基盤を指した。


「偽装門を成立させるには、内部で影を誘導できる者が必要だ。学院結界に“穴”を作る権限を持つ人間……」


(誘導……つまり“俺を狙うための案内人”が学院にいるってことだ)


 


 その時だった。


 静かに扉が開き、灰色の外套をまとった男が入ってきた。

 足音は無駄がなく、視線は鋭すぎるほど研ぎ澄まされている。


(……こいつ、只者じゃない)


 ラザールが紹介した。


「監察局本部より派遣された──灰の監察官、ヴォルツだ」


(灰……! 監察官階級の最上位! 黒幕狩り専門のヤバいやつじゃん……)


 ヴォルツは四人をゆっくりと見渡し──

 ルイのところで、ピタッと視線が止まった。


 空気が固まる。


 眉が、ほんのわずかに動いた。


「……複合魔力。光と深淵の“両方”……。珍しいな」


(終わった。完全に見抜いてくるタイプの人だ)


 セリアがすっとルイの前に立った。


「ルイに……手出し、しないで」


「手は出さん。だが“知る必要はある”。」


 


 ヴォルツは机に魔力痕の写しを展開しながら静かに言う。


「旧校舎の偽装門──あれは素人には無理だ」


 映し出されたのは、黒い術式の残滓。

 深淵魔術の中でも王都で扱える者が数人しかいないレベルのものだった。


「これは……王都でも扱える者は限られている」


「じゃあ……誰が……?」

 ミリアが息を飲む。


 ヴォルツは淡々と言った。


「監察局の局員の中に、“深淵側の協力者”がいる」


(やっぱり……内部に)


「そいつは学院結界にアクセスし、影が侵入しやすいよう“穴”を作った」


「結界に……!? それができるのは──」


「教員か、監察局か……」

 ラザールの顔が険しくなる。


「答えは簡単だ」


 ヴォルツは足元に魔法陣を描いた。


「協力者は、昨夜の討伐中に“ひとりだけ、不自然な行動”をしていた」


 ミリアが小さく声を絞り出す。


「それは……誰……?」


 ヴォルツははっきり告げた。


「学院魔術基盤にアクセスでき、監察局と教会の双方に繋がる人物──」


「まさか……リオネル教諭……?」

 ラザールの声が震えた。


(リオネル……? でもあの人、俺らに協力してくれてたし……)


 ヴォルツは言い切った。


「──“昨夜の影反応”は、リオネルがいた位置から発生した」


 会議室に、冷たい沈黙が落ちた。


 


 アレンが拳を固く握りしめる。


「じゃあ……先生が……裏切り者……?」


「断定はしていない。だが“最も黒幕に近い位置”にいるのは確かだ」


 


 ヴォルツは今度はルイだけを見た。


「鍵の子。昨夜、お前を狙った影は“誘導されていた”」


(やっぱり……!)


「お前の魔力反応を知る者が、侵入口を開いた。つまり──」


 ミリアが震える声で続ける。


「ルイくんの“正体”に最も近づいた人が裏切り者……」


 セリアがルイの腕をぎゅっと掴んだ。


「ルイ……怖い……でも、わたし守るから……」


(大丈夫。セリアがいれば黒は暴れない)


 


 ヴォルツは最後に、とどめの一言を発した。


「影は既に学院内部に拠点を作っている。本物の門を壊さねば、再び開く」


「旧校舎ではなかったのですね……?」

 ミリアが問う。


「偽装門だ。本物はもっと深層にある」


 そして──


「鍵の子と巫女。

 ──お前たちは黒幕をあぶり出す“餌”になってもらう」


「……は?」


(言い方ァ!!)


「次に影が動いた時、協力者も動く。監察局がその瞬間を抑える」


「ルイを……餌に……?」

 セリアが怒りで光を溢れさせる。


「許さない……絶対……!」


 だがヴォルツは微動だにしなかった。


「世界の均衡が揺らいでいる。もう優しい手段では間に合わん」


 


 ルイは静かに立ち上がる。


(……分かったよ。俺も逃げるつもりはない)


「協力するよ。ただし──」


 白と黒が胸の奥でかすかに滲む。


「セリアには手を出させない。……それだけは譲らない」


 ヴォルツの目が細くなった。


「……強くなれ。

 本物の戦いは、これからだ」


 その瞬間、学院のあらゆる影がざわりと揺れた。


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