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転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第2章:学院編前編

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第27話:迫る“影”――学院結界、揺らぐ

 影門が消えた旧校舎には、生温い静寂だけが残っていた。

 闇は引いたはずなのに、空気はまだ“恐怖の残り香”で満ちている。


(……影門が開いたのは偶然じゃない。

 誰かがあれを“誘導”してる)


 監察局の隊長が硬い声で命じた。


「生徒たちはここから退避させろ。本日より旧校舎は完全封鎖とする」


「お、おい待てよ。まだ何が起きたのかも分かってねぇのに……!」


 アレンが声を荒げたが、隊長の視線は彼らではない。

 その奥──学院の中心部を鋭く見据えていた。


 学院上層部の評議会室では、扉が閉まると同時に怒号が飛び交った。


「第二の門だと!? なぜ報告がなかった!」


「旧校舎の管理責任者はどこだ!」


「影門の発生は王都教会へ即時連絡する規定だぞ!」


 学院長代理の老人が机を叩きつける。


「答えろ。誰が情報を握り潰した?」


 重苦しい沈黙。

 数名の教師が視線を逸らすなか──灰色のローブの男だけが落ち着き払っていた。


(……あ、こいつだ)


 ルイには分かった。

 男の周囲だけ、魔力の流れが不自然に歪んでいる。

 影の残滓をまとったような“匂い”。


「旧校舎の異常は、ただの魔力濃度の偏りだと思っていたが?」


 平然とした声だった。


(いやいや、あんな真っ黒い影、絶対気付くだろ)


 監察局隊長が一歩前へ出る。


「その言い訳、雑すぎるな」


 男の目が細くなる。


「……では君は何を知っていると?」


 隊長は迷いなく言った。


「──“本門”の存在だ」


 評議会室が凍りつく。


「第二の門が開いた。

 ならば“本命である本門”が動くのは時間の問題だ」


「ふ、ふざけるな! 本門など伝承にすぎん!」


 教師の叫びを、監察局は淡々と遮る。


「旧校舎の影……“人の残滓”を使った操影術……

 隠す理由は一つだ」


 灰ローブの男の唇がわずかに吊り上がった。


「言ってみろ」


「──学院に、影門の黒幕が潜んでいる」


 空気が重く落ち込む。


(やっぱり……マジで居るんだな)


 男の瞳が一瞬だけ揺れた。


「証拠は?」


「第二の門だ。それ以上の証拠が必要か?」


「はっ、そんな曖昧な――」


「そして今夜、影門は“本門”を誘導しようとしている」


 灰ローブの男の顔がわずかに固まる。

 その一瞬で、ルイには確信できた。


(確定だな。お前が黒幕側)


 隊長は続ける。


「本門はまだ場所を確定していないが……

 深淵の残滓は学院の“中心部”を指している」


「結界核……? 学院の中枢が……?」


「影の中心が学院だと……?」


 恐怖が評議会室の中で広がっていった。


 その頃、生徒寮では、ルイがベッドに腰を下ろしていた。

 セリアが涙を浮かべた目で袖を握る。


「ルイ……今日の影……こわかったよ……

 あれ、人の声だったよね……?」


「……ああ。分かってる」


 ルイの魂核では、まだ黒い波紋がわずかに蠢いている。


(影門の黒……俺の黒……

 多分、根っこは同じなんだろう)


 セリアが不安げに問いかける。


「黒い門って……なに……?」


「……まだ言えない。でも絶対に、お前だけは巻き込まない」


 セリアは涙をこぼしながら首を振った。


「ルイを守るよ。

 ルイが怖がるほうが、わたしはイヤ……!」


(いや……俺のほうが黒の側に近いんだけどな……)


 その瞬間、学院全体が低く震えた。


 ゴッ……!!


「っ!? いまの地震……?」


(違う。魔力の震動……!)


 魂核が鋭く反応した。

 窓の外──学院中央塔の上空に、黒い“亀裂”が一本走る。


(……っ!!)


 意識の奥に声が響く。


『……鍵ヨ……』


『本門ガ……“開ク場所”ヲ決メタ……』


(きた……!)


 空の亀裂がゆっくりと広がり、黒い霧が漏れ出した。

 雷光のような影がその中を走る。


「ルイ……これ……どういう……?」


 セリアの声が震える。


(分かってる……もう止まんねぇ)


 深淵の声が笑った。


『来イ……鍵ヨ……

 学院ノ中心デ……待ッテイル……』


 学院上空に、“本門”の輪郭がゆっくり姿を現し始めていた。

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