第25話:学院入学式――“仲間”と“監視者”の教室
学院入試から三日後。
王都アルフィアの朝は、いつもより眩しく輝いていた。
正門前には色とりどりのローブを纏った新入生たちが集まり、
年齢も出身もバラバラな声が飛び交っている。
「わあ……すごいね、ルイ……!」
セリアが目を輝かせながら呟く。
(いやほんと……“魔法学園アニメの導入回”そのまんまなんだけど)
学院塔の周囲には魔力の光が螺旋状に流れ、
噴水の水は空中で形を変えて舞い、
空には学院専属の魔道鳥が滑空している。
魂核の白が、安心するようにふわりと光った。
『……コノ場所……光ガ多イ……落チ着ク……』
しかし、同時に黒がざらついた声を漏らす。
『……黒ノ逸脱者……三……四……
学院内部ニ“混ザリモノ”……複数……』
(やっぱりな……昨日のエドワードだけじゃない)
学院の“異質者含有率”は、どう考えても普通じゃない。
中央ホールでは入学式の準備が整い、
学院長、教会代表、王家使節、深淵対策室……
妙に物々しい顔ぶれが前列に並んでいた。
(いやいや監視の数おかしいだろ……ステルス難易度MAXなんだけど)
学院長が静かに演壇に立つ。
「新入生諸君、ようこそ王立魔導学院へ──
ここは魔術・歴史・政治が交わる中心地。
諸君の未来が、この世界を形作るだろう」
(俺の場合、“形作る”どころか“壊す危険”があるんだが……)
そして学院長は続けた。
「今年は──“特別候補生”が複数名入学している」
(複数名……?)
場内がざわめく。
(俺とセリア以外にも?
光でも深淵でも魔王軍でも天使でもない……“別枠”?)
学院長は名前を一切出さないまま式を締めた。
(情報を小出しにしてくるの……マジで怖い)
式後、新入生たちはそれぞれの教室へ向かう。
俺とセリアが割り振られたのは──
《1-A》。
(おい……最上位クラスかよ……一番目立つやつじゃん)
扉を開けると、すでに生徒が何人か座っていた。
その中で、ひときわ明るい少年がバーッと立ち上がる。
「やっと来たか! 君がルイ君だね!」
(テンション高っ! 誰!?)
「俺はアレン! アレン・スレイター!
平民だけど剣術だけはちょっと自信あるんだ!」
(こいつ……絶対“剣枠の仲間キャラ”じゃん)
アレンは満面の笑みで手を差し出す。
「よろしくな! 噂では凡人扱いされてるらしいけど──
俺は仲間は誰でも信じるから!」
(お前……良い奴すぎる……)
魂核の白がふんわりと温かく揺れる。
次に近づいてきたのは、銀髪と鋭い瞳の少女だ。
「……あなたたちが噂の“特別候補生”ね?」
(出た……ツンデレ魔導貴族枠……)
「ミリア・アルフェンよ。魔導貴族。
あなたたちの実力……然るべき場所で確かめさせてもらうわ」
(ツンツンしてるけど、根は絶対良い子)
セリアが挨拶しようとすると、
ミリアはセリアの手から漏れる光を見て目を細めた。
「……強い光の波動。
あなた……ただ者じゃないわね?」
(いきなりバレかけてるんだけど!?)
さらに、存在感が薄すぎる黒髪の少年が近づいてくる。
「……ルイ君」
(え……誰? 透明人間?)
無駄に気配が希薄で、魔力の揺らぎすら感じられない。
(魔力ゼロ? いや……“完全に隠してる”な)
黒が低く呟く。
『……コノ者……隠蔽……巧ミ……』
「……カイ。カイ・ラドフォード。
後ろの席が空いてるなら、そこに座る」
(カイ……監察官と同じ名前……偶然か……?
いや、たぶん偶然じゃない)
しばらくすると、担任の女性教師が入室してきた。
赤髪を束ね、鋭い視線を持つ──絶対戦闘タイプの教師だ。
「担任のリィナ・フォルヴェルだ」
(やっぱり戦闘系の先生っぽい)
「このクラスには“特別候補生”が三名いる」
(……三名!?)
セリアが驚いて俺を見る。
(俺とセリアで二人。
もう一人は……まさか、カイか?)
「名は伏せる。
だが彼らは学院にとって極めて重要な存在だ。
全員、協調を心がけるように」
そして視線が鋭く細まる。
「“監視対象”でもあることを忘れるな」
(そんなデリケートな情報をクラス全員に言うなよ!!)
ざわっ──と教室が揺れた。
そのとき、魂核の黒が唸る。
『……アノ教師……戦闘力……抑エテイル……
本当ハ……強者……』
(教師までヤバいやつ混ざってるのかよ……)
セリアが袖をつまみ、小さな声で言った。
「ルイ……なんか怖い人、多いね……」
「大丈夫。俺が……なんとかするから」
言い終えた瞬間、
教室の窓の外──
“影の眼”のようなものが一瞬こちらを覗いた。
(魔王軍……?
いや……深淵の偵察……?)
近くの席で、監察官カイが小声で呟く。
「……来たか。“外”の影が」
(だからいきなり来るなっての!!)
こうして学院生活は、
“仲間たち”と“監視者たち”と、
そして“外から忍び寄る影”に囲まれながら幕を開けた。




