第25話:学院合格者掲示と“最初の敵意”
学院の魔力量測定器を盛大に吹き飛ばしてから一日後。
王都は早朝からざわつき、浮き立つ空気に包まれていた。
(まあ……三千人の合格発表日だし、そりゃこうなるよな)
中央通りは受験生と家族で埋まり、露店には行列。
兵士の数すらいつもの倍だ。
学院外壁には巨大な“合格者一覧”が貼り出され、
泣き声と歓声が絶え間なく交錯していた。
「やった!俺、受かった!」「うそ……落ちた……」
「推薦枠ってズルくね?」「貴族のコネだろ」
(この世界でも受験戦争は変わらんのか……)
俺とセリアは両親と一緒に人混みを抜けて進む。
セリア母は手を握ったまま、震えた声で言った。
「セリア……大丈夫よ。あなたなら受かってるわ……」
「う、うん……」
(いやもう……可愛いなぁ)
そして合格一覧の前まで来た瞬間、母さんが叫んだ。
「セリア! あったわよ!」
【合格者:セリア・ルミナス・レーン】
「本当に……よかった……セリア……!」
セリア母は泣きながら抱きしめ、
セリアは俺の胸に顔を埋めてくる。
「ルイ……ありがとう……! 一緒に、がんばろうね……!」
「もちろん。セリアは普通に優秀なんだから心配いらないよ」
セリアが安心して笑う姿を見て、胸が温かくなる。
そして俺の番。
「ルイ……番号は……あれ? 無いな……?」
(そりゃそうだ。俺は“特別候補生”扱いで一覧に載らんタイプだからな)
そこへ学院スタッフがすっと現れた。
「ルイ・グレイフィールド様ですね。こちらが通達書です」
白い封筒にはこう書かれていた。
【特別候補生:通達】
【入学試験:免除】
【入学手続き:別室案内】
(昨日測定器爆破した俺を、無難に合格処理する気満々で草)
セリアが胸を撫で下ろした。
「よかった……ルイ、ちゃんと受かってたんだ……!」
「まあ……実質受けてないけど、結果オーライってやつだね」
そして、その微笑ましい空気を切り裂くような声が背後から飛んできた。
「……ふん。推薦枠は気楽でいいな」
振り返ると、豪華な刺繍の服に身を包んだ金髪の少年と取り巻き数名。
(出た……テンプレ貴族ムーブ)
「俺はエドワード・クロムウェル。クロムウェル侯爵家の嫡男だ」
(はい、確定で面倒なやつ)
エドワードは俺を値踏みするように見て、鼻で笑う。
「君が“噂の幼児”か。魔力量ゼロで学院入り? お笑いだな」
(ゼロとは言ってないんだけど……勝手に設定が歩いていくのやめてくれ)
さらに続ける。
「学院の格が落ちる。弱者を入れるなど……恥だ」
その言葉に、セリアが一歩前へ。
「ルイは弱くなんかない!知らないくせに勝手なこと言わないで!」
エドワードの眉がわずかに動く。
「……光核持ちに庇われるとはな。君たち、随分と仲が良いようだ」
その目には、嫉妬と敵意が同時に光っていた。
(はいはい、分かりやすい敵キャラさん)
しかしその瞬間、俺の影がピクリと震える。
(……ん?)
魂核の黒が低く唸った。
『……嫌ナ魔力……混ジッテイル……』
(マジかよ……こいつ)
確かにエドワードの魔力は“光”の波形をしているのに、
奥底に人工の“黒い粒”が混じっている。
(呪い系……? 監察官カイが言ってた“異常魔力持ち”って、こいつか?)
エドワードが胸ぐらを掴もうと手を伸ばした瞬間。
「やめて!」
セリアの光が弾け、エドワードの手を止めた。
「っ……!」
(セリアの守護、最近バチバチに強くない?)
舌打ちし、エドワードは去っていった。
その背中を見つめながら、セリアが呟く。
「ルイ……あの人、怖かったけど……ただ怖いだけじゃない……何か変だった……」
「……気づいてたのか」
魂核の白が震える。
『……光ガ嫌ッテイル……アノ少年……』
(白が拒絶するなんて、よほどだな……)
黒も低く呟く。
『……深淵デハナイ……
ダガ……深淵ノ匂イ……スコシ……』
(人工深淵汚染……魔王軍か、教会の裏か……どっちにしろ碌でもない)
そう思ったとき。
「やあルイ君。“初めてのライバル”との遭遇はどうだった?」
監察官カイが人混みの中に立っていた。
「安心していい。あの少年はすでに我々の監視対象だ。
深淵でも天使でもない。
だが──君にとっては重要な“鍵”になるだろう」
(また伏線めいた言い方を……)
カイは薄く笑う。
「学院生活……楽しみにしているよ、“鍵の子”」
そのまま煙のように姿を消した。
(絶対ただの監察官じゃねぇな……)
こうして学院入学前からすでに、
“敵意”と“謎の魔力”がルイの前に立ち塞がり始めていた。




