表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら世界の鍵でした 〜俺と相棒で紡ぐ異世界物語〜  作者: くろうさ
第2章:学院編前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/101

第23話:王都騒然──暴走魔獣と“影の救い手”

 ――あの“会議の日”から五年が経った。


 ルイは六歳。セリアは八歳。

 二人は王立魔導学院の“特別育成区”で保護され、監視されながら日々の訓練に励み、確実に力を伸ばしていた。


 そして今日。

 五年ぶりに学院の外へ出て、王都の簡易宿に滞在している。


(学院の正式試験は三日後……

 なのに、妙に街がざわついてるな)


 魂核の黒がざらりと揺れた。


『……近イ……“乱レタ魔力”……』


(乱れた魔力……)


 嫌な予感はすぐ的中する。


 外から母さんの慌てた声がした。


「ルイ、セリア……! 市場の方で“魔獣が暴れてる”って!」


(……うわ、そう来たか)


 宿を出ると、大通りには人々が溢れていた。

 遠くで爆音。魔力衝突の震え。

 王都兵の怒号まで聞こえる。


「避難を! 一般市民は下がれ!」

「なんで王都中心部に魔獣が……!」


(市場で魔獣暴走なんて……普通ありえない)


 セリアが不安そうに腕を掴んだ。


「ルイ……こわいよ……」


「大丈夫。……でも、ただの事故じゃないな」


 黒が低く囁く。


『……アレハ自然発生デハナイ……“誰カ”ガ誘導シタ……』


(だよな。試験前に王都で事件なんて……偶然じゃない)


 そのとき、屋根の上に“黒ローブ”が姿を見せた。


(……昨日の黒ローブ)


 深淵の匂いではない。でも“人”とも思えない気配。

 ただ静かに市場の混乱を見つめていた。


(俺がどう動くか、見に来てる……)


 その気配だけで悟った。


「ルイ、セリアは宿に戻りなさい!」

父の声が飛ぶ。


 けれど黒ローブは微動だにしない。

 まるで “テストの監督者” のように。


(……行くしかないな)


「ルイ、行かないで……!」

セリアが服を掴む。


「平気だよ。……すぐ戻る」


 セリアの腕をそっと外し、路地裏へ身を滑らせた。


『……行クノカ?』


「行く。でも……理由は試されるとかじゃない」


『……“光ノ子”ノ為……ダロウ?』


「……否定はできないな」


 守りたい。その気持ちが背中を押していた。


 


 市場へ向かう路地を駆け抜けると、

 濁った魔力の奔流が正面から襲いかかった。


 石畳が砕け、屋台が吹き飛ぶ。

 中心に立っていたのは、黒い鬣を逆立てた巨大な獣。


《狂走黒狼バーサーク・ウルフ》


(……王都に出ていい相手じゃないだろ)


 兵士は吹き飛ばされ、それでも必死に剣を構えていた。


「駄目だ! 上位冒険者でも相手したがらない魔力濃度だぞ!」

「若い兵は下がれ!」


(間に合わなきゃ死人が出る)


 視界の端で黒ローブが腕を組んだまま頷く。


(……完全に“観察”されてるな)


 影の中へ身を沈めた瞬間、

 魂核が状況を分析し、明確な“死角”を指し示す。


(行くぞ──)


「《影步シャドウステップ》」


 影を滑るように前へ飛び出し、


ズバァン!!


 黒狼の脚の腱を切り裂いた。


「――っ!? 何かが通った……?」


(見えてない。なら問題ない)


 魔獣が悲鳴を上げ、暴れる方向が逸れる。


『……次ハ右……』


「分かってる」


 黒は敵の弱点を示し、白は魔力の流れを正確に整える。

 その瞬間だけ、ルイの身体は異様なほど研ぎ澄まされた。


 影から抜け出し──


ドンッ!!


 白の魔力を込めた拳を叩き込む。

 巨体が横へ吹き飛び、石壁へ激突した。


「何だ今の……!?」

「見えなかった……!」


(……俺だって言うなよ)


 黒ローブだけが小さく頷き、呟いた。


「……興味深い。影を渡る子ども……か」


(お前が一番怖い)


 狂走黒狼が最後の力で飛びかかってくる。


(来る……!)


 一瞬、セリアの泣きそうな顔がよぎった。


(守る。ここで終わらせる)


 白核がふっと強く光り、黒核を包む。


「……寝てろ」


ドンッ!!


 一撃。

 魔獣は完全に沈黙した。


「倒れた……!」

「誰がやったんだ!? 魔術の痕跡が……ない!?」


(肉体技で倒したって言えないよな……)


 混乱する王都を背に、ルイは路地裏へ戻り、宿へ引き返す。


「ルイ……!!」

セリアが飛びつくように抱き寄せた。


「ごめん。もう大丈夫。落ち着いたよ」


 セリアの光核がぽうっと暖かく脈打つ。


『……光ノ子……優秀……』


(お前も黙ってろ)


 その日の夜、王都には“影の救い手”の噂だけが静かに広がった。

 王都の誰も知らない。


 ──たった六歳の子どもが、

 上位危険種を影の中から斬り伏せたことを。


 こうして“影の救い手”の噂だけが静かに広がり始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ