第22話:王都アルフィアと、揺れる“学院推薦枠”
結界都市ラグノアを発って三日後。
馬車の窓から見えた巨大な城壁に、両親は息を呑んでいた。
「ルイ……あれが、王都アルフィアよ」
(でっっっか……!)
赤子であるルイは言葉にはできない。
だが魂核はしっかり反応した。
『……厚イ結界……』
(だよな。魔王軍でも正面突破むりなレベル)
白の方はというと――
両親に抱かれた状態で、近づくほどにふわりと温度が上がった。
『……光、こい……』
(王都ってだけで光濃すぎるんだよな……)
◆
城門へ近づくと、門兵が鋭く声をかける。
「身分証の提示を。……ん? その子供は?」
エリオットが神殿の印符を見せる。
「教会巡回調査班、エリオット。
“鍵候補”ルイ・グレイフィールドを護送中だ」
(また言うんかそれ……!)
だがその瞬間――
門兵たちの態度が変わった。
「鍵候補……本物か……?」
「王家と教会から指示来てた危険度“測定不能”の器……!」
(言い方ァ!!)
母が慌てて声を上げる。
「ルイは危険じゃありません……!優しい子なんです……!」
門兵は困ったように笑い返した。
「もちろんです。ただ“上の扱い”がそうでして……」
(あーはいはい、俺はいろんな意味で地雷ね……)
◆
――その時。
「ルイぃぃぃぃ!!」
高い声が響いた。
(!?)
王都の門の影から、白いローブの少女が駆け寄ってきた。
金髪のツインテール。
大きな瞳。
そして――光核特有の澄んだ波動。
「セ……リア……?」
母が驚きを隠せない。
エリオットが軽く頷いた。
「先に連絡が行き、神殿から“光核保持者”も急ぎ王都へ。
魔法騎士団の護送馬車なら、我々より早く着いて当然でしょう」
(ああ……なるほど。そっちの馬車の方が速いわな)
セリアは息を切らして、ルイを覗き込む。
「ルイ……!よかった……ちゃんと来れたんだね……!」
(来れたっていうか、運ばれてきたというか……)
白核がセリアへ反応し、ぱぁっと優しい光を灯した。
◆
そして一行は王都教会へ案内される。
案内された会議室には、すでに人が揃っていた。
・年配の神官
・冷たい目の女神官
・王家の紋章を胸に付けた男
・学院からの推薦官
・深淵対策室の黒ローブ(立っているだけで圧がある)
(おいおい、赤子の処遇で集まるメンツじゃねぇぞ!?)
◆
「さて、本題に入ろう」
年配の神官が静かに切り出した。
「この子どもの扱い……いや、“鍵候補”の扱いだ」
(おい“扱い”って言ったな今)
女神官が冷たく言う。
「深淵と光の複合核。
教会の封印区画で“保護”すべきです」
(絶対保護って言葉の意味わかってないだろ……)
母が震えながら叫ぶ。
「ルイを閉じ込めたりしないで……!」
王家側の男が手を上げ、落ち着いた声で言った。
「封印は最終手段だ。
彼は“世界の鍵”となる可能性がある。
成長を奪えば、その価値すら消える」
(この人……まともだ)
◆
学院推薦官が微笑みながら口を開く。
「我々としては、学院の“特別候補生”として受け入れたい。
早期教育こそ、最も安全であり、最も成果が出る方法です」
(いま“囲い込む”って言いかけただろ……)
◆
そこへ、セリアがぎゅっとルイの手を握る。
「ルイを……わたしが守る……!
一緒に……行くから……!」
すると、会議室の光が一瞬だけ強くなった。
女神官が目を見開く。
「この反応……!
“巫女候補級”の光核……!?」
(あれ? セリア、巫女ルート確定した?)
王家の男が頷く。
「二人はセットで扱うべきだな」
◆
黒ローブ――深淵対策室の男が、低い声を落とす。
「鍵と光核。
学院で監視しつつ育てるのが最適だ。
深淵は必ず追ってくる。逃げ場などない」
(お前……さらっと怖いこと言うなよ)
◆
最終的に、会議は四者合意へ。
● ルイ&セリア → 王立魔導学院の“特別候補生”に
● ただし世間向けには“普通の受験生”扱い
● 入学試験を受ける(形だけ)
● 王家・教会・学院・深淵対策室が共同で監視対象に指定
● 封印区画は“最終手段”として留保
(もうこれラスボス級の扱いやん……俺赤ちゃんなのに)
◆
会議終了後。
黒ローブが廊下ですれ違いざま、小声で呟いた。
「……学院で会うぞ、ルイ・グレイフィールド」
(名前覚えたからな……!)
『……嫌イ……』
(だよな)
◆
こうして――
ルイとセリアの“学院入り”は公式に決まった。
だがそれは同時に
“四勢力から同時監視される人生の始まり”
でもあった。
赤子の魂核は静かに疼き、
世界はすでに――
ルイを中心に動き始めていた。




