第19話:黒い霧の“指し示す方角”
街を出てしばらく。
王都へ向かう大きな街道を歩いていると、
「……まただ」
エリオットが空を睨んだ。
細い黒い線のようなものが、
空に薄く伸びていた。
(あれ……深淵の“残滓”か)
俺の魂核が即座に反応した。
『……導ケ……』
(導けって言われても……)
白が黒を押し返すように小さく光る。
◆
「深淵が……“何かを指している”?」
リオネルのような鋭い感覚があるのか、
エリオットが呟いた。
「この流れは……王都と逆方向だ」
(逆方向?)
黒い霧は
“森の奥のさらに奥”
もっと危険な方向を示している。
(なんだよ……誰が呼んでるんだ)
◆
その時、街道の向こうから馬車が走ってきた。
「避けてくださいーっ!!
魔獣が追ってきてます!!」
馬車の後ろには、
黒い霧をまとった狼のような影。
「深淵汚染の魔獣!」
(うげ……めんど……)
◆
馬車は横転。
旅人たちが逃げ惑う。
「エリオットさん!!」
「任せろ!」
エリオットが光の剣を振るう。
だが、深淵狼の動きは速い。
「っ……!」
旅人の女性が襲われる瞬間――
俺の魂核が勝手に反応した。
『……守レ……』
(また勝手に……!)
白黒の光が、俺の指先から漏れた。
その瞬間、
深淵狼の動きが止まった。
『……複合核……確認……退避……』
狼は森の方へ逃げていった。
「また……赤ん坊が……!」
「ルイ……あなた……」
(いや俺もビビってる)
◆
「……深淵側は、あなたに“怯えている”」
エリオットは静かに言った。
「複合核は、彼らにとって想定外なのだろう」
(そりゃ俺だって想定外だよ)
しかし旅はまだ続く。




