第18話:最初の街、そして“監視の爪”
深淵偵察影との遭遇から数時間後。
森を抜けた俺たちの前に、小さな街が広がっていた。
石壁に囲まれた街。
行商人の声。
煙突からの白い煙。
(うお……文明レベル一気に上がったな)
初めて見る“外の世界”に、魂核が静かに震えた。
◆
「ここがミーアの街だ」
エリオットが淡々と説明する。
「王都へ向かう者は必ず立ち寄る。
休息と補給には最適だ」
(説明は丁寧なのに、態度は全部冷徹なんよ)
父さんはすぐに宿を取り、母さんは俺を抱き直す。
「ルイ……街はどう?」
(どうって言われても赤ん坊なんだが)
けれど、不思議と“懐かしいような安心感”があった。
◆
宿に入った途端──
「教会の方ですか?
こちらに“魔力計測装置”が届いています」
(おい、早くない!?)
エリオットの顔がわずかに固くなる。
「……やはり、本部は動いているか」
(そりゃ俺の複合反応なんて前代未聞だし)
宿の一室に案内され、
白い箱のような魔道具が置かれていた。
「これは……光と深淵の干渉率を測る装置だ」
(教会どんだけ俺に本気なんだよ)
父さんが緊張した声で尋ねる。
「そんな危険なものを……子どもに使うのか?」
「必要です。
放置すれば、どちらの力が暴走するか分からない」
(それはほんとにそう)
◆
エリオットが俺に近づけようとした瞬間──
『……近寄ルナ……』
(うっ……!)
魂核の黒がビリッと反応。
白がすぐに押さえ込むが、
黒は“強者への警戒”を露骨に示している。
「ふむ……測定前の時点で反応しているか」
(いや、その“観察眼だけは”マジ有能なんだよな)
装置が俺に近づく。
白が光り──
黒が揺れ──
計測球が震え──
結果が表示される。
【光:深淵 干渉率 47%】
「……47……?」
「高すぎる……」
エリオットが静かに呟いた。
「この数値は……
成長すれば確実に“世界基準外”になる」
(世界基準外?なんだその嫌な言い方)
母さんが、俺を抱きしめた。
「ルイは……普通の子よ……!」
「……ええ。
普通ではないが、悪ではありません。」
(フォローになってねぇよ)
◆
その時、
窓の外で“黒い羽音”が響いた。
(来た……!)
エリオットが即座に剣を抜く。
「深淵の……偵察鳥か!」
黒い鳥の影が、空を旋回していた。
魂核の黒が震えながら囁く。
『……鍵ヲ……確認……』
(クソッ、またバレた)
エリオットが窓を開き、
光の魔法を放つ。
「――散れ!」
黒い鳥は一瞬で霧散した。
◆
「敵は、もう王都方面にも情報を送っただろう。
“鍵の器が現れた”と。」
(俺の人生ハードモードすぎる)
エリオットは剣を納め、俺を見た。
「急ぐぞ。
もう……ゆっくり旅をしている場合ではない」
(やっと意見一致したな)
こうして俺たちは、
街での休息も最低限にして再出発することになった。




