第15話:動き始めた運命と“旅立ち”の気配
教会調査班が村に滞在して数時間。
空はすっかり夕暮れに染まり、村全体が張り詰めた空気に包まれていた。
調査の結果──
“深淵と光の複合反応” を示した謎の赤ん坊。
それが俺だ。
(……やっぱりまずいよな)
魂核は珍しく静かだった。
黒い声もない。
ただ、深く沈んで潜っているように感じる。
逆にそれが不気味だった。
◆
村長の家には、両親とリオネルが集まっていた。
その空気を読んで、俺は黙って抱かれていた。
「村長……ルイは……どうなるんでしょう」
母さんが震える声で尋ねる。
「調査班は“そのまま監視下に置くべきだ”と言ってきた。
だが私は返した。“まだ赤子だぞ”とな」
「……すまん……ありがとう……」
父さんが深く頭を下げる。
リオネルが腕を組んで言う。
「監視だけで済むと思わない方がいい。
彼らは“未知”を恐れる。
そして恐れた時──排除に動く」
「……!」
母さんが顔を伏せる。
「でも、ご安心を。
あなたたちの息子は……危険ではありません」
リオネルは俺を見た。
その瞳は、いつもの優しいものではない。
“確信した者の目”だった。
「……あの複合反応。
深淵だけでなく、光にも強く反応していた。
あれは──“鍵”の器の証だよ」
(鍵……鍵……またかよ……)
俺の胸が熱くなる。
「ルイ君……君は“世界をどうにでもできる存在”だ。
君が間違えなければ、世界は救われる」
(……プレッシャーすごいんだけど)
だが、そう遠くない未来に
俺がその意味を知ることになる。
◆
その夜、家に戻るとセリアが待っていた。
「ルイ……」
涙目で俺を抱きしめる。
「きょう……怖かった……
でも、ルイが光って……黒が止まって……
なんかね……安心したの」
(俺の方が助けられてんだが)
セリアの白い光が、そっと魂核を包んでいく。
黒い霧は完全に沈黙した。
まるで眠りについたかのように。
「……ルイはね、ぜったい大丈夫だよ」
セリアの笑顔は、
俺の光よりも温かかった。
◆
家に戻り、母さんがそっと言った。
「ルイ……
この村にずっといるのは、もう難しいかもしれない」
(やっぱりそうなるよな……)
深淵の複合反応。
上位光核のセリア。
教会、魔王軍、天使勢力の気配。
村はもう“普通の場所”じゃなくなっていた。
村長からも言われた。
「王都に行け。
学院に入る準備をしろ。
そして……生きろ、ルイ」
俺は小さく息を吸った。
(……行くしかないか)
魂核に触れると、
黒も白も静かに揺れた。
まるで
「行け」
と言われているようだった。
◆
その夜、眠る直前。
森の奥で──
“何か巨大な存在”が一度だけ、ゆっくりうねった。
『……来るがいい……鍵よ……』
(……黙れ。俺は俺の行く場所に行く)
そして俺は、静かに目を閉じた。
明日から、運命は本格的に動き出す。




