第14話:教会調査班、“聖具”が示したもの
村の入り口には、
白銀の鎧をまとった三人と、
白い外套を纏った男女が立っていた。
胸には“教会の紋章”。
それを見た瞬間、村人たちの空気がピンと張り詰める。
(うわ……ガチの調査班だ)
鎧の先頭に立つ男が、一歩前へ。
「我ら王都教会・巡回調査班。
担当騎士、ヴァルト・ルシオンだ」
銀髪、鋭い目つき。
いかにも“規律と忠実”の男って感じ。
その後ろで、細身で無表情の少女が
静かに杖を持っていた。
(あいつ……“審問官タイプ”だな……
やばい雰囲気してる)
リオネルが一歩前に出る。
「到着、早かったですね。
状況は私から説明します。
あまり村を怖がらせるような真似は――」
「任務だ」
騎士ヴァルトは淡々と言い放った。
「光の素質を持つ者を確認し、
深淵反応の有無を調べる。
それ以上でも以下でもない」
(いや、絶対それ以上だろ……
妙に“緊張してる”し)
審問官の少女が、ふっと視線を巡らせた瞬間。
ピクリ。
セリアが小さく震えた。
「……せ、セリア……?」
セリア母が抱き寄せる。
◆
騎士ヴァルトが袋から“聖具”を取り出した。
白い水晶玉のような物。
“光属性を持つ者”に反応する教会専用の道具だ。
「まずは村で最も素質の強いと思われる者から調べる」
(やべぇ……セリアが真っ先に狙われるやつ)
ヴァルトがセリアに近づこうとする。
その瞬間――
「待ちなさい」
セリア母が、一歩前へ出た。
「娘を脅すような真似はしないで。
せめて……丁寧に扱いなさい」
「……心得ている」
表情ひとつ変えずに応じたヴァルト。
しかし彼の手は、僅かに強張っていた。
(こいつ……“恐れてる”んだ)
光の素質を持つ者=天使の奇跡に繋がる。
教会側でも扱いを間違えると自分達が罰を受ける。
だから緊張しているのだ。
水晶玉がセリアに近づく。
その時――
パァァァァァァァ……ッ!
白い光が爆ぜた。
「ッ!?」「目が……!!」
周囲の騎士たちが顔を覆うほどの光。
(……セリア、反応強すぎだろ)
審問官の少女が震えた声で呟く。
「……これ……“上位光核”の……波動……」
(は? 上位?
おいおい……何気に規格外なんだがセリア……)
ヴァルトは水晶を見つめ、目を細める。
「間違いない。
この少女は、非常に強い光の器だ」
セリアは震えながら俺につかまる。
「ルイ……こわい……」
(大丈夫。絶対守る)
魂核が、白く脈打った。
◆
問題はここからだった。
「次に……深淵反応の調査を行う」
審問官の少女が、黒い水晶を取り出す。
“深淵の残滓”に反応する凶悪な道具だ。
「村の全員に当てる必要がある。
深淵の気配は、この周辺に確かに存在した」
(それ絶対俺だろ……)
黒い水晶が“チリッ”と音を立てた。
まだ誰にも近づけていないのに、反応している。
(やば……俺の魂核、また揺れてる)
ヴァルトが険しい表情で周囲を見渡す。
「近くにいる……確実に」
村人たちがざわつく。
セリアが俺を抱きしめる手を強くする。
「いや……ダメ……
なんか、ルイが……痛がってる……!」
(痛くはないんだけど……黒が刺激されてる)
魂核の黒が、
“呼応するように”波打つ。
審問官の少女が、俺に視線を向けた。
「……あの子……」
リオネルがすぐに遮る。
「待て。赤ん坊だぞ?
深淵反応が出るわけ――」
「深淵に年齢は関係ありません」
少女は一歩、こちらへ。
そして黒い水晶を持ったまま
ゆっくり俺へ手を伸ばした。
(やばい……!
近づいたら絶対反応する……!)
魂核の黒が、暴れ始める。
「セリア……!」
俺の手を握るセリアの白い光が、
ぶわっと広がった。
「っ……!!」
黒が一気に押さえ込まれ、
暴走が止まった。
(セリア……お前マジですごいな)
しかし──
審問官の少女の目が、
“はっきりと”俺に向けられる。
黒い水晶が、震えていた。
「……あの子。
深淵と……“光”の両方に反応しました。」
リオネルが息を呑む。
「まさか……そんなこと……」
ヴァルトが呟く。
「……複合反応……?
そんな存在……過去にも例がない……」
少女は冷たい声で断言した。
「報告します。
あの赤ん坊は――
世界の均衡に干渉する可能性があります。」
(……は?
おい……やめろよ……)
ついに教会が、
ルイを“異常存在”として認識した瞬間だった。




