第13話:迫る“教会の影”と森の兆し
到着前の午後
空は雲ひとつないのに、胸の奥がざわついていた。
(昨日の黒の暴走……あれ絶対、呼ばれてたよな)
深淵の囁きは弱まっているが、
どこか“遠くから見られているような”感覚が残っている。
そんな中、村に緊張した声が響いた。
「王都教会の“調査班”が――
もう村へ向かっているらしい!」
「今日の夕方には到着するって!」
村は一気にざわついた。
(うわ……来たよ……一番面倒な勢力)
セリア母が深く息を吐く。
「……早すぎる。普通はこんなに早く来ないはずなのに」
セリアが袖を掴む。
「お母さん……わたし、なにか悪いことした?」
「違うわ。
ただ──あなたの力は、放っておくには強すぎるの」
(そうだろうな。
教会は“光の器”を確保する気満々だしな……)
父さんも不安そうに呟く。
「こんな田舎に……何を探しに来るというんだ」
そのとき、
村の中央でリオネルが皆を集めていた。
◆
「皆さん、落ち着いてください」
リオネルは真剣な表情で話し始めた。
「教会の調査班は、
“光属性の素質”を持つ者を探すために来ます。
ですが……それだけではありません」
少し間を置き、低い声で続ける。
「“深淵反応”も、近くで検知されたそうです」
(やっぱり……!
あの黒い痕跡、完全に教会にバレてる)
村人がざわめき始める。
「深淵って……魔王軍のことか?」
「いや、もっとヤバいって聞いたぞ……」
リオネルの視線が、
ゆっくりと、まるで確かめるように俺へ向く。
「昨日から……どうしても気になる存在がいる」
(いやこっち見るのやめろって!!)
セリアが一歩前に出る。
「リオネルさん、ルイは関係ないよ!!」
「……そうであると、私も願っています」
その言い方が逆に怖い。
◆
昼頃になり、森の見回り隊が戻ってきた。
「なあ、聞いてくれ! 森の奥で……」
男の額には汗がにじみ、息が荒い。
「“黒い霧”が、木の根元から這うように広がってた!」
「なにそれ……魔獣か?」
「いや……魔獣じゃねえ。
魔力の“質”が違う。あれは……もっと禍々しい……」
その瞬間──
俺の魂核がビクリと跳ねた。
『……近い……』
(ちっ……! 本当に呼ばれてる)
黒い霧は、昨日より遥かに近づいている。
◆
夕方。
教会の調査班が到着するまであと数時間。
セリアは気が気じゃない様子で俺に寄り添っていた。
「ルイ……なんか今日ずっと怖いの……
胸の奥が“ぎゅっ”てなる……」
(それ多分、黒が近づいてるからだよ)
魂核は今、白と黒が細かく震えている。
(教会と魔王軍……どっちも来るタイミング重なるとか最悪)
その時だった。
俺の胸の奥で――
白が、ふわっと広がった。
(あ……また勝手に……)
それは昨日より強く、
自分で意図せずに発動するほど自然だった。
白い光が外へ、僅かに漏れ出し──
部屋が一瞬だけ明るくなる。
「……っ!? 今の光……」
「外まで見えたぞ!? 何だあれ……!」
周囲がざわつき始めた。
(やば……!
白魔力、外に反応が出るレベルになってるのか)
セリアは俺を抱きしめながら震えていた。
「ルイは……大丈夫……?
なんで、こんなに光って……」
(俺のせいで……セリアの家、真っ先に狙われるじゃん)
そしてその時――
村の入り口から叫び声が響いた。
「来たぞ!! 教会の調査班が到着した!!」
村人たちが一斉に門の方へ振り向く。
その瞬間、魂核の奥で
“黒い囁き”が小さく笑った。
『……見つかるぞ……“鍵”……』
(黙れ……!)
教会、魔王軍、深淵。
三つ巴の“追跡”が同時に迫っている。




