第1話:死んだ……? そして“深淵”の声
暗かった。
目を閉じているわけでも、何かに覆われているわけでもない。
ただ、光という概念そのものが存在しないような、完全な暗闇。
(……あれ、俺……どうしたんだっけ)
ぼんやりした意識の奥で、じわじわと記憶が戻ってくる。
現実と夢の境目をふらふらと揺れながら、
最後に見た“あの瞬間”が、強烈に浮かび上がった。
雨。
夜道。
傘を畳んだ直後、
視界の端から飛び出してきたトラック。
(あぁ……終わったんだ、俺)
痛みはなかった。
恐怖も、焦りももうどこにもない。
ただ「終わった」という淡々とした事実だけが残っている。
そのときだ。
『……ようやく来たか』
(っ!?)
魂に直接“触れる”ような声が響いた。
男か女かもわからない。
しかし、その存在感は、まるで宇宙の奥底から響いてくるような深さがあった。
(……誰、だ?)
『名乗りは不要だ。お前が知る必要はない』
(いや知りたいんだけど!? ここどこ!? お前誰!?)
『知る必要は、ない』
完全にこっちの意見は無視。話のキャッチボール拒否タイプ。
しかし、不思議と“優しさ”とも“残酷さ”とも感じられる不可思議な感触がある。
『お前に告げることは一つだけだ』
(なに……?)
『お前は、“鍵”だ』
(鍵? 鍵ってなに? ドア? それとも宝箱?)
『世界を“開く鍵”だ』
(世界!? 待って、スケールが急にデカい!!)
『お前は選ばれた。
理由は……そうだな、“適性”だ』
(適性ってなんの?)
『──深淵だ』
その一言で、背筋に冷たいものが走る。
(深淵……?)
『この世界の底。
神々すら覗くことを禁じた領域。
お前の魂はそれと“繋がりやすい”』
(繋がっちゃダメなタイプのやつだよね!?)
『心配はいらぬ。
まだ“向こう”に引きずりこまれるほど弱くはない』
(いやめっちゃ怖いんだけど!?)
声は薄く笑う。
『さあ──向かうといい。
お前の行く先は、もう決まっている』
(決まってるって……どこに?)
『次の世界だ。
そこで、お前は“鍵”として生きる』
(説明不足すぎる!!!)
『足掻け。抗え。
その過程こそが、実に面白い』
(絶対、ロクな奴じゃない……!)
『では──ゆけ。選ばれし器へ』
闇がぱっくりと裂けた。
強烈な光が流れ込み、言葉も意識も全部さらわれていく──
(うわああああ!!!)
◆
──こうして、俺の二度目の人生は始まった。
だがそれが
「ただの異世界転生」などではなく、
世界の運命そのものを変える物語だということを、
このときの俺は知る由もなかった。
初めての作品なので暖かく見守って応援して頂けたら嬉しいです。




