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オーバードライブ

「遠目で見てる分には神秘的なんだがな」


 青白く光る球体は眼球のように震えていた。

 その“瞳”が俺たちを見据えた瞬間、背筋を氷で撫でられたような感覚が走る。

 壁を這う無数の導線は、すべてあの管理AIへと繋がっており、まるでこの塔そのものが“奴の神経”で構成されているかのようだった。


 この惑星で何が起きたかなんて正確には知らない。

 けれど、ここにかつて人間がいたこと、そしてその末に残ったのが――暴走した機械文明だということだけは、嫌でも理解できた。


 今の目標は宇宙船の修復だ。

 でも、どうせ漂流したならこのフェロスって星の“真実”も見てみたい。

 滅んだ文明の残骸に、何か惹かれてる自分がいる。

 

「なぁケロス、もしこれが終わったらこの惑星の歴史教えてくれよ」


「――――――生きて帰って来たらな」


 おいおい、死亡フラグ立てるつもりか?

 言っとくが俺は全力で折りに行くからな。


「――――――じゃ、さっさとAI殺ししちゃいますか」


 そう軽口を叩きながら前に出る。

 その瞬間、目の前に浮かぶシステムウィンドウが現れた。


[この先はエリアボスです。挑戦しますか?]

[はい いいえ]


 俺は迷いなく”はい”を押した。

 初めての正式なエリアボスに心が踊りながら、一瞬の静寂を噛み締めるように戦闘モードへと移行を確認した。


 青白い光が急激に増幅し、球体の中心に黒い瞳孔が開いた。

 そこから閃光が走り、天井を這う導線が一斉に脈打つ。

 塔全体が生き物のように“息を吹き返した”。


[エリアボス:管理AIゼータブレインが起動しました]


 表示されたログの文字列が、ひやりとした電子音と共に消える。

 床がせり上がり、金属音を立てながら円盤が組み上がる。

 空気が焦げた――否、焼けた。高周波の放電音が耳を刺す。


「警戒を怠るな。中枢AIは塔の機能すべてを掌握している」


 ケロスが腕を変形させ、砲口を展開する。

 俺もボルトランスを構え、足を踏み込んだ。


 次の瞬間、塔の光が一斉に消え、闇の中から三つの光が浮かび上がった。

 人の形にも球体にも見える、半透明の光体。

 体内を流れる無数の演算式が、まるで血管のように脈打っている。


[侵入者、確認]

[削除プロトコル、起動]

L-(ライト)Virtual(バーチャル)Body(ボディ)×3が出現しました]


 暗転――そして電撃。

 床一面に青白い稲妻が走り、壁の導線が蛇のようにうねる。

 この空間そのものが()だと理解した。

 

「良いな。こういう専用ギミックは嫌いじゃない」


「塔の神経網と接続されているな。注意しろ」


 俺は跳ね上がる床パネルを次々と飛び越えて〈雷槍〉を発動させた。

 雷光を纏った〈雷槍〉が一直線に閃き、敵の光体を貫く。

 塵となって消えるも、すぐに再構築してしまう。


「こいつらリスポーン持ちか……厄介な」


 光弾が降り注ぐ。三連射。三体で九連射。

 空気を裂く音に反射的に飛び退く。


「しかも、それぞれに三点バーストの弾だと? 厄介なんてものじゃ――――――」


 その瞬間、三体のライトバーチャルボディの指が光っているのを確認した。

 全力で回避行動を行い猛ダッシュで光弾の雨を掻い潜る。


「これじゃキリが無い……!」


 落ち着け、あの雑魚敵はあくまで雑魚敵。

 俺の目標は管理AIを倒す事だ。

 なら、あの青白い球体を攻撃すれば――――――――


 待てよ?


 ケロスの言葉が脳裏に蘇る。


『塔の神経網と接続されている』――――なら、塔そのものを叩けばいい。


「ケロス、()を撃て!」


「承知した。〈グラヴィティ砲〉」


 ケロスの変形した右腕が紫色に輝き重力弾を発射する。

 紫の重力弾が壁を抉る。

 塔全体が苦悶のような悲鳴を上げた。


[警告︰《セクター07》の損傷率15%]


 青い光が赤に変わる。

 空気が熱を帯び、AIの瞳孔が収束する。

 俺の狙いが正しかったのか、そうでなかったのか、どちらにせよ()()が起こった事には違いない。


[最重要防衛プロトコル起動]

[スキル〈挑発者〉を発動しました]


 周囲の導線は青から赤へと移り変わり、暴走モードと言わんばかりに空間全体を激しく揺らす。

 壁が裂け、ミニガンとミサイルポッドが姿を現したかと思えば、

 先程までのライトヴァーチャルボディ達がそれに吸い込まれ、兵器に融合した。


「〈グラヴィティ障壁〉!」


 咄嗟にケロスは球状のフィールドを展開する。

 無数の銃口が火を噴き、塔の内部が硝煙と光で満たされる。

 圧迫感、振動、金属臭――――――現実と錯覚するほどの迫力だ。


「ちっ……暴走AIの癇癪にしては派手すぎるぞ……!」


 銃撃が止み、チャンスが訪れる。

 俺とケロスは同時に前へ出た。


「〈雷槍〉!」

「〈グラヴィティ砲〉!」


[警告︰《セクター07》の損傷率40%]


 雷と重力が交差し塔全体へとダメージを与える。

 ミニガン一つとミサイルは今の攻撃で損傷し使い物にならなくなった。

 もう一つのミニガンは攻撃の隙を狩るように銃口を向け連射するが、その時には既に回避行動を行っていた。

 管理AIの赤い球体を盾にしつつ、ぐるりと回り込むように駆け抜けて再度〈雷槍〉を撃ち込む。


[警告︰《セクター07》の損傷率50%]


 残りの体力が半分となったその時、突然天井から衝撃が加わった。

 ドン、ドン、ドン――――――そんな鈍い音を鳴らしながら天井を突き破って“何か”が落下した。

 無数のケーブルが絡まり、電流が奔る。

 それは蛸のように蠢く金属の集合体――――歪んだ肉塊のようなロボットだった。

 

[エリアボス:管理AIゼータボディが乱入しました]


「………は?」


 ……エリアボスが二体同時討伐だと?!

 しかも……()()って一体どういう事だ?


「これは驚いた。まさか()()()の管理AIが直々に俺達を排除しに来るとは」


 あ〜それなら良かった、これで最上階に行かなくても良くなったのか。

 ………じゃねぇよ?!

 一体でも強大なエリアボスがもう一体現れるとか聞いて無いって、つーか悪夢以外の何者でも無いんだが!


「畜生……完全に特殊イベント引いたやつだ、これ」


 ゼータボディの身体がヌルリと床を這い、金属を擦る不快な音が塔中に響き渡る。

 触手のようなケーブルがうねり、壁や天井の導線に繋がっていく。

 まるで塔そのものと融合するように、ゼータボディは光を吸収し始めた。


[プロトコル融合:ゼータブレイン+ゼータボディ]

[最終演算形態――――ゼータオーバードライブ、起動]


「……あ〜なるほどな、合体する感じなのか」


「フェロスの管理AI群は元々単一の個体だった。分離しても再接続できる――――今のは、その再統合プロセスだ」


「そういうの、もっと早く言ってくれないか?」


 塔全体の照明が一瞬で反転した。

 青も赤も消え、代わりに紫の雷が塔の芯を走る。

 ゼータオーバードライブ――――それはもはや一つの存在ではなく、“塔そのもの”が意志を持って動いていた。


[侵入者特定。排除を最優先行動に設定]

[全砲門、解放]


 天井、床、壁、あらゆる場所から壁から砲口が伸びる。

 全方位から照射される光線の網が、逃げ場を奪った。


「ちっ……攻撃範囲が広すぎる!」


「任せろ、全開で展開する!」


 ケロスが展開した〈グラヴィティ障壁〉の中で、俺はボルトランスを構え直す。

 光線が障壁に反射し、周囲の壁を焼き焦がす度に、塔全体が悲鳴のような軋みを上げた。


「宇宙船のパーツ集めしたかっただけなのに、いつの間にか塔を壊すハメになってるなんてな」


 身体が震えだす。

 この震えが()()のもので無く、”武者震い”としての震えである事を祈っている。

 

 ここからは本当のエリアボス”最終決戦”だ。

 

「奴の演算中枢は塔の内部構造と直結している。中枢を破壊すれば、ゼータの制御は崩壊するはずだ」


「つまり、やる事は変わらないって訳だな」


 障壁が砕ける寸前、俺は跳躍する。

 紫電が奔る中、浮かぶ床を連続で踏み抜きながら突進すれば、中央のコアが見えた。

 それは未だ脈動し、塔の鼓動と同調している。


「あれだな」


 俺は次々と浮かぶ床に乗り移り、無数の光線を間一髪避けていく。

 地面と空中を駆けながら槍に雷を纏わせる。

 一瞬の隙を搔い潜り、そのコア目掛けて槍を突き刺した。

 

「〈雷槍〉、更に〈刃閃〉ッ!」


 連撃が炸裂し、演算コアが悲鳴を上げる。


[警告︰《セクター07》の損傷率65%]


 ゼータオーバードライブは悲鳴を上げながら、光線の放出量を激化させる。

 光が頬を掠るが、その後の攻撃はなんとか屈んで回避を成功させる。

 

「あっぶっ……! その……程度かエリア……ボスめ! 俺はまだ……死んじゃいねぇぞ!」


 回避、回避、回避――――――

 次々と迫りくる光線に冷や汗を垂らしながらも、全身を大きく使って避け続ける。


「〈グラヴィティ砲〉」


 俺にヘイトが向かっていたその瞬間、ケロスの重力弾がコアを着実に押し潰していた。


[警告︰《セクター07》の損傷率85%]


「〈刃閃〉」


[警告︰セクター07の損傷率90%]


 確実なトドメの為に軽く〈刃閃〉で切り付け即退避する。

 最後の一撃、〈雷槍〉を準備し構え――――――


「不味っ?!」


 ――――るのと同時に数々の光線が攻撃を阻止する為に襲い掛かる。

 攻撃態勢に移った俺に回避する選択肢は無い。


「〈グラヴィティ障壁〉! 行け!」


 俺は光線を受け止めるケロスの裏から飛び出し、槍に雷を纏う。


「〈雷槍〉ッ!」


 一閃。


 電光石火の如く電流が走ったかと思えば、かの強大なエリアボス――――――ゼータオーバードライブに風穴が開いていた。


[管理AIゼータオーバードライブを撃破しました]

[特殊イベント︰塔の崩壊]

[スキル〈雷電炉〉を獲得しました]

[スキル〈迅雷演算〉を獲得しました]

[スキル〈コアリンク〉を獲得しました]

[素材アイテム︰エネルギーコア×2、静電結晶×3、機構骸装フレーム×5]

[報酬:記憶断片ログ:ZETA-07、宇宙船強化パック]


 光が消え、紫の残滓だけが宙を漂う。

 天井が崩れ、金属が音を立てて崩落していく。


「……終わった……のか?」


「否、聞こえるか、ハク」


 ケロスの電子声が微かに震えていた。

 耳を澄ませば、沈みゆく塔の奥――――ノイズ混じりの声が残響する。


『――侵入者……解析完了……データ転送開始……』

『旧人類を――――抹殺せよ』


「抹殺ねぇ…………なんて物騒な」


 崩落する穴から、徐々に月光が差し込んでくる。

 

 そして――――――

 

「月に…………何か居るな?」


――――――その隙間から()()が見えた気がした。


 俺は笑った。

 恐怖ではなく、未知なる存在への高揚で。


「このゲーム、面白っ」


他の話でクエスト報酬を出し忘れる事件が判明したので、いっその事、記憶断片ログ:ZETA-07(討伐報酬)と宇宙船強化パック(クエスト報酬)を同時に報酬にしちゃいます

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