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【別視点】白黒つける戦い【参】

 【エクリプスレギオン】の中央ギルド拠点から断末魔が広がる前、別の戦場では既に銃声の雨が森を裂いていた。


「文明レベルの差を思い知れ!」


 鋭く、そして響くような声で叫ぶ者の主は【月読工房】のギルドリーダー、クリエ。

 白銀の外骨格に身を包み、瞳には戦術情報を映すホログラムが瞬く。

 彼女の号令と共に、メンバーたちは整然と配置に散った。金属の軋む音が重なり、森の静寂は完全に破られる。


 前線に並ぶのは、無骨な金属塊――――――機関銃。


 トリガーが引かれた瞬間、銃口が赤熱し、森を切り裂く閃光と共に弾丸の嵐が吐き出された。

 銃弾は木々を砕き、装甲を穿ち、【エクリプスレギオン】の兵たちを一掃していく。


「ここはファンタジー世界ではない。SF世界さ! 技術力の差がそのまま戦局に左右される!」


 この世界の戦争で必要なのは、ただ一人の無敗将軍では無く、強靭なる軍隊である。

 そう言わんばかりに、ギルドメンバーの装備もガッチリと揃えていたのだ。


 その名もパワードスーツ――――――それはSF世界にて、自身の身体能力を補佐及び向上させてくれるものであり、例え凡人が装備しても、通常の歩兵以上のステータスを誇る。

 それ程までにステータスの伸び幅が他装備より一線を画すのだが、その代わり装備スキルが付いていない。


 まさしく、強者に対抗する弱者の為の装備。


 そして、一人一人に小銃を持たせており、この森林での集団戦闘で圧倒的な優位を保っていた。


「この際、有り余る弾は湯水の如く使おうじゃないか! 奴らに復帰の時間を与えるな!」


 クリエが指を鳴らすと、森の上を低空飛行し、旋回していた戦闘艇が唸りを上げた。

 艦底ハッチが開き、漆黒の影が落下する。


 ――――――次の瞬間、地面が赤く閃き、轟音と共に世界が燃え上がった。


「焼夷弾、投下完了」


「ふふ、我々【月読工房】と【検証学会】の合作だ。森林地帯には、これ以上ない燃料だろう?」


 炎は木々ごと対象を燃焼させる。

 悲鳴と怒号が彼らを支配する。

 クリエはそれを見て歪んだ笑顔を向けていた。


「うへぇ、敵ながら可哀想……」


 とある男性のプレイヤーが呟く。

 彼のプレイヤーネームは”命KING”、【月読工房】の副リーダーであり、クリエの右腕だ。

 彼はとても優秀で創作や設計に対して造詣が深いが、いかんせん良心があり過ぎて、時折気圧される事もある。


「命KING、敵に情けはかけるんじゃないよ」


「分かってるよ。でも、やっぱり僕は工房に籠もって物を作る方が好きだなぁ」


「……否定はしないよ。その為にも、さっさとこの戦を終わらせないとね」


 その瞬間――――――地を震わせる重低音が響いた。

 一度、二度、三度。

 森が唸るように振動する。


「リーダー! 前方に巨大な敵影、接近中!」


 視線の先、木々を薙ぎ倒して進む“影”があった。

 装甲は金属の光を放ち、無数のエネルギーラインが体表を走る――――――それは、巨大なロボットだった。

 まるで【月読工房】が文明の力を使うなら、【エクリプスレギオン】はその上を行くと言わんばかりであったのだ。


「わぁ……! あれ、戦隊ロボットって奴だよ!」


 それを見た命KINGは子供のように感嘆する。

 ただそれを見せてくれるのなら良かったのだが、問題はその戦隊ロボットが牙を剥いて来ているという事である。


「ふはははっ、このロボットで皆殺しにしてやる!」


 その中にはガルバードの声が響いていた。


「ど、どうしよう……壊したくない!」


 【月読工房】からは――――――他のプレイヤーから見れば意味不明な理由で、苦悶の表情になっている。 

 まさか、下手に攻撃出来ない程格好良い戦隊ロボットを乗り回して攻撃しに来るなんて完全予想外だったのだ。


 クリエが通信でギルドメンバーに命令を下す。


『ギルドメンバーに告ぐ、機械ではなく、中の搭乗者そのものを狙え。そうすれば、あれを鹵獲する事が出来るかもしれない』


 それを聞いたギルドメンバーは目の色を変えてやる気を出す。

 もし、あれを鹵獲して技術を盗めば、我々も巨大な戦隊ロボットを作って乗り回す事が出来るかもしれない。

 そんな胸躍る想像を抱きながら、各自行動を開始した。


「寄越しやがれ、そのロボット! 〈カウボーイ〉!」


 スキル発動の声と共に、幾重もの電磁ロープが放たれた。

 それは光を帯びた縄となって巨大な身体を絡め取り、動きを拘束する。


「ちっ、妨害系のスキルか……!」


「〈ソウルサイト・レイ〉」


 森の奥から、眩い光線が放たれる。

 一筋の光が機体を貫き――――――次の瞬間、ガルバードの身体だけが悲鳴を上げた。


「がはっ……!」


 しかし、ロボットには傷一つ付いておらず、中に搭乗しているガルバードのみにダメージが行っていた。


「装甲のすり抜けだと?!」


 衝撃がガルバードの全身を駆け抜ける。

 強固な装甲が無意味に思える瞬間だった。


「これでも喰らえ……〈フォトン・ランチャー〉!」


 巨体の右腕が展開し、砲口が白光を放つ。

 放たれたエネルギー弾が縄を焼き切り、空間を抉りながら爆発を巻き起こす。


『……どうやら無傷で鹵獲は難しいようだ。なら、多少傷付けても構わない。後で無事なパーツを組み合わせればいい』


 クリエは意を決したように機関銃の一斉射撃を命令する。

 それらの機関銃が一斉に火を噴き、銃弾の奔流がロボットを包み込むが、その装甲は揺るがない。


「ふん、その程度か! 〈ノヴァ砲・改〉!」


 だが、その装甲は揺るがない。


 機体胸部が光を集束させ、轟音と共に解き放つ。

 白光が森を焼き、パワードスーツ部隊を飲み込んだ。爆風で大地が裂け、炎が空を舐めるのだ。


「命KING、()()の準備は出来てるな?」


「うん、今チャージ完了した」


 森の奥で、淡い青光がうねる。

 空気が震え、電離音が走る。


「撃てぇ!」


 クリエの声が、引き金となった。

 森の奥から放たれた極太の光線が、一直線に夜を貫く。

 それはまるで天より降る“神罰の槍”の如く。


 光が収束した時、戦隊ロボットの胸部には、風穴が穿たれていた。


「そんな……ばかな……!」


 ガルバードの声が途切れ、機体が崩れ落ちる。

 爆散した装甲が宙を舞い、塵と化して消えた。


「【月読工房】の技術力は、宇宙一ィィィィィッ!!」


 クリエの絶叫が夜空を揺らし、兵たちの歓声が応える。

 炎と光に包まれた戦場で、勝者の旗が掲げられた。

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