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セクター04&05は夢を見る

[第一幕 レムストリート]


「………俺達は《螺旋交塔》に入った。そうだな?」


「うん、そのはずだけど……ここどこ?」


 まず、俺達の目の前に写っている光景は物凄く広大な街並みだった。

 この時点であの塔の大きさを遥かに超える広さではあるのだが、更に驚くべき事は非常に”ポップ”な事だ。


「何だここは……見たことが無い」


 流石のケロスも、単眼の赤眼からでも困惑しているのが見て取れる。


 現実の色が音を立てて剥がれ落ち、代わりに絵の具で塗られたような空が広がっていく。

 街並みは歪んだ曲線で描かれ、家々は笑っているように屋根を反らせ、

 ランプの光はふわりと浮かんでは“パッ”と星型に弾けた。 

 道路はチューインガムのように柔らかく、足を踏み出すたびに”ポヨン”と音が鳴る。

 そのたびに足跡が虹色のインクで描かれ、数秒後には煙のように消える。


「いつからこのゲームはカートゥーンになったの?」


 看板には“おやすみ横丁”とか“現実禁止”といった文字が踊り、空を飛ぶ雲たちはセリフ吹き出しの形をしている。

 「こんにちは」と呟けば、声が泡になって浮かび、泡の中に自分の言葉が文字として描かれる。

 それがゆっくりと風に流されていくのを見て、ようやく気づく――――――この場所では言葉すらも物質化するのだと。

 まるで、漫画の吹き出しみたいに自身の発言が浮かび上がる光景は常軌を逸していた。


「……あ〜どうやら、僕達は夢を見ている様だね。誰か頬をつねってくれない?」


 美食家が非現実的な光景を前にして現実逃避したくなるが、おかしな空間はまだ終わらない。


 空は永遠の夕暮れ。

 陽が落ちることはなく、影が伸びる代わりに“影の線”が筆で描き足される。


「情報量が多すぎて頭までおかしくなりそうだ」


 世界そのものがアニメーションの途中工程にあるような、不安定な質感。

 笑い声の音が遠くから響き、だが誰も笑っていない。


「ここまで()って表現が似合うダンジョンもないわね……」


 トロイがあきれ顔で呟いた瞬間、彼女の吹き出しが“ぽよん”と頭の上に浮かび上がる。

 その吹き出しにはちゃんと文字が出ており、しかも――――顔文字付きだった。


「( ˘ω˘ )zzz……って、なにこれ!?」


 驚いて吹き出しを払おうとすると、指先がそれを“掴めて”しまう。

 トロイは慌てて吹き出しを握りつぶし、“パチン”と弾ける泡のように消した。

 次の瞬間、その泡が散るように光の粒が周囲に降り注ぐ。


「これは……現実の理屈が一切通じないな」


「むしろ、理屈なんて最初から存在しないのかもね」


 美食家の言葉が泡になって宙を舞い、その泡の中で“存在しない”という文字がゆらゆらと踊った。

 そしてそれが地面に落ちた瞬間―――――道路が、ぺたり、と笑った。


 そう、本当に笑ったのだ。

 歪んだアスファルトの唇が「ようこそ」と囁くように動き、虹色のインクが地面から噴き出す。

 そのインクの中から、何かが“這い出して”きた。


 ぐにゃり、と輪郭が揺れる。

 体は落書きのように線で描かれている棒人間。

 だが確かにそれは生きている。

 顔には紙を貼っていて、そこに『一次元』の三文字が浮かんでいた。


[ラインイーターが出現しました]


 道路を滑るように走り、動くたびに地面の線や輪郭を喰らっていき、街の外壁がガリガリと削れ、背景の奥行きまでもが消えていく。

 まるでこの世界の“線”そのものを食べているようだった。


「街を食べてる……?」


「気色悪いね〜〈サイ・フリッカー〉」


 美食家は新たにスキルを覚えたのか、数本のナイフを空中に投げラインイーターに向かって()()して襲いかかる。


 しかし――――命中した瞬間、刃の軌跡ごと()()()()

 当たったのではない。

 この世界の線として消去されたのだ。


「ナイフも食うのかよ?!」


「ならば、これはどうだ。〈グラヴィティ砲〉」


 ケロスは腕の砲身を展開。

 空間ごと歪ませる重力弾を放つが、線喰いは体を溶かすように分裂して楽々と回避した。


 更にその残滓が看板の文字を喰らい『おやすみ横丁』が『おやす……』だけになってしまう。


「〈クイックバレット〉」


 トロイは即座に二丁拳銃を構えてリズミカルに銃弾を放ち、その銃声が鳴るたび、吹き出しの形をした弾丸が飛んで『BANG!』『ZAP!』『POW!』と音が浮かび上がった。

 その“言葉の弾丸”が、ラインイーターの体に食い込むたびに、インクの軌跡が乱れる。


「どうやら物理的な攻撃より、言葉の具現化を利用した攻撃の方が効果があるみたいね!」


 彼女の声が泡となって弾け、その音の残響が衝撃波のように周囲を震わせる。

 美食家もそれを見て口角を上げた。


「なるほどね……つまり、“魅せる”戦いってわけだ」


 彼は次の瞬間、指先を鳴らす。

 空に巨大な吹き出しが現れ、そこには――――――


 『グルメデスショー』


 の文字が燃えるように浮かび上がる。

 世界が“その演出”を認識し、線喰いの背後に影絵のような多重構図が展開された。


 舞台の幕が開く。

 雷鳴とともに、ナイフの群れが咲き乱れる。

 線喰いが線を喰らおうとした瞬間、ナイフの影が独立して襲いかかる――――――


 「喰えるもんなら、喰ってみなよ!」


 影の刃が舞い、黒いインクが四散する。

 そして、世界の色が一瞬だけ現実に戻った気がした。


[ラインイーターを撃退しました]

[スキル〈線喰い〉を獲得しました]

[素材アイテム︰断線インク、輪郭骨×4]


「ひとまずは倒し――――?!」


 その瞬間――――――まるで、テレビのチャンネルを変更したかのように景色が一瞬で変化した。


[第二幕 パレットワールド]


 まるで夢の如く景色が移り変わり、目が覚めれば人気の無い美術館だった。

 しかし清潔感の欠片も無い程に散らかっており、あちこちが色の違うインクがばら撒かれている。


「もう少し勝利の余韻に浸らせて欲しいが……」


「次も同じように速攻で倒すだけだよ」


 俺達の視線の先には同じく棒人間が絵を描いていて、小汚く筆をインクに付けて絵を塗り付ける。

 そのインクの汁が飛び散る様を見て、奴こそがこの美術館の惨状の原因だと確信する。

 

 一瞬、筆を止める。

 僕達の方を振り向けば、顔に貼ってある紙に『二次元』と書かれていた。


[サーフェイスイーターが出現しました]


「先手必勝! 〈サイ・フリッカー〉」


 美食家が数本のナイフを投げ襲いかかるが、サーフェイスイーターは避けようともしない。

 筆で絵画に何か加筆したかと思えば、突然ナイフが()になった。


「えっ」


 当然その花達がサーフェイスイーターに当たろうとも痛くも痒くも無い。

 そしてニヤリと笑った瞬間――――――()()が変わった。


「ここは……砂漠?!」


 まるでカウボーイにでも出てきそうな荒廃した砂漠。

 丸い枯れ草であるタンブルウィードが風に乗ってコロコロと転がり、熱い日差しが地面を焼く。


 隣の小屋の中から様々なキャラクターの等身大パネルが姿を現し、その手には銃口を向けている。


「〈クイックバレット〉」


 しかし撃たれる前にトロイの二丁拳銃が火を噴いた。

 早撃ちなら負けないとばかり、次々に出現する等身大パネルの眉間を撃ち抜いていく。


 それを見たサーフェイスイーターはとても楽しそうに、絵画の加筆を続けている。 


「あらゆるものを書き換える――――――ナイフも景色も、奴にとってはキャンバスに描かれた物でしかない……ならば」


 ケロスは砲身を展開する。

 紫色の照準光がサーフェイスイーターへと向けられる。


「合わせろ」


 俺はその言葉で意図を理解し、手の中に雷を込める。

 美食家も続いて数本のナイフを構えた。


「〈雷霆〉」

「〈グラヴィティ砲〉」

「〈サイ・フリッカー〉」


 俺達は一斉に雷と重力の一撃と数本のナイフをサーフェイスイーターに撃ち飛ばした。

 その攻撃に気が付いたサーフェイスイーターは書き換えようと筆を動かすも、トロイとの攻防で間に合わない。


 雷鳴轟き、空間を歪ませ、斬撃が切り裂く――――――

 その猛攻に耐えれるはずも無かった。


[ラインイーターを撃退しました]

[スキル〈面喰い〉を獲得しました]

[素材アイテム︰虹色インク、輪郭骨×4]


 その瞬間――――――まるで、テレビのチャンネルを変更したかのように景色が一瞬で変化した。


[第三幕 ボリュームリアリティ]


「………だから、勝利の余韻に浸らせろぉ!」


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