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第八十二話:奇跡の輝き

Scene.302 古き者


『…我、奇跡の輝きを放つ魂を、遂に見つけたり…』


その深く厳かでそしてどこか懐かしい声に導かれるように。

ウチはゆっくりと目を開けた。

最初に目に飛び込んできたのはボロボロに崩れた玉座の間の天井だった。

そしてウチの顔を覗き込む二つの顔。


「お姉ちゃん!」


「莉央様…!」


エリナとリラの涙でぐしゃぐしゃになった顔だった。

ああそうか。ウチ生きてるのか。

あの絶望的な状況から。


ウチはゆっくりと身を起こした。

不思議だった。折れたはずの腕も肋骨も痛まない。

それどころか今までで一番体が軽い。まるで生まれ変わったみたいに。


「…莉央様。…あちらに」


リラが指差す方向を見てウチは息を飲んだ。

ゲブが座っていた黒曜石の玉座のすぐ側に、一人の老人が静かに立っていた。

その体はまるで苔むした古い岩で出来ているかのようだった。長い髭はまるで鍾乳石。だがその瞳だけが磨き上げられた宝石のように深い輝きを宿していた。

そしてその顔は、長い長い旅路の果てにようやく目的地に辿り着いた旅人のような、とても満足そうで穏やかな表情をしていた。


「…誰?あんた」


ウチは警戒しながら尋ねた。

だがウチの問いに答えたのは老人ではなかった。


「お姉ちゃん待ってください」


エリナがウチの肩に手を置いた。


「この方からは敵意は感じません。…それどころか、とても懐かしい大地の匂いがします」


彼女はその不思議な老人を見つめて言った。


「私の頭の中に流れ込んでくる星の記憶が告げています。この方は『古きエンシェント』…。この星がまだ若かった頃から、その誕生から終わりまで、全てを見守ってきた大地の賢者です」



Scene.303 ゲブの告白


(星の記憶か。マジ便利なスキル持ってんじゃん)


ウチはエリナの言葉に驚きながらも目の前の岩の老人を見据えた。

『古き者』。

じゃあウチが意識を失う前に聞いた声はこいつのか。

岩の老人はゆっくりと口を開いた。


『…わしはゲブ。かつて『憤怒』と呼ばれた愚か者じゃ』


「…は?」


『お主の魂が放った奇跡の輝きが、わしを2000年の呪いから解き放ってくれた。…礼を言うぞ、小さき英雄よ』


ゲブはウチに向かって深々と頭を下げた。

そして彼は語り始めた。世界の真実を。


『どうやら本来は「支配」を含めた八つの大罪だったらしい。魔王が司っていた『支配』、マモンの『強欲』、樹里の『嫉妬』、アスモデウスの『色欲』。莉央、お主はあの夜、五つ目の大罪『憤怒』をもその身に取り込み、浄化したのじゃ』


『つまり現在、5対3…。世界のバランスは大きくお主に傾いた』


なんとなくは理解した。

ウチは今、五つの大罪の力をこの身に宿す、とんでもない存在になっちゃったってゆーことだ。

ウチは全てを理解した上で、目の前の岩の賢者に最後の問いを投げかけた。


「で?世界を蝕む本当の病巣と、大罪が生まれた本当の理由って何?」



Scene.304 世界の始まりと終わり


ゲブはゆっくりと語り始めた。

この世界が生まれた時、その安定を司るための八つの概念…『八柱神』が同時に生まれたのだという。

『統治』『繁栄』『愛情』『好敵』『安息』『糧』『自尊』そして『義憤』。

それが後の支配、強欲、色欲、嫉妬、怠惰、暴食、傲慢、そして憤怒…八つの大罪の本来の姿だった。


だが、ある時この世界に“病巣”が生まれた。

世界の外側から染み込んできた、全てを無に還そうとする力。

ゲブはそれを『大いなる虚無ザ・ニヒリティ』と呼んだ。


『虚無は八柱神を滅ぼすことはできなかった。じゃがその心を蝕み腐らせることはできた』


『『統治』は『支配』に堕ちた。『繁栄』は『強欲』に。『愛情』は『色欲』に…。八柱神はその本来の役割を捻じ曲げられ、世界を救うための力で世界を蝕む呪い…『大罪』へと変貌させられたのじゃ』


「…じゃあ、あのギャル神はなんなの?」


『女神ルナは我らよりも遥かに後に生まれた若き神。…言うなればこの世界の庭師のようなもの。庭を荒らす害虫…大罪と魔王を駆除しようとしておるが、病の根源までは理解しておらぬ』


ゲブはウチを真っ直ぐに見た。


『だが彼女は一つの正解に辿り着いた。この病を治すには世界の外側からの“抗体”が必要だと。…それこそがお主だ、莉央』



Scene.305 ウチの本当の役割


『お主は転生者であり、この世界の理に縛られぬ唯一の存在』


『そしてお主は絶望の淵で、『贖罪』という奇跡を生み出した』


『その力は大罪の呪いを滅するのではなく、浄化し、本来の姿へと還すことができる唯一の力』


ウチは息を飲んだ。


『お主の本当の役割は大罪を殺すことではない。…彼らを救い、この世界を本来のバランスへと戻すことにある』


「…救う?」


『さよう。お主は既に五柱をその身に取り込み浄化した。…残るは三柱。…『暴食』『怠惰』、そして最も厄介な『傲慢』』


『その全てを取り込み八柱神をその身に宿した時、お主はこの世界を『大いなる虚無』から完全に解放する救世主となるだろう』


ウチは乾いた笑いを漏らした。


(…なるほどね。話は分かった)


(…つまり残りの三匹も見つけ出して、全部ウチが取り込んで、この世界を元に戻せってこと?)


(…うわー、めんどくさー。ウチはエリナとリラがしあわせなら、後は別にどーでも。)


(まぁ、大罪を倒す目的は一緒だから、ついでなら、だよ。つ・い・で)


ただ、ウチには他にも気になることが、まだあるんだよね。

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