表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/116

第六十話:空っぽの凱旋

Scene.213 始まりの羽根


樹里が消えた。

ウチの腕の中に残されたのは一枚の温かい白い羽根だけ。

ウチはそれをそっと拾い上げると、自分の胸の谷間にしまい込んだ。ブラジャーと素肌の間に挟み込む。トクントクンとウチの心臓の鼓動が、羽根に伝わっていた。


(…ここにいなよ、樹里)


(キミのしょーもない嫉妬も悲しみも全部、ウチが背負ってあげる)


(…だからもう、安らかに眠りなよね)


ウチはゆっくりと立ち上がった。

背後ではエリナっちとリラっちが、心配そうにウチを見ている。

ウチが自分の過去に打ちのめされて、泣き崩れてるとでも思った?

ウチはくるりと振り返ると、わざと不敵な笑みを浮かべてやった。気を使われる前にこっちから仕掛ける。それがウチのやり方だ。


「なによ。そんなシンキくさい顔しちゃって」


ウチは二人の元に歩み寄ると、その頭をガシガシと撫で回した。


「ウチよりキミらの方こそ大丈夫なわけ?力、戻ったの?」


「…はい」


リラが自分の胸に手を当てる。その手の中に淡い紅蓮の炎が灯った。


「彼女の消滅と共に、私の『紅蓮の紋章』が…戻ってきました。なぜか以前よりも澄んだ力になった気がします」


「私もです…!」


エリナの手の中にも優しい星の光が灯る。

どうやら樹里が死んだことで、『絶対簒奪』の効果は消え、奪われた力は持ち主の元へ還ったらしい。


「そっか。なら問題ないじゃん。立てる?」


ウチは二人に手を差し伸べた。


「もう行こう!」



Scene.214 残された謎


ウチらは互いに肩を貸し合いながら、ボロボロになった玉座の間を後にした。

だけど、ウチの頭の中はもう次の問題でいっぱいだった。

マモンのあの最後の言葉。『声を聞いた』。

ヤツに『強欲』の力を与えた何者かがいる。


(樹里もそうだ。『嫉妬』の魔人になったのはキミの意志?それとも、誰かにそうさせられたの…?)


そして、一番の謎。


(大体、なんで樹里がこの世界にいたわけ?偶然?…いや、そんなワケない)


ウチをこの世界に送り込んだのは、あの白ギャル神。

だとしたら、樹里をここに連れてくることができたのも…。


(全ての元凶は一人しか思い当たらない)


(…あの、クソギャル神…!)


あいつ何か知ってる。いや、間違いなく全ての糸を裏で引いてる。

ウチは空を見上げた。この空の遥か彼方にいるであろう、元凶の顔を思い浮かべながら。



Scene.215 消化不良の復讐劇


魔王城を後にしたウチらは、近くの岩陰でキャンプをしていた。

リラっちが『女王の閨房』を出そうかと聞いてきたけど、ウチは断った。今はそんな贅沢な気分じゃない。

三人で黙って焚き火を見つめる。


(…あのギャル神が全ての黒幕だって決めつけるのはまだ早いかな…。この世界、ウチの知らないルールが多すぎる。…濡れ衣かも)


冷静に考えれば分かることだ。

だけど、思考が冷静になればなるほど、腹の底から別の熱い感情が込み上げてくる。

ウチは思わず近くの岩を拳で殴りつけた。


「…クソが!」


「お姉ちゃん…?」


エリナが心配そうにウチの顔、覗き込む。

その優しい目にウチの心のタガが外れた。


「…魔王だよ!あのクソ野郎が!」


ウチは吐き捨てるように叫んだ。


「ウチは!アイツをこの手でズタズタに殺すためだけに、ここまで来たんじゃん!地獄の底から這い上がってきたんじゃん!」


「なのに、なんであんな…!ウチの知らないところで、勝手に樹里に殺されて、それで終わりなの!?」


「あの屈辱が晴らせないなら、このやり場のないムカつきは、どこにぶつければいいわけ!?」


ウチの絶叫が荒野に虚しく響き渡った。

エリナも、リラも、何も言わずにただウチの言葉を聞いてくれていた。


「…七つの大罪の問題がまだ残ってるのは分かってる。でも、一番最初の目標だった魔王への復讐が、こんな消化不良で終わっちゃって…なんか、マジでモヤモヤすんだよ…」



Scene.216 八つ当たりの次の目標


「…決めた」


ウチは顔を上げた。

その目にはもう迷いの色はなかった。


「次の目標。…魔王の残りカス…魔王軍の四天王だかなんだか知らないけど、幹部たちがまだ世界のどっかでふんぞり返ってるんでしょ」


「…そいつらをまず全員叩き潰す」


「え…?」


「莉央様…?」


二人が戸惑った顔をしている。


「八つ当たりだよ。理不尽な逆恨み。それが何か?」


「ウチのこのムカつきが収まるまで、アイツらにはサンドバッグになってもらうの」


ウチはニヤリと獰猛に笑った。


「文句ある?」


ウチのあまりにも理不尽な宣言に、エリナとリラは一瞬顔を見合わせた。

そしてすぐにふわりと笑った。


「いいえ。ありません」


「莉央様の気が晴れるのでしたら、どこへでもお供しますわ」


こいつらマジでウチのこと甘やかしすぎでしょ。

だが、その優しさが今はありがたかった。


「よし、決まり!まずは情報収集!四天王の居場所を探すよ!」


モヤモヤした気持ちを振り払うように、ウチは立ち上がった。

復讐の代償行為。

上等じゃん。

魔王軍の残りカスども。せいぜいウチのストレス解消に付き合ってもらうからね。

覚悟しときなよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ