第五十二話:三人の夜宴
Scene.183 三人の魔女の秘密の夜宴
リラのあのしょーもないけど、どこか愛おしい昔話を聞いた後。
ウチらがどうなったか。
…まぁ、野暮なことは、聞かないでよね。
女の子三人、一つ屋根の(異空間の)下。
外の世界のことなんて完全にシャットアウト。
テーブルにはリラが出した極上の酒と、美味い料理。
ベッドは雲の上みたいにフカフカ。
そりゃ、色々あるっしょ?
最初はただの女子会だった。
ウチがいた元の世界のしょうもない恋バナとか、メイクの話とか。エリナっちが目をキラキラさせて、聞いてた。リラっちは貴族の作法とかうぜぇ自慢話を、酒の力で饒舌に語ってた。
でも、夜が深くなるにつれて。
今まで、戦い続けてきた、緊張の糸が、切れて。
誰からともなく、互いの傷跡に触れていた。
ウチらがあの夜、どうやって一つになったのか。
誰が誰を求め、誰が誰に堕ちたのか。
三人の女の子の舌と指がどう絡み合い、互いの一番柔らかい場所を確かめ合ったのか。
そして、何度声を枯らして喘ぎ、天国に昇ったのか。
…その詳細は、もちろんここには書けないけどね。
Scene.184 最高に気怠い朝
翌朝。
ウチは人生で一番気持ちのいい目覚めを迎えていた。
身体の芯まで蕩けるように満たされてる。昨日の夜の激しさを物語るように、肌は内側から発光するみたいにツヤツヤだった。
ウチがゆっくりと体を起こすと、視界にとんでもなくイチャついてる二人の姿が飛び込んできた。
「…ふふ、リラさん、髪に寝癖がついてますよ」
「きゃっ…!エリナ様こそ、そのはだけた胸元はいけません…」
エリナとリラがシルクのシーツにくるまりながら、互いの髪を整え合ったり、肌をつつき合ったりして、きゃっきゃうふふとじゃれ合っている。
一晩ですっかり姉妹みたいに仲良くなったんだね。
(…まぁ、昨日の夜、アレだけ色々やっちゃえばね…)
ウチはそのあまりにも平和で可愛らしい光景に、思わず笑っちまった。
ウチが起きたことに気づいて二人が同時にウチの方を見る。
「「あ、莉央様(お姉ちゃん)!おはようございます!」」
「…おはよ」
ウチはわざと気だるそうに返事した。
「ねぇ、キミら。いつまで、イチャついてんの。さっさと、朝メシの準備してよね、専属ルームキーパー」
ウチがリラに顎で指示を出す。
すると、リラは昨日までのあのクソ真面目な騎士みたいな顔じゃなく、悪戯っぽく笑って言い返してきた。
「もう、莉央様ったら。昨夜はあんなに可愛く甘えん坊だったくせに」
「ふふっ、お姉ちゃん照れてます」
「う、うるさいな!寝言は寝て言いなよね、この、エロエルフにエロ聖女が!」
ウチは照れ隠しに枕を二人にぶん投げた。
そこから朝の光が燦々と差し込む豪華な寝室で、女三人、ガキみたいな枕投げが始まった。
エリナの楽しそうな笑い声。リラの吹っ切れたような明るい声。そして、ウチの腹の底からの笑い声。
(…まぁ、悪くない朝じゃん)
Scene.185 仕切り直しの荒野の旅路
改めて。
ウチらはソルダートの砂漠地帯を完全に抜けきっていた。
目の前に広がっているのは巨大な奇岩が天に向かって突き出しているゴツゴツした岩だらけの荒野。草木もほとんど生えていない殺風景な土地だ。
「…この先、どっちに進みますか、莉央様」
リラが広げた古い地図と目の前の景色を見比べながら尋ねてきた。
目の前の道は大きく三つに分かれている。
一本は北へ。霧深い巨大な沼沢地帯へと続いているらしい。地図には『嘆きの沼』と不吉な名前が書かれていた。
一本は東へ。天を突き刺すような険しい大山脈へと向かっている。その先は魔王軍の支配領域が近い。
最後の一本は南へ。この荒野を抜けた先にある別の人間の国へと続いている。
「…さて、と。仕切り直しだね」
ウチは腕を組んで三つの道を見比べた。
「聖樹様の話じゃ、この大陸にいたのは『強欲』と『色欲』の二匹だったよね」
「はい。そのうち『強欲』のマモンはわたしたちが倒しました」
「ってことは、この大陸に残ってる最後のゴミは『色欲』の一匹だけってことじゃん」
ウチはニヤリと笑った。
やることはハッキリしてる。
「どっちに進んでも、どーせ大した情報もないっしょ。だったら気分で決めちゃお!」




