第五話:再起の狼煙
ドン底から這い上がる泥臭い物語の続きだ!
第五話、行くよ!
Scene.22 二人のギルド生活
ウチらはクロスロードの街に戻った。 でも前みたいに派手な暮らしはもうできない。 チートスキルを失ったウチは、レベルも低い、ただの新人冒険者。エリナと二人で力を合わせなきゃゴブリン一匹倒すのも一苦労だ。 ウチらはギルドの一番簡単な依頼から地道にやり直すことにした。
ゴブリンの討伐。スライムの駆除。商人の護衛。 どれも死ぬほど面倒くさくて泥臭い仕事。 ウチが囮になってゴブリンの注意を引く。
「こっちだよーブサイク!」
その挑発は、かつてのような余裕のあるものじゃない。生き残るための必死の叫びだ。 エリナが後方から聖なる光の矢で援護し、ウチの傷を癒す。 傷だらけになりながらようやく依頼を達成して、僅かな報酬を二人で分け合う。 ウチは自分のステータスを確認して愕然とした。レベルのバーがほとんど動いていない。
Scene.23 呪いと焦燥
何かがおかしかった。 ウチらは毎日必死でクエストをこなした。チームワークも日に日に良くなっていった。 なのにウチのレベルだけが異常なほど上がらない。 数週間、馬車馬のように働いて、ようやくレベルは1から3になっただけ。
「マジありえなくない!? 普通の冒険者ならもうとっくにレベル10とか超えてんじゃん! なんでウチだけ上がりが悪いの!?」
宿でウチが荒れているとエリナがおそるおそる口を開いた。
「…多分、魔王様の呪いのせいです。お姉ちゃんの魂そのものに枷がかかっているみたいで…。だから成長がすごく邪魔されてて…他の人よりも何倍も経験を積まないとレベルが上がらないんだと思います…」
…マジかよ。 あのクソ魔王、スキルを封じるだけじゃ飽き足らずこんな嫌がらせまで。 本当のドン底ってのはこーいうことか。
Scene.24 新たなる目的地
そんな生活が数ヶ月続いた頃。 ウチのレベルは血反吐を吐くような努力の末、ようやく15になっていた。 エリナの聖なる力も格段に強くなっていた。 ウチらはこの辺りじゃそこそこ名の知れたコンビになっていたが、同時に限界も感じていた。
その夜、ウチらの小さな部屋でエリナが尋ねてきた。
「お姉ちゃん、これからどうしますか?」
「…だよねー」
ウチは壁に貼ったこの世界の大きな地図を見上げた。 魔王の呪いを解く方法。エリナの失われた記憶。 ウチらが知りたい答えはこんな田舎町にはない。 もっと大きな街へ。情報と金と、そして強い人たちが集まる場所へ。
ウチは地図の一点を指差した。 大陸の中央に位置する巨大な商業都市、『ゼニス』。
「次はここかな」
「ここなら何か分かるかも。魔王の呪いを解く手がかりとかもさ」
ウチらの新しい目的地が決まった。 クロスロードの街での穏やかな日々は終わりを告げる。 でもウチらの胸には不安よりも大きな希望があった。 二人ならどこへでも行ける。 そう信じていたから。