第四十一話:ショータイム
Scene.152 決勝の舞台
アリーナに爆発するような大歓声が渦巻いていた。
ウチの無茶苦茶な提案をマモンが受け入れたのだ。
漆黒の鎧武者コガが、その無表情を崩さないまま、静かにアリーナへと降り立ち、ウチの目の前に立った。
アナウンサーが興奮しきった声で絶叫する。
『緊急決定!緊急決定であります!サイラス選手の代わりは、なんと、我らがマモン様の最強の守護者、『不動』のコガ様だーっ!これより、莉央選手とコガ様によるスペシャルエキシビジョンマッチを、決勝戦として執り行います!』
観客席のボルテージは最高潮だ。
ウチは静かに目の前のコガと向かい合った。
こいつ、マジで隙がねぇ。
Scene.153 『強欲』の降臨
全ての観客の視線が貴賓席に集まる。
先程まで退屈そうに帰ろうとしていたあの巨大な影。
七つの大罪、『強欲』のマモンが、満足そうな笑みを浮かべて再び玉座に座り直した。
ヤツがマイク型の魔道具を手に取りその甲高い声がアリーナ中に響き渡った。
「我が愛すべきオアシスの民よ!」
割れんばかりの歓声。
「今宵、我が“鳥籠”は、最高の娯楽を諸君に提供する! 富!力!欲望!このオアシスでは、求める者が全てを手に入れる!さぁ、始めようではないか!最強の犬がどちらかを決める、最後の戦いを!」
マモンが高らかに手を振り下ろした。
ゴオオオオオオオオオオオオン!!!
試合開始を告げる巨大なゴングが鳴り響く。
Scene.154 開幕の合図
コガが静かに刀を抜いた。その切っ先が寸分の狂いもなくウチの心臓を捉えている。
…だが。
ウチはそんな武士野郎、丸無視だった。
ウチはヤツに背中を向けた。
そして貴賓席に座るマモンに向かってゆっくりと右手の剣の切っ先を突きつけた。
あまりにも異様な光景。熱狂していたアリーナが水を打ったように静まり返る。
コガもウチの理解不能な行動に動かない。ただ主人の命令を待っている。
ウチは静寂を切り裂くように高らかに宣言した。
この作戦の開始を告げる合図を。
「さて、みんな」
「ショータイム、……だゾ★」
莉央がとびきり可愛いウィンクをしたその瞬間、世界が動いた。
観客席の一角で目立たないローブを着ていたエリナが立ち上がり、その手に持った『星屑のプリズム』が太陽のように輝き始める。
同時に闘技場の外、オアシスの東西南北の四方から巨大な爆発音と黒煙が上がった。ザハラたちの陽動だ。
ウチはマモンを睨みつけたまま口の端を吊り上げた。
ショーの本当の始まりだ。




