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第三十七話:古兵の遺言

いよいよ準決勝!決勝への最後の関門だ!

相手はあのブランの爺さん。やりにくい相手だけど手加減はナシ!

最高の敬意を払って、最高の夢を見せて沈めてあげるね!

Scene.141 準決勝


「さぁついにこの時がやって参りました!準決勝第一試合!伝説の古強者ブラン選手と、銀髪の悪魔こと莉央選手の激突だァッ!」


アナウンサーの絶叫がアリーナに響き渡る。

ウチは静かにブランの爺さんと向かい合った。その片目は穏やかだったけど、その奥に鋼のような覚悟の光が宿っていた。


(やりづらい…。でもこのおじいちゃんに手加減とか逆に失礼っしょ)


ウチは二本の剣を抜いた。


(目的は譲れない。だから許してよね爺さん。全力でキミを叩き潰す!)


ゴングが鳴る。

ウチは最初からトップスピードで突っ込んだ。神速の連撃がブランを襲う。

だがブランはその全てを最小限の動きでいなしていく。まるで激流の中の一本の柳のように。強い。間違いなくウチがこの闘技場で戦った中で一番の強敵だ。


「どうしたのおじいちゃん!守ってばっかじゃジリ貧だよ!」


「…嬢ちゃん」


ウチの剣を受け流しながらブランが静かに口を開いた。


「嬢ちゃんはマモンを本気で殺すつもりなんだろ?」


「…だったらどうしたの」


「ならば聞いておけ。この国がどうやってヤツの手に落ちたのかをな」


(は?昔話?)


ウチはいぶかしみながらも攻撃の手を緩めない。ブランはその猛攻を受けながら淡々と語り始めた。


「わしは先代の王に仕える近衛騎士だった。先代は民を愛する立派な王だった。…だが50年前この国は未曾有の大干ばつと疫病に襲われた。国庫は尽き民は次々と死んでいった」


「…」


「その時現れたのがマモンだ。当時大陸一の大商人だったヤツはその有り余る富で国を救うと王に申し出た。食料を薬を水を全てヤツが用意した。…もちろんタダではなかったがな」


ブランの剣がウチの剣を強く弾いた。


「契約だ。マモンは王に一枚の魔法契約書を突きつけた。『この国を救う代償に、この国の全て…土地も財産も民草一人に至るまで、その“所有権”を私に譲渡する』とな」


“所有権”。


その言葉にウチの動きが一瞬止まった。


「王にはもう選択肢はなかった。契約書にサインした。その瞬間この国はマモンの“所有物”になった。あの『徴収』の魔術式はその契約によって発動したのだ」



Scene.142 『所有』できないモノ


「ヤツの力の根源は、その契約によって生まれた絶対的な『所有権』だ」


ブランは続ける。


「だが裏を返せばその力はヤツが『所有』できないモノには決して及ばない」


(…所有できないモノ…?)


なんだろ?友情?愛?そんなフワフワしたもんじゃない。もっと物理的で絶対的な何か…。

ウチの脳裏でバラバラだったパズルのピースが一気に組み上がっていく。

暴食の能力『捕食』。

強欲の能力『徴収』。

服従の首輪。

そしてウチ自身。


(…そっか)


(…てか、マジ!?そういうこと!?)


ウチはこの世界の住人じゃない。

あのギャル神に無理やり連れてこられたイレギュラー。この世界の理の外側にいるバグみたいな存在だ。

だからウチは、この国の“所有物”じゃない!先代の王がマモンと交わした契約の外側にいる!

エリナっちもだ!あの子は星の民。この大地の子供じゃない!

だから!

ウチとエリナっちの攻撃だけが、あの無限バッテリーの徴収システムの対象外で、マモンの本体に直接届くんだ!


「…どうやら伝わったようだな」


ウチの顔つきが変わったことに気づいてブランの爺さんは満足そうに笑った。


「わしの役目はここまでだ。後のことはキミに託したぜ、嬢ちゃん」


そう言うとブランは自ら剣を砂の上に落とした。


「降参だ。わしの負けだよ」



Scene.143 最高のフィナーレ


ウチは剣を収めると無防備にウチの前に立つブランの爺さんの前にゆっくりと歩み寄った。


「…ありがとね、爺さん。最高の“ヒント”だった」


「なに、気にすることはない。わしもこれでやっと肩の荷が下りる」


「…そっか。じゃあ約束通り最高の夢、見せてあげる」


(…せめてウチのおっぱいに埋もれて幸せに戦闘不能になってよね)


ウチは剣を置いたブランの爺さんを、その豊満な胸に優しくでも強く抱き寄せた。


―――その先は言うまでもないっしょ。


爺さんはマジで人生で一番幸せそうな安らかな顔でアリーナの砂の上に静かに崩れ落ちた。

その詳細はここでも言えないけどね。


レフェリーが困惑した顔でウチの腕を高々と掲げる。


「しょ、勝者、莉央ーっ!これにより決勝進出決定ーっ!」


観客席のどよめきと歓声を聞きながらウチは黄金に輝く中央の塔を見据えた。

待ってなよマモン。

アンタのそのくだらない“所有権”、ウチが根こそぎ奪ってあげる。

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