第二十話:世界の本当のルール
Scene.84 招かれざる(?)神様
聖樹エリュシオンの根元で、ウチとエリナは今後のことを話し合っていた。
敵は魔王だけじゃない。世界を内側から腐らせる、七つの大罪。
「どっちから先に、叩くべきかな…。てか、同時に相手するとかさすがに無理ゲーじゃない?」
そんな、マジでシリアスな作戦会議の真っ最中だった。
ウチらの目の前の空間がいきなりグニャリと歪む。そしてそこから、スパンコールのついたちょー派手な扇子だけがひょこっと出てきた。
「よっ。元気してる、莉央っち? エリナちゃんも!」
パチンと扇子が開かれると、その向こうから現れたのは見間違えるはずもないあの女。
白ギャル女神ルナ様だった。
「…ルナ様っ!」
エリナが驚きの声を上げる。
ウチは剣に手をかけたが殺気はなかった。
「…アンタがなんでここに?」
「いやー、なんかキミが聖樹を助けるために、大罪どもに喧嘩売るとか決意しちゃってるからさー。マジ、ウケる!って思って!」
ルナ様は悪びれもせず笑っている。
「正直、魔王を倒してくれれば御の字かなーって思ってたから、大罪の面倒くさい話はスルーしてたんだけど…。まさか、キミがそこまでやる気になってくれるとはマジ予想外!アタシ的には超ありがたい展開だけどね!」
Scene.85 この世界のクソみたいな真実
「…じゃあ、ちゃんと説明してくんない? その七つの大罪ってのが何なのか」
ウチの言葉にルナ様は指をパチンと鳴らした。
目の前の空中にこの世界の地図と二つの巨大な駒…チェスのキングみたいな黒い駒と、ドロドロした七色のヘドロみたいな駒が浮かび上がる。
「まず、黒いキングの駒がキミらが知ってる魔王ね。彼の目的は分かりやすい。『力による世界の完全支配』。秩序のためなら暴力も独裁もなんだってアリ。まぁ、悪役としてはテンプレ通りって感じ?」
「で、こっちの七色のヘドロが、『七つの大罪』。彼らの目的はもっとタチが悪い。支配じゃないの。『欲望による世界の完全な腐敗』。全てを自分たちの罪の色に染めてぐちゃぐちゃに堕落させて、生きる気力も希望も何もかもを奪い尽くす。世界の精神的な死を望んでるワケ」
ウチは息を飲んだ。
「そして、ここからが超重要なんだけど」
ルナ様はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「魔王は、この七つの大罪のことを、ちょーーーーーっ、嫌ってるの」
「…は?」
「考えてみなよ。せっかく自分が力でビシッと支配して自分の思い通りの世界を作ろうとしてるのに、横から勝手に世界を腐らせるヤツらがいたら、ウザくない?自分の“おもちゃ”を汚されるみたいなもんだからね。だから魔王の本当の最終目的は、世界征服した後、その力で七つの大罪を根絶やしにすることだったりする」
…なんだよそれ。
話がややこしすぎる…。
Scene.86 新しいゲームの始まり
「で、キミのそのスキルね」
ルナ様の指がウチのステータスウィンドウに触れる。
「前にも言ったけど、アレは対魔王用。…でも、今のキミならもしかして、その力を応用して大罪どもとも渡り合えるかもね?」
ルナ様はそう言うとウチの額にそっと指で触れた。
「ま、ここまで頑張ったご褒美ってことで、そのスキルの使い方のヒント、ちょい脳に入れといてあげる。後はキミ次第ね!」
【絶対支配】の文字を覆っていた『女神の制約』の文字が、少しだけ、薄くなった気がした。
「じゃーねー、バイバーイ!」
ルナ様は言いたいことだけ言うと、嵐のように現れ、そして嵐のように消えていった。
残されたのはあまりにも重すぎる真実と、ウチとエリナだけ。
「…お姉ちゃん」
「…うん」
ウチは自分のステータスウィンドウを見つめた。
魔王も大罪もどっちもぶっ潰す。
やることは変わらない。
ウチは笑った。心の底から不敵な笑みを浮かべた。
「しょーがないじゃん。神様がそーしろって言うならやってやんよ」
「新しいゲームの始まりだね!」




