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第百十話:自尊の光

Scene.427 自尊の光


黄金の光がウチの魂を満たす。

聞こえる。世界中の人々の声が。

ウチを信じ、ウチに未来を託す温かい想いの奔流が。


『お前は独りじゃない』


『あなたには価値がある』


その光の中で、ウチは初めて自分自身を抱きしめた。

傷だらけで不器用で口が悪くて独りよがりで。

でも必死でここまで歩いてきたウチ自身を。

心の一番奥でずっと泣いていた小さなウチを。


(…ああそっか)


(ウチはウチのままでよかったんだ)


ウチは静かに立ち上がった。

砕け散ったはずの心が再生し、以前よりももっと強くそして優しく輝いている。

虚ろだった瞳に光が宿る。

それはもう復讐の炎でも怒りの炎でもない。

ただ穏やかで全てを包み込むような慈愛に満ちた黄金の光。

八柱神最後の一柱… 【自尊】 の輝き。




Scene.428 傲慢の終焉


『…馬鹿な』


目の前の光の化身ルシエルが初めて狼狽の声を上げた。


『我が完璧な論理による精神支配が…。この私に泥を塗るか、下賤の想念の集まりが…!』


ルシエルは再びウチにあの絶望の幻影を見せようとする。

だけどもうウチには効かなかった。

ウチを罵倒する街の人々の幻影にウチは静かに微笑んだ。


(…キミらの想いはちゃんと受け取ったよ)


幻影が消える。

ウチを見捨てるエリナとリラの幻影にウチは強く頷いた。


(…信じて待っててくれてありがとね)


幻影が消える。

ウチを嘲笑う樹里の幻影にウチは優しく語りかけた。


(…もういいんだよ樹里。安らかに眠りな)


幻影が光の粒子となって消えていった。

ウチはゆっくりとルシエルへと歩み寄る。

ウチの体から溢れ出す黄金のオーラは、ヤツが放つ純白の排他のオーラを優しく中和していく。


『来るなッ!不完全な感情の塊が!この私に触れるな!』


ルシエルが必死の形相で叫ぶ。

ウチはその光の化身の目の前に立つと、そっとその光に手を触れた。


「キミは独りで完璧だった」


「…ウチは不完全でボロボロで、一人じゃ何もできなかった」


「…でもね」


ウチは微笑んだ。


「独りじゃなかった」


「キミの負けはそこだよ。…ルシエル」


ウチの手が触れた瞬間。

ルシエルの完璧な自己完結した世界に初めて「他者」という概念が流れ込んだ。

ウチの魂に宿る仲間たちの想い、世界中の人々の祈り。

その温かい光が彼の孤独な魂を満たしていく。

自分以外の価値を認めてしまったその瞬間、『傲慢』の理は内側から崩壊した。


『…理、解…でき、ぬ…』


ルシエルの光の体はゆっくりとひび割れ、そして静かに塵となって消えていった。

後に残ったのはただ穏やかな静寂だけ。

玉座の周りにいた厄災級の魔物たちも主を失い砂のように崩れ去っていく。

七つの大罪、そして魔王。

この世界を蝕んでいた全ての呪いが今、消え去った。



Scene.429 八つの光


ルシエルが消滅した。

その瞬間、彼が司っていた最後の概念…『傲慢』から反転した『自尊』の聖なる力が解放された。

それは他のどの光よりも強く眩しい黄金の輝き。

その光はまるで還るべき場所を知っていたかのように、ウチの胸元へと真っ直ぐに流れ込んできた。

ウチの中で一つになっていた七つの神々の力が最後のピースを得て完全に覚醒する。


【レベル:707 → 808】


ウチのステータスウィンドウが最後の輝きを放つ。

そこに表示されていた七つの神技スキルが一つに統合されていく。


【究極神技スキル】:

万物創生ジェネシス【EX】:世界の理たる八柱の権能を統べる唯一の力。創造、再生、そして審判。森羅万象の全てに干渉する。


(…やった、のかな)


ウチは自分の手のひらを見つめた。

そこに宿るあまりにも巨大で温かい力。

ウチはゆっくりと天を仰いだ。

禍々しい暗雲は消え失せ澄み切った青空が広がっている。

終わったんだ。

本当に全てが。

ウチはありったけの声で叫んだ。

この世界の全てに届くように。


「やったぞー!」



Scene.430 希望の凱歌


ウチのその一声が全ての始まりだった。

一瞬の静寂の後、天頂の霊峰は爆発するような歓喜の雄叫びに包まれた。


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」


ザハラが率いるソルダートの騎士団が天に剣を突き上げる。

ドワーフの戦士たちがその巨大な戦斧を打ち鳴らし、勝利のリズムを刻む。

エルフの魔法部隊が放った色とりどりの光の矢が空を彩り、まるで祝福の花火のようだった。

空を旋回していた竜騎士団のワイバーンたちが一斉に勝利の咆哮を上げた。


「お姉ちゃん!」


「莉央様!」


エリナとリラが泣きながらウチに飛びついてきた。

ウチはその二人を力いっぱい抱きしめる。

三人で抱き合って、泣いて、笑った。

兵士たちは種族の壁を越えて互いの肩を叩き合い、勝利を分かち合っている。

人間もエルフもドワーフも獣人もない。ただ共に戦い共に生き残った仲間たちがそこにいるだけだった。


その歓喜の輪の中心でウチは思った。


ああ、ウチが守りたかったのはこの光景だったんだ、と。


復讐でも自己満足でもない。

ただこいつらの、このしょーもなくて最高に愛おしい笑顔が見たかっただけなんだ。


戦いが終わった山頂からウチらは世界を見下ろした。

魔王領を覆っていた暗雲は完全に消え去り、その呪われた大地に数千年ぶりに温かい太陽の光が降り注いでいる。

世界中の大地から澱んでいた大罪の気配が消え、清浄なマナが満ち溢れていくのが分かった。


「…終わったね」


ウチは静かに呟いた。

長くてクソめんどくさかったウチの異世界での戦い。

その全てが今終わった。

ウチは隣で涙を拭うエリナとリラの頭をわしゃわしゃと撫でてやった。


「帰ろっか。…ウチらの家に」


ウチらの新しい物語が今ここから始まる。

もう戦いのない穏やかで、そして最高に楽しい毎日が。

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