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第百八話:世界が一つになる時

Scene.420 世界会議


約束の三ヶ月が経つ数日前。

砂漠の国ソルダートの首都オアシス。その中央評議会の議場には、この世界の全ての種族の指導者たちが集結していた。

歴史上初めての『世界会議』。

その議長席に座るのは聖女エリナと賢者リラ。莉央のたった二人の仲間だった。


ドワーフの王。エルフの将軍。ソルダートの評議会議長ブラン。国軍最高司令官ザハラ。ヴァニタスの市長オリオン。アクアリアの商人ギルド長。その他数多の国と組織の代表たち。

彼らは皆莉央に救われ、莉央の力を信じこの最後の呼びかけに応じた者たちだった。


リラが静かに立ち上がり会議の始まりを告げた。


「皆様お集まりいただき感謝します。…議題は一つ。我らが世界を救うための最後の戦い…『傲慢』の魔人ルシエル討伐についてです」


彼女は三ヶ月かけて集め分析した全ての情報を各国代表に共有した。

『傲慢』の圧倒的な力。そして、その本質。


「ルシエルの真の力は物理的な破壊ではありません。彼の本質は精神そのもの。その攻撃は人の心の、一番脆い部分を見つけ出し、魂ごと砕く力です」


議場がざわつく。

最強の英雄の力ですら届かない、概念的な攻撃。その絶望的な事実に。

そのざわめきを、ザハラが一喝で静めた。


「だから我々が行くのだろうが!」


ザハラは立ち上がり全員を見渡した。


「我々の役目は二つ。一つ、莉央がルシエルとの一対一に集中できるよう、ヤツが作り出す雑魚を一掃し道を作ること」


「そして二つ目。…そしてこちらが本命だ」


彼女は莉央のように不敵に笑った。


「我々の存在そのもので莉央に『お前は独りじゃない』と伝え続けることだ。奴の精神攻撃が莉央を孤独にしようとするなら、我々の声援でその孤独を打ち破る!」


その言葉にエリナが続く。

彼女は一歩前に出ると、その場の全員に力強く訴えかけた。


「そうです!お姉ちゃんは決して独りではありません!」


「私は聖樹様と星の民の皆さんの力を借りて、世界中のお姉ちゃんへの感謝と祈りの全てを、彼女の魂へと届けます!皆さんの想いが光となり、お姉ちゃんの心を守る最強の鎧となるはずです!」



Scene.421 希望の出陣


二人の魂の演説。

それに応えない者はこの場にはいなかった。

ブランが立ち上がり厳かに宣言した。


「ソルダートは解放者殿と共にある。全軍の出陣を許可する!」


「我らドワーフの戦斧も彼女と共に!」


「エルフの矢は闇を射抜くために!」


一人また一人と各国の代表が立ち上がり、最後の戦いへの参加を表明していく。

種族も国も利害も超えて。

世界は初めて莉央という一人の女の名の下に一つになった。


―――こうして世界は一つになった。


そして約束の日。

エリナとリラは、この世界中の希望を背負って莉央の元へと向かったのだ。



Scene.422 世界大戦、開幕


時間は現在へと戻る。

天頂の霊峰の頂。

光を失い廃人と化した莉央。その姿に絶望し立ち尽くすエリナとリラ。

そしてその全てを静かに見下ろす『傲慢』の魔人ルシエル。

その完璧な絶望の構図を破ったのはリラの震える声だった。

彼女は涙を堪えながらもその背筋を伸ばし、莉央の魂の亡骸に報告するように告げた。


「…莉央様。…約束の刻限です」


「…申し訳ありません。思ったより時間がかかってしまいましたわ」


その言葉が合図だった。

彼女たちの背後の空間が一つまた一つと裂けていく。

現れたのは何百もの巨大な転移ゲート。

そしてその向こう側から、この星の全ての希望が溢れ出してきた。


まず現れたのは砂漠の国ソルダートの屈強な騎士団。先頭に立つのはザハラとたくましく成長したカイト。

次に山を揺るがす地響きと共に進軍してくるドワーフの重装戦斧団と蒸気を噴き上げる巨大なゴーレムたち…ドワーフが誇る機械戦団。

空からはエルフの国から駆けつけた魔法弓兵部隊が光の矢を構え、東の諸王国からはワイバーンにまたがった竜騎士隊が雄叫びを上げる。


その数、数万。


莉央が救い、絆を結んだこの世界の全ての種族が、彼女を救うために今ここに集結したのだ。


ザハラが高々と剣を掲げ叫ぶ。


「全軍聞け!我らが英雄は今、敵の術中にある!」


「我々の目的はただ一つ!莉央が目覚めるまでの時間を稼ぎ、彼女のための道筋を作ることだ!」


「目標、玉座の周りにいる厄災級の魔物ども!傲慢には手を出すな!ヤツは莉央の獲物だ!」


「「「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」


数万の軍勢の雄叫びが天を震わせる。

そして一斉に攻撃が始まった。


ドワーフのゴーレムが放つ魔力砲。エルフの数千の魔法の矢。竜騎士たちが吐き出す炎のブレス。

その全てがルシエルには効かないことを知りながらも、その周りを固める天竜や金剛の巨人たちへと叩き込まれた。

迎え撃つ厄災級の魔物たち。

世界のてっぺんで世界の運命を懸けた最終戦争の火蓋が切って落かれた。


だが、そのあまりにも壮絶な戦いの中心で。

ルシエルは変わらず静かに浮遊し、莉央は変わらず虚ろな瞳で蹲っている。

まだ本当の戦いは始まってすらいなかった。

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