五話 ミスター・Xの考え事
こんにちは、あんなです!
今回は謎めいた男の思考をちょっと覗いてみましょう。一人称視点になります。どうぞ、お楽しみください!
(私の名前を言ってしまったのは迂闊だったな……)
私は、心の中で舌打ちした。子供達(ルナ、ベリー、ロジャー、ジェームズ)は疑ったが、私の名前は本当にジェームズ・ボンド。先ほど子供達の記憶を消してきたところだが、少し気が緩んでいるようだ。用心せねば。
子供達のリアクションから性格を判断したところ、なんとも個性的な者ばかりが集まったな。
いつものように、ポケットを「確認」すると、メモが入っていた。
カサッと広げて見てみると、「フクロウ」と書いてある。今日の呪文はこれか。
「フクロウ……」
呟くと、記憶が頭に潜り込むように入ってきた。
「……おお、そうだ。私の名前はそうだった……ジェームズ・ボンドなんかじゃない」
これは、私が考えついた、「自分を騙して、嘘を完璧にする」作戦だ。
まずは自分の記憶を変えて、嘘を真実だと思い込ませる。そうすると、演技は完璧だ。本当にそうだと思っているから。メモをポケットに入れておき、そのメモに書かれている言葉を口にすると、全てを思い出す。こうして、私は何度も警察の手をすり抜けてきた。
もともと嘘は得意な方なので一般人くらいなら騙せるが、私も一応人間だ。仮面をつけて瞳孔の開きなどを隠しているとはいえ、無意識の挙動全てを隠し通せるわけではない。だから、念のため、こんな方法を使っている。
おかげで、自分以外は誰も信用できないどころか、自分すらも信じることができない。
(子供を相手にこれは必要なかったかもしれないが、いつ誰に出くわすかもわからないし、嘘を見抜くための術を身につけている子供も、いないとは言い切れない)
(最高高度魔術は難しかったが、おかげで四人も魔術が使える者が手に入った。だが、一つ問題がある……ルナ・エリアからは、全く個人の魔力を感じられないのだ! 他の奴らからは個性的な魔力をたくさん感じたのに……)
疲れやストレスが溜まりすぎると、魔力がほとんど感じられない、枯渇状態になることもある。その可能性は極めて低いが、私は一応、ルナの疲れやストレスを涙と一緒に取り除ける魔術をこっそりかけておいた。
(もちろん、周りに漂うわずかな魔力を利用して魔術を使える者も極稀にいる。だが、だとしたら、あの膨大な魔力はなんだ?)
レイヴンの報告によると、ルナは制御しきれない程の魔力で巨人を倒し、自分自身も失神してしまったそうだ。
(そこまでの魔力はいくらなんでも、その辺にふよふよ漂っているわけがない。後で、現場に確認しに行かないと……)
そこで、私の頭は恐ろしいことを考えてしまった。
(……もしかしたら、その可能性は極めて低いが、もしかしたら、ルナ・エリアは“闇の支配者”なのかもしれない。だとしたら、個人の魔力が感じられないのも説明がつく。一体化していて感じ取れないだけなのかもしれない)
“闇の支配者”、別名“月の支配者”、“夜の支配者”、“深淵の支配者”とは、異世界に月が見えている場所では王、もしくは女王として、支配することができる者だ。
(もし、そうだとしたら大問題だ。すぐに魔術署に報告せねば――いや、私は何を考えている? “闇の支配者”が手に入ったので魔術署に受け渡す? バカらしいな。手に入れたんだ。私のものだ。世界破壊、そして再創造に利用させてもらうぞ……)
いかがでしたか?
自分以外は誰も信じられないどころか、自分自身すら信じることができないっていうのを書きたかったんですけど、なんか面倒臭いことやってますね(HAHAHA




