4話 あの子が好きだ
こんにちは、あんなです!
私も女の子だけど、女の子の恋心とかマジでわからん!!!
ルナは夢を見ていた。
――花畑を二人で走っている。1人は自分、もう1人は、黒い髪の男の子。
彼がゆっくりとルナに顔を近づける。熱い吐息が顔にかかり、ルナは頬を赤く染めた。唇が重なろうとして――目が覚めた。
1番に目に飛び込んできたのは、さっきまで夢に見ていた、彼だった(ルナは今、ベッドに寝かせられている)。顔が熱くなるのを感じ、寝返りを打って、赤い顔を見られまいとした。どうしてあんな夢を見たのだろう……。
ガタッと立ち上がる音がする。足音がして――顔をのぞき込んできた。
「……目が覚めたのか。大丈夫か?」
心配そうに自分をじっと見つめる赤い瞳から、目が離せなくなりながら、ルナは小さく頷いた。
「顔が赤い。熱があるのかも」
そう言いながら、彼はそっとルナの額に触れる。ひんやりとした手は、火照った肌にとても気持ちいい。その絶妙な温度は、魔力を連想させた。
ハッとして、ルナはロジャーに尋ねた。
「みんなは? 巨人は?」
ロジャーは、ルナからパッと手を離した。
「みんなは無事だ。レイヴンは少し足に怪我したけど。巨人のことは、よくわからない。一応、元に戻って何度も謝ってた。なんで凶暴化したのかとか、アイツ、全然説明してくれないんだ。『今話しても無駄だから』って……」
ロジャーは腕を組み、顔をしかめる。
「あはっ、私が初めてミスター・Xに会った時も、最後の人が来るまで何も話してくれなかったわ」
ロジャーがニヤッと笑った。背筋がゾクゾクして、次に言おうと思っていた冗談も、わずかな吐息に変えられてしまった。
「……そういえば、すごかったな、アレ。俺だったら絶対思いつかなかった」
ルナの顔がボンッと熱くなった。おそらく、ロジャーが言っているのは、ルナが考えて、みんなが実行してくれた、あの原始的なベリー救出作戦のことだろう。
「いやっ、そんなっ、たいしたことないし、みんなのおかげだよっ!」
ルナは手をブンブン振りながら、叫ぶように言った。手首がもげそうだ。
「いや、俺、箱持ってきただけだし」
「そういえばそうだったね。……だけど、あの箱がなければ、巨人は躓かなかったし、巨人の足が心臓よりも上の位置にくることもなかったよ。小さかったけど、すごく重要なものだったんだよ。ありがとう」
あの時のことを思い返しながらルナが言うと、ロジャーはスッと立ち上がった。
「ありがと。じゃあ俺、みんなに言ってくる。ルナが起きたぞ、って」
ロジャーが自分の名前を口にした。「ルナ」って言った!
ルナの心臓がドコンと跳ね上がり、胃袋はパーパー言いながらのたうっている気がした。見た目こそ出さないが、体の中では、大祭り開催中だ。
5分ほど経っただろうか。ドドドッと足音が近づいてきて、バーンとドアが開けられた。
「ルナーっ!!!」
数秒後、ルナは自分がジェームズとベリーに抱きつかれていることを理解した。レイヴンもすぐ近くに立っている。
「良かった……良かった〜! ごめんねぇ、私のせいで……!」
ベリーが泣きじゃくる。
「ホント、一生目が覚めないのかと思ったよ……!」
ジェームズも涙声だ。
ここまで自分をここまで心配してくれるなんて……ルナは目頭が熱くなるのを感じた。あれ? 涙が出てきて……止まらない。
「……ッ。……みんな、……ありがとう……!ゔっ……うわあああん!」
ルナは、疲れや緊張が、涙と一緒に全部流されていくのを感じた。
いかがでしたか?
次話は「5話 ミスター・Xの考え事」です。お楽しみに! ブクマ、評価、コメント、リアクションもお待ちしています。




