表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルナ・エリア 〜スマホの広告に騙されてムカついたので夜を統べる力で異世界丸ごとのみこんじゃう!?〜  作者: 小倉 あんな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/34

二十三話 真の支配者

「こういう時、最近の若者は何て言うのかしら。……ピンポーン?」

 ルミナは、小首を傾げてみせた。口元には、勝気な笑みが浮かんでいる。


「……ルミナ、あんたが王を殺した犯人、なの? ……そんな欺瞞ぎまんと血の上に、秩序が築けると思っているの!?」

「欺瞞? フフ、“月の支配者”は相変わらずロマンチストね」


 ルミナは皮肉な笑みを深めた。


「私はただ、より良い未来を選んだに過ぎないわ。真実なんて、脆くて愚かな巨人をさらに混乱させるだけ。私は今、彼らに真の秩序と、従うべき神を与えるのよ」


「そのために、嘘を重ねるっていうの?」


「あなたには理解できないわ」


 ルナは杖を握る手に力を込めた。それは怒りではない。胸の奥が凍てつくような、絶望に近い感情だった。彼女が固執する過去、そして真実が、目の前の人間によって踏みにじられている。


 ルナが再び口を開こうとしたその時、バァン! と大きな音がして、甲板のハッチが開き、武装した警備隊の隊長が数名を連れて飛び込んできた。


「何者だ! ただちに武装を解除し、身元を明かせ!」


 ルミナは警備隊の方へ、わずかに視線を向けた。その表情には、煩わしい虫を見たような嫌悪感が滲んでいる。


「……邪魔が入ったわね」


 次の瞬間、ルミナを中心に、優しく、しかし圧倒的な光が周囲に溢れ出した。それは太陽の祝福のような、神聖な輝き。


 警備隊は光に包まれた瞬間、苦しむことなく、まるで眠りに落ちるかのようにその場に倒れ伏した。


 ルミナは再びルナに向き直る。その目の冷たさは、宇宙の闇よりも深い。


「ルナ。あなたは私の進める秩序の、唯一の障害物よ。無駄な抵抗はやめて、早く過去の一部になりなさい。――次に会う時は、容赦しないわ」


 そう言い残し、ルミナの姿は光の残像を残して、ウィンド・ウィングから消え失せた。



 ウィンド・ウィングから姿を消したルミナは、すでに帝都の中心部――ドラグラム帝国の中枢、かつて王が統治した大宮殿の上空にいた。


 都市は混乱の坩堝にあった。

 

 巨大な体躯を持つ巨人達が、失われた記憶と目覚めたばかりのパニックの中で、お互いを押し合い、叫び、建物を破壊していた。秩序は失われ、ただの巨大な暴徒と化している。彼らは統治者を失い、進むべき方向を見失っていた。


 その混沌のただ中に、ルミナは静かに舞い降りた。


 彼女の体から放たれた光は、先ほどの警備隊を無力化させた神聖な光とは比べ物にならない。宮殿の上空に第二の太陽が出現したかのように、圧倒的な金色の輝きが帝都全域を包み込んだ。


 その光は熱を持たず、ただ優しかった。


 狂乱していた巨人たちは、その強烈な輝きに目を閉じたまま、動きを止めた。彼らの身体から、長引く混乱と恐怖が引いていく。それは、神の恩寵としか言いようのない、絶対的な安寧だった。


 ルミナは空中に優雅に浮きながら、すべての巨人に向けて、静かに、しかし威厳のある声で語りかけた。


「我が愛しき子らよ。私は、あなた方を導くために天より降りてきた。絶望することはありません」


 その声は、巨大な都市の隅々まで、まるで脳内に直接響くかのように届いた。


「真の支配者は、すでに失われました。しかし、嘆く必要はない。あなた方を混乱に陥れた闇は取り除かれた。私が秩序と正義、そしてあなた方が求める真実を、この手に携えてきたのです」


 光が落ち着き、巨人たちは目を開けた。彼らの視線の先には、黄金に輝く光の女王が立っている。パニックで消耗し、絶対的な権威を求めていた彼らにとって、それは正に救済だった。


 一人の巨人が、跪いた。


 その行動は瞬く間に伝播し、数千、数万の巨人たちが、一斉に宮殿の上空に立つルミナに向かって頭を垂れた。


 王を殺し、国を混乱に陥れた張本人であるルミナは、彼らの崇拝の中心に立ち、満足そうに微笑んだ。


「ようこそ、我が新しい王国へ」




 ルミナが消え去り、ウィンド・ウィングには重苦しい静寂だけが残された。


 ルナが杖をコツコツと叩く音だけが響いている。


 ルナは、その規則的なリズムで、なんとか正気を保っていた。

 思考の整理をしようとするが、どうにもうまくいかない。


「……クソッ」


 吐き捨てるように呟いた。



『――ッヅーヅヅ……ビビッ――』


 突然、ウィンド・ウィングの制御盤から、電子音とは違う、ノイズ混じりの機械的な音声が響いた。


『――この録音が再生されているということは、最悪のシナリオに到達したようですね』


 ルナは弾かれたように顔を上げた。聞き間違えるはずがない。その低く、人を小馬鹿にしたような冷静な声。


「ジェスター……!?」


『あなたのことだ、女王様。どうせまた無茶をして、あの“太陽”に噛みつこうとしたんじゃないですか? ……私は言ったはずですよ。今のあなたでは、“太陽の支配者”には勝てない、と』


 ホログラムも何もない。ただ声だけが、虚空から響いてくる。


『だが、諦める気もないのでしょう? ……やれやれ、本当に女王様は世話が焼ける』


 音声に、わずかな溜息が混ざる。


『次の目的地をお送りします。私の計算が正しければ、そこに君達が探している法則の欠片があるはずです。……急いだ方がいいですよ。世界が完全に“塗り替えられる”前にね』


 プツン、と唐突に音声が途切れると同時に、オラクルが反応した。


「新規ナビゲーションデータを受信。座標入力を確認した。……目的地、北の果て、忘却の氷河」


「……は?」


「座標は承知した。しかし、場所は北の果て、忘却の氷河。人類の立ち入れぬ領域だ。女王きみの決意を問う」


 ルナは乱れた呼吸を整え、顔を上げた。

 瞳に宿る光は、絶望から、鋭い反骨の意思へと変わっていた。


「……行くに決まってるでしょ。あいつの手のひらで踊らされるのは癪だけど、今はわらにだってすがりたい気分よ」


「どうやって行くの?」

 ベリーの問いに、ルナは皮肉な笑みを浮かべ、肩をすくめた。


「背筋がゾワゾワするような、気持ち悪い気配を感じるの。多分、変態の愛の結晶が迎えに来てくれてるんだわ」

いかがでしたか?

次話は「二十三話 氷河」です。お楽しみに!

ブクマ、評価、コメント、リアクションもお気軽にどうぞ! リアクションだけでもいただけたら、作者は恐らく、地球上で初めて空を飛ぶ人間になれると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まだ勝てないのかー。 。Σ(-∀-;) パワーが足りない。 残りのイベントこなして、パワーアップですね。 ゜+(人・∀・*)+。♪ てか、普通に神ですね。ルミナ。 強敵だあ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ