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第0話 プロローグ
人は生まれながらにして平等ではない。
才能、容姿、環境、それらは本人の意思ではどうにもできない。
だというのに、時としてそれらの要因は残酷なまでに本人の境遇を決めつける。
「言いにくいことですが……ご子息の魔力量は一般人とほぼ変わりません」
父親に連れてこられた魔術院の一室。
そこでシオンは教員の言葉をぼんやりと聞いていた。
まだ5歳の彼にその言葉の真意は分からない。
「そんな……」
それでも、その時に見た父の表情を彼は決して忘れることはなかった。
細められた視線。そこに含まれた感情。
後になって知ることになる。
それは実の父から向けられた『失望』の感情だった。
「規定に従い、シオン・ロス・シルフィードを三級魔術師と認定します」
その瞬間、シオンの魔術師としての人生が始まった。
三級術師の烙印と共に歩む、苦難に満ちたその道が。