決戦(前編)
僕がローズさんにしばかれながら、水の力の修行をしている間、海は氷の力を取得するための修行を始めていた。
海は1日かからないくらいで氷の力を取得したそうだ。流石厨二病である。僕らはローズさんのおかげで、かなり強くなったと思う。
しかしどれだけ修行を積んでも、冒険には出させてもらえなかった。それにはワケがあった。修行を終わらせるには2つの条件を達成しなければならない、と言うものがあるからだ。
・ローズと互角に戦うこと
・力を安定して使うこと
この2つの条件を満たすことで、冒険に出ることが許されるのだ。
「まだまだぁ!このままだったら弱いよ!弱すぎるよ!もっと気合い入れて!」
ローズは気合十分だったが、僕たちは毎日のスパルタ修行で疲労困憊、体中痛くて僕はまともに剣すら振れないし、海ももう疲れて力を使えないほど満身創痍だ。とにかくがむしゃらについていくことしかできなかった。
〜その日の夜〜
「あんたたちねえ。どうすんのそんなヘトヘトになって。こんな虫けらみたいな体力しかなかったら、魔王に小指で負けちまうよ」
「僕たちもう動かないんですよ」
「じゃあ修行が終わった暁に、自分にご褒美をやるってのはどうだい」
『ご褒美?』
「そうだ。ご褒美だ。例えばこの山を降りて、すぐそこに街がある。そこにある温泉がとてつもなくいい湯なんだ。修行終わりの体に染み渡ると思うぞ」
「そう言うことは早く教えてくださいよ!」
僕は少し腹が立った。こんだけスパルタな修行なら行ってもいいじゃないかと心の底から思った。
「いやここ、かなり山奥にあるからモンスターとか出るし、モンスターを倒そうとしても、あなたたちじゃすぐやられちゃうから、あまり外へは出したくなかったんだよね」
ローズの優しさが垣間見えた。
「最近修行ばっかだったし疲れてると思うから、明日休みにする。万全の状態にしてきて明後日の修行全力で挑むように」
「はい!」
〜次の日〜
2人とも休みだったので特になにもせず。したことはたっぷり睡眠した後にちょっと走ったことくらいだ。
〜修行再開日〜
そろそろ勝ちたい。しっかり剣術は磨いてきた。あとは剣に力を宿して戦うだけだ。
「今日は2人でかかってきなさい」
「2人ですか?」
「冒険ってのは仲間との連携も大事になってくる。だから今のうちに連携取れるようにした方がいいでしょ?」
「なるほど」
流石にそろそろ冒険に出たい。
ここで僕たちの力を見せつけて、条件をクリアしてやる。
僕はローズの力には不利だ。ローズは光はかなり特殊で少し電気も帯びている、僕は水は精製水じゃないから、電気を帯びている光線をまともに直で食らったら、感電して大ダメージだ。
それは海も一緒で、海の持つ闇の力は光の力との相性が悪い。
僕らは防御を固めながら、電気を受け流し、前へ前へと攻める。さらに僕は電気の帯びた水を回収し、少し活用することで、電気を帯びた水の剣ができる。そうすればなんか知らないけど攻撃力が上がる(らしい)。
さらに僕の水の力と、海の氷の力は相性がいい。水と氷をうまく駆使して、ローズを追い詰めていきたいところである
後はローズにどうやって攻撃を当てるか。ローズの立ち回りは、短・中・長距離に優れているオールラウンダーだ。ねちっこく遠くから攻撃してくることもある。だからと言って中途半端に前へ出ると同然やられてしまう。でも僕はそれを前に出てなんとかする。何とかしてでも勝つんだ。
「やるわね。力がどんどん強くなってるじゃない」
ローズは蓮の強い信念が見えた。
「さらに燃えるわね」
「どこまでもやってやりますよ」
海は2人から目が離せなかった。2人から溢れ出すオーラに一歩も動けなくなっていた。周りの空気が重たい。強い力をまとっている気と気のぶつかり合い。ただならぬオーラを放っていた。人間を超越した者にしかまとうことのできないオーラだ。
「行くぞ!光の力!高速移動!」
僕の思い通り最初はスピード勝負だ。このまま距離を詰めてゴリ押してくるだろう。
「水の力。水垣・改」
この技は水の包囲網で相手を動けなくすることができる。
「氷の力。氷壁」
さらに水の包囲網を凍らすことによって、防御力をアップできる。
僕と海はとにかく守りを固めていく、はずなのだが、ローズは包囲網をゴリ押しで突破。
「まだまだね。光の力!閃光!」
あたりは一瞬、光に包まれた。
「クソッ!目が...」
蓮と海は突然の光に怯んでしまう。
その間にガンガン距離を詰めてくるローズ。
光のように飛んでくるローズの拳を、間一髪剣で受け止めた蓮であったが、力で負けてしまいそのまま吹き飛ばされてしまった。倒れ込んだ時、すでにローズは蓮をめがけて飛んでいた。
蓮が標的になっている間に、ローズの背後を取った海であったが、隙だらけのローズの背中に攻撃するも、素早さが上がったローズに技を当てることはできなかった。
飛んできたローズのパンチを、これもギリギリ剣で受け止めるが、苦しい展開になってしまった。
ローズは少し蓮から距離をとった。
蓮は立ち上がると直ぐに剣を振って技を繰り出した。
「み、水の力!波濤」
どこからともなく現れた水は、剣を振ると同時に激しい波となってローズを襲う。
「氷の力、氷河」
さらに海の攻撃で挟み撃ちにしていく。
「まだだ!波濤!もっとだ!波濤!」
荒波と氷河がフィールド上を埋め尽くす。もはやフィールドは北極の海と化していた。
しかし波濤を連発したことによって、さらに激しさを増す荒波で、ローズの姿が見えなくなった。
「ヤベェ!連発したせいで見失っちまった!」
「何してんだよ。蓮!落ち着け!」
我ながらアホだ。
戦闘において、何も考えずに技を打つのはダメだとローズから教わったのに、なぜこんなことを...。
フィールドに集められた水と氷は地面に吸収されていった。しかしローズの姿が見つからない。
「力任せに技を撃ってはいけないよ」
後ろからローズの声がした。振り返るといつのまにか僕はローズに背後を取られていた。
「おしまいだ。|光の力!光一閃拳!」
背後から電気の音が聞こえてくる。
ここで終わるものか。まだ戦える!まだいける!
「まだ終わっちゃいない!|水の力。融解」
僕が磨き上げたオリジナルの奥義、融解。この技は固体が溶けて液体になる融解のように、自分の体が溶ける技。この技を使えば背後から襲われても、回避できる確率が上がるのだ。
「な、何よそれ」
初めて見る技に困惑するローズは、溶けた僕を凝視している。僕は地面に潜って距離をとった。
「今度は僕のターンだ。水の力。沼ハマ!」
沼ハマは僕を中心に、半径50m以内にいる敵の足場の土を沼地に変えて、素早さを下げる技。ローズのような俊足相手にピッタリの技である。
「この私が沼にハマるなんて...」
「氷の力!氷上ノ地」
さらに海のアシストにより、沼が凍った。
「動けないでしょう?これで終わりだ!水斬り!」
水斬りは僕の得意な水切りに似た技で、剣を地面で跳ねさせて敵に乱撃を喰らわせられる。投げた剣は手元に帰ってくる便利な機能付き。
「闇の力!闇丸」
水の力と闇の力でまた挟み撃ちにした。
「光の力!電気柵」
防御してきた。ガンガン詰めてくるタイプのローズだが流石に焦りが見えてきた。
「ついてこられるようになったじゃない。私もギアあげなきゃね」
ローズを纏う空気が変わった。




