英雄
ローズさんについていけばついていくほど、街とは逆の山奥にぐんぐん進んでいく。
「そういえば海、あの力どこで手に入れたの?」
僕は海の右手に秘められた力について少し気になった。
「俺もよく分からん。毎日右手疼いてたから多分それ」
「なるほど分からん」
「ねぇ」
「どうしたんですかローズさん」
「海ちゃんはもう右手が疼くの?」
「はい。疼くんですけどそれがどうしたんですか?」
「もしかしたらあなたは伝説になるかもしれないわ。この段階で右手が疼き始めたなら、もっと強くなれるわ」
「俺が強くなれる...そしたらもっとすごいのが撃てるってこと?」
「その通り。あなたは一度この世界を救った英雄と同じかもしれないわね。」
「英雄?」
海と僕は顔を見合わせた。
「英雄については拠点に着いてから話すわ」
ローズの本拠地に着いたみたいだ。ローズの拠点はとてつもなく広い庭と、二階建ての僕たちの世界でもよく見る家があった。ローズは僕たちを椅子に座らせ、紅茶を出してくれた。ローズティーじゃないんだ。
「じゃあ英雄について話すわね。『約200年前、魔王とその魔王が率いる軍団、騎士秩序がこの世界に現れ、世界は混沌の渦へと飲み込まれていった。魔王は世界を征服し、人々は苦しい生活を強いられていた。そこにのちに世界を救うブラウン・レイニーと言う、厨二病を患った子供が産まれた。この世界で厨二病は不治の病で、この子はすぐに死ぬだろうとされていた。」
「ちょっと待ってください!」
「なによ、蓮」
「この世界の厨二病ってマジ病なんですか?」
「当たり前じゃない。原因は未だ不明だけど、脳の病気よ」
僕らの世界の厨二病と、この世界の厨二病では、わけが違うみたいだ。
「続けるわね。しかしブラウンは奇跡的に生きて、成長していった。13歳の時にとてつもない力を手に入れた。その後ブラウンは14歳で冒険者となり、魔王を封じこめることに成功した。それからは世界に平和が訪れ、民は厨二病が特別な存在だとして彼を神の力を持つ英雄として崇めた。』
と言う、言い伝えがある」
「てことは海って」
「そう彼女は厨二病を患っている14歳。このステータスを見れば彼女は英雄に慣れる逸材なのよ」
「そしたら俺はとてつもない力を手に入れられるのか?」
「その可能性があるわ。後関係ない話するけど、海ちゃん可愛いんだから、自分のこと俺って言わないで。私っていいなさい」
「わかりました」
海の一人称が今ここで変更された。
「すいませんローズさん。質問いいですか?」
「なんだい?」
「とてつもない力ってなんですか?」
「とてつもない力。それは神力と言って5種類の属性がある。属性は炎、水、光、闇、氷、って感じね」
「属性は選べるんですか?」
「属性は自分の体に合った力が、ある時勝手に身につく」
「自分にあった力はどうやってわかるんですか?」
「私が蓮と海の手に触れればわかる」
ローズは能力者なのか?
「じゃあ早速見るわね」
ローズは僕の手に触れた。
「うーんと...。蓮は厨二病じゃないからね。力は弱いけど、水の力が使えるわ。これは特訓が必要ね」
僕は水なんだ。特訓したくないな。
「次は海ちゃん。海ちゃんは...。えっ...?」
「えって、もしかして私、厨二病なのに力持ってないとかですか?」
「いやそうじゃない。海は自分に合う力が2つある」
「2つってやばいんですか?」
「こんなこと滅多にないわ。かなりレアケースよ。あなた本当に英雄になれるかもしれないわ。英雄ブラウンも最初は2つの力を使って冒険してたの。そこから全種類の力覚えて、魔王封じ込めたけど」
英雄がどれだけ化け物じみてるかがわかってきた。
「私が...英雄と同じ...。」
海は嬉しかったのかすごくニヤニヤしている。
僕らは力を使えるようになるため、修行をすることになった。