真贋
どうやら僕たちはもう取り返しのつかないことになっている。もう転移してしまったのだ。
「おいポンコツ神?僕たちはどうすればいいんだ?」
「えっとまず魔王がこの世界を混沌の渦に巻き込んでて、それを転移してきたお前らが倒すと言うことになっておる。」
「いや、無理だろ!?お前もそう思うだろ海?」
蓮は不安で胸がいっぱいになっていたが、海は
「ふっふっふ。これが異世界というやつか。俺がこの世界救ってやろうじゃねぇか!」
と余裕そうだった。蓮は少し腹が立った。
「おいよく考えろよ!一般ピーポー(蓮)と厨二病(海)の中学生タッグだぞ!絶対無理に決まってるだろ!」
「まあまあ、そう怒るでない」
神様が仲裁に入ってきた。
「神のせいで怒ってんだよ」
「世界救ってちょっとしたら、元の世界に勝手に戻る仕様になってるから。あと、ちゃんと案内人というか、特訓コーチというか、まあそう言う感じの人がサポートしにきてくれるから。」
神は今にも喧嘩しそうに僕らに呆れたのか、強制的に話を進めてきた。
「名前はローズ・ライボルトと言うやつじゃ。金髪の色白で、ぬるぽって言うとガッって返してくれるのが特徴じゃ」
ローズとやらはネットに強いやつなのか?
「じゃあ、ご武運を祈る」
そう言って神様は消えていった。
ポンコツ野朗め。元の世界に帰る時覚えとけよ。
しかし困った。何も持ってない。神からの物資が一つもないのは、頭おかしいと思う。ゲームとかでも最初はなんかしらもらえるだろう。もしローズとやらが来なければ、僕らはそのままモンスターにやられるか、餓え死ぬかのどちらかだ。すると後ろから声が聞こえた。
「そんな不安そうな顔してどうしたのですか?」
振り返るとそこには金髪で色白、スーツを着こなした華奢な女性がいた。
「もしかしてあなたがローズ・ライボルトですか?」
「その通り、神の使いローズ・ライボルトと申します」
彼女は少し不適な笑みを浮かべた。
僕は少し嫌な予感がした。ローズって神の使いなのか?よくわからんが、本物であることを証明しておきたい。
「ぬるぽ!」
「は?」
こいつぬるぽを知らない!?話と違うじゃないか。いやでも「は」と「が」は似てるから、きっと聞き間違いに違いない。
「ぬるぽ!」
「ぬるぽって何?」
聞き間違いでもなんでもない。こいつ本当にぬるぽを知らない。僕の嫌な予感は的中したのだ。
「お前ローズじゃないだろ」
「なんでそんなことを」
「ローズだったらぬるぽって言われたら返せるよな?」
「チッかなりメイクとかも凝ったし、バレないと思ったんだけどね。こんな小童に見破られるとは」
自白か?これ某探偵漫画の犯人が、バレた時に言うセリフと似ている。
「もう正体明かして殺した方がいいわね。」
殺す?やっぱりこいつ...
「そうよ、あたしはローズなんかじゃない。なんなら神の使いでもなければ、あんたらを案内するつもりもない。あんたが倒そうとしてる魔王の組織『騎士秩序』の四天王、メアよ。私は魔王の命令で弱っちぃ勇者を殺してこいと言われてきた」
騎士秩序の四天王!?なんかダサくね?騎士秩序て(笑)
「かっこいい!」
この時海だけが目を光らせたのである。
しかしこれは困ったぞ。いくらダサい名前の組織であっても、四天王であれば、とてつもなく強いはずだ。
「おい海、ここは逃げるぞ。」
「いや戦うね。なんか右手が疼く。」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇよ!お前は元々ただの厨二病なんだ!急にビームが打てたりするはずがないんだよ!僕たちの戦闘力なんかあいつからしたらホコリ以下だわ!」
僕は海の右腕を掴んで逃げようとした。でも腕に触れた時〝何かの力”を感じた。うちに秘めている、強いオーラが見えた。
「海...まさかお前本当に...疼いてるのか」
「ああ。疼いてるよ。...これは撃てる...何かが右手から繰り出される...!」
ここで四天王をやれるかもしれない。こんなビッグチャンスはない。突破口を切り開いたのかもしれない。
「こいよ!どーせ撃たないんだから」
メアは油断し切っている。今がチャンス!
「永久凍土!」
すると海の右手が光に包まれた。しかし包まれただけだった。
「なんも放たれない」
海はがっかりした。
「ほらやっぱり何も打てないじゃない」
メアは海のことを貶したが、すごい汗だくなっている。なんならさっき防御魔法してた。光出てちょっと焦ってんじゃねぇか。
「ちょっと待て〜!」
声と同時に黒い影が茂みから人の顔が出てきた。そこには金髪の変な服着た人が出てきた。もしかしてあれが本物!?
「もしかしてローズってあなた?」
「そうよ、私が正真正銘のローズよ」
「ぬるぽ!」
「ガッ!」
本物だ!
「チッ本物登場かよ。めんどくせぇな。とりあえずあたし逃げるわ」
まずい、ローズにかまってられない。四天王逃げられる。
「おい待て...ってもういない!」
どんだけ逃げるスピード速ぇんだよあいつ。
「ローズさんってあなただったのね。ローズさんは神の使いですか?」
「いや全然」
「じゃあなんで僕たちの面倒を?」
「夢に神出てきて、育ててくれ!って言われた」
やっぱあの神クソだな。
「ならば僕たちを導いてくださいローズさん。魔王を倒しに行かなきゃならないんです。」
「言われなくても導くわよ。じゃあついてきなさい。私の本拠地へ案内してあげる。」