転移
「今日も今日とて右手が疼くぜ」
僕の後ろの席で、一人ボソッと呟く女子がいた。
彼女の名前は山石海。僕とは小学生の時からの幼馴染だ。海は中学校に入学したあたりから、突然何かに目覚めてしまい、最近はずっとこの調子だ。
僕の名前は大島蓮。ただの一般ピーポーだ。特に何か突出したものを持っているわけでもない。友達からは磨いたらかろうじて光る男と呼ばれている。
突然だが、僕は海に恋をしている。本当だったらただの幼馴染で、女と意識することはなかったと思う。でも今は意識してしまっている。そのきっかけは一年前に起きた事件が関係している。
中学一年生の頃、僕のクラスには最低恋愛マスターがいた。そいつの名前をAとしよう。Aは一年間で二股をせずに、20人の彼女を作り、全員12日で振ったという人間のクズだ。ある日Aは全く関わったことのない僕に、突然話しかけにきて、キッショい笑顔を僕に向けながら
「あんた、海の幼馴染でしょ?あんたの幼馴染可愛いからとっていい?」
と言ってきたのだ。僕はAの発言にものすごく腹を立て
「俺の彼女にお前ごときが、関わんじゃねぇ。俺はお前みたいな愛のないやつが嫌いなんだ」
と真正面から言ってやった。実際この頃の僕は、海を恋愛対象として見てはいない。しかし、この発言をしてから、なぜか意識してしまうようになってしまったのだ。
だから今では海がどんだけ厨二病発言をしようと、全て可愛く見えるようになったのだ。海が後ろの席だから、ずっと海の声が聞こえてきて、僕は毎日とっても楽しかった。
そんな日々が毎日のように続き、時は流れ1月1日。蓮と海は2人で毎年恒例の初詣に行った。近所の神社にお賽銭をし、海は
「いつか私に魔法が使える日が来ますように」
蓮は
「海との恋が実りますように」
と願った。その時、天高くから何か声が聞こえた。
「その願い、叶えてやろう」
2人は顔を見合わせ、上を見上げた。するとそこには神々しい光を放つ神様がいたのであった。
「何もんだお前!」
と海が叫ぶ。
「私は神じゃ。そこの厨二病の願いを叶えにきたのじゃ」
なぜ僕の願いは叶えてくれない?
「も...もしかして使えちゃうの?」
と海は期待に胸を躍らせて言った。海に自分が厨二病である自覚があったようだ。
「ああ、使えるさ。しかし使うには条件がある」
「条件?」
2人は顔を見合わせて言った。
「その条件とは異世界に転移してもらうということじゃ」
転移!?
「この転移ボタンを押せば、おまえさんたちを異世界へ飛ばすことができるのじゃ」
「いやまて!僕ら武術の経験なんかないですし、サバイバルの知識もないから流石に異世界転移は無理!」
「あまり乗り気じゃなさそうじゃのう。このボタンはしまっておこう」
焦ったぁ。これでボタン押されたら、僕たち確実に死ぬところだったよ。
ポチッ
「イセカイテンイボタンガオサレマシタ」
「あ」
「え?」
「間違えて押してしもうたみたいじゃ。お主ら頑張るんじゃぞ」
はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
「大丈夫じゃ。パパッと魔王倒して、世界救うだけじゃよ?そんなに恐れることはない」
何言ってんだこのポンコツ神め!魔王はパパッと倒せるもんじゃないんだぞ?異世界に行くのあんなに嫌だったのに。僕まだ死にたくないよ。海も相当ショックだろうな。
「...悪くないかもな...」
満更でもなさそぉ
次回、異世界転生!