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ダンジョンの最深部で見つけたお弁当

「弁当か……?」


 最深部のボスを倒したら、弁当箱がドロップした。

 開けると卵焼き、白米と肉団子、ほうれん草と油揚げの胡麻和え。


「一体誰が作った?」


 とりあえず、色々大変なダンジョンで疲れた私は……。


 食べた。


 ---


 事の起こりはこうだった。

 人気のないソロ用ダンジョンを攻略していた。

 なかなか意地の悪いダンジョンで不人気なのも分かった。

 スイッチを踏むと毒矢が飛んで来たり、宝箱型モンスターがいたり、モンスターは物理無効かと思えば魔法無効だったり。


「私が『聖騎士』のスキルを持っていなければ危なかったな」


 と独り言も言いたくなるほどだった。

 ではなぜそんなダンジョンを攻略しようと思ったか。

 ちょっと自棄やけになっていた。


 長年の恋人に振られたのだ。


 恋人曰く、


「聖騎士とか一人で生きていけそう」


 と。

 もちろん、私の神に与えられた職業スキルは『聖騎士』ではあって、その職業を生かし王国騎士団の副団長ではある。


 でも、それと恋人が欲しいかは関係ない。

 だからストレス解消に、長年何かあった時の為に温めておいたソロ用ダンジョンの攻略に乗り出したわけだ。


 分かるだろうか?


「恋人に振られたショックをダンジョン攻略してスカッとしたい」


 前人未到のダンジョンを攻略したらどんなに気持ちがいいだろう。

 そう思いながら、王国騎士団に所属する者が、ダンジョンにソロ挑戦するなど無責任でいいのかと攻略を諦めていた。


 でも、私が恋人に振られたことを知った団長が許可してくれた。


「行ってこい」


 と。


 私は『聖騎士』のスキルをフル活用してダンジョン攻略に挑み、ついに最深部のボスを倒した。

 そして、ドロップしたのはなんと弁当だった。

 このダンジョンは意地が悪いから毒でも構わない、と思った。

『聖騎士』の浄化スキルで毒を食べたくらいでは死なないから。


「おいしいぃぃい!!」


 卵焼きの甘さが五臓六腑ごぞうろっぷに染みた。

 弁当をこんなにおいしいと思ったのは、生まれて初めてだ。


「あの……。そのお弁当作ったの僕なんだ。ダンジョン作ったのも僕だ。へへっ、いわゆるダンジョンマスターってやつなんだ……それで」


 唐突な声に振り返ると、そこには華奢な男の姿があった。

 指先をツンツンと合わせて真っ赤になっている。


「……僕のダンジョンを攻略してくれるし、お弁当もちゃんと食べてくれるし、その……好きです!」


 私は、女の身で弁当告白という人生初の体験を、これまたダンジョンの最深部という初の場所で体験したのだった。

読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
すっごく面白かったです! テンポよくずんずん読み進んでいったら、思い込みにはまっていた楽しさ!構成がとっても好きです! 味わい深い時間をありがとうございました!
上手くミスリードされました。 オチが良いですね。 面白かったです。
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