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頼れるお姉ちゃん?

ーーコンコンコン

「ルイーゼ様をお連れしました。」


メイドが慣れた手つきで扉をノックすると、大げさな音を立てながら扉が開いた。

「待ってたわ!ルイーゼ!」

ジャンヌはルイーゼの腕を引いて、メイドから引き離し部屋の中に連れ込み、盛大な音を立てて扉が閉まった。


力任せに部屋に引き込まれ、バタンという大きい音で扉が閉まり、ジャンヌを二人きりになった合図のように聞こえたルイーゼは驚きながらも、相手からの第一声を待つことにした。


「ずいぶん見違えたわね。」

第三騎士団で会ったよれよれの白Tを着て、土埃や草木がついたルイーゼからは想像も出来ない変化だった。ジャンヌは、上から下まで驚きながらも、口角を上げながら満足そうに見つめていた。

山吹色のイブニングドレスを着たルイーゼは、髪と瞳の色と同系色で構成されており、非常に上品な雰囲気を纏っていた。

腰あたりまである髪の毛はゆるく巻かれ、化粧はせずとも美人であることが分かってしまうほどの見た目は衝撃が強く、今後の動きには細心の注意を払わないといけないとジャンヌは感じていた。


「ありがとうございます」

「さ、座って。ドレスはどう?気に入ってくれたかしら。」

「こんな素敵なドレス、ありがとうございます。正直、私も慣れていなくて・・・」

正面に座ったジャンヌからの視線が痛いほど刺さり、思わず視線を下げるルイーゼは言葉に詰まってしまった。

それを追求するようなことはなく、ジャンヌは優しく話しかけてくれた。


「あのアレクシスが面倒をみる、と言った以上、安心していいと思うわ。女所帯ではないから不安なこともあると思うけど、私とこの家のメイドたちがついているからなんでも相談してちょうだい。いいわね?」

しっかり者の頼れる姉が妹に言い聞かせるように丁寧に伝えてくれた。

「はい。ありがとうございます」

こっちの世界に来て初めて、安心をハッキリと感じた瞬間だった。


「いい笑顔ね。少しはゆっくりできたかしら?」

「メイドさんたちが頑張ってくれました・・・」

「ふふっ、優秀なメイドたちよ。」


自慢するように胸を張り、メイドたちを称賛したのちに、自己紹介をしてくれた。

「改めて、私はジョン。でもジャンヌって呼んでね♡ 

私も一応騎士団の所属にもなってるんだけど、少し特殊でね~。ま、なんでも屋さんと思ってもらえればいいわ」


複雑な事情がありそうだったが、私もそこは追求せずに飲み込むことにした。

だって、私より複雑な事情を抱えている人っていないはずだからね、ここは自分の身を護るためにも黙っていた方がいいと判断したからだ。


「分かりました。私は、るい、ルイーゼです。森の中で騎士団のジョルジュさんと遭遇して、副団長のニコラウスさんに連れられて、ジャンヌさんに出会いました。」

「そうなの。ジョルジュでよかったわね、結構優しいし、優秀なのよ?」


少しからかうようにジョルジュをルイーゼに紹介すると、ルイーゼも不審人物すぎる自分を斬ることはなかったジョルジュが優秀そうであることには同意だった。


「まあ、それは認めます。ニコラウスさんが副団長みたいで少し悲しいですが・・・」

悲しい表情を浮かべたルイーゼをみてジャンヌは首をかしげたが、質問はされることなく、メイドさんが淹れてくれた温かい紅茶を飲みながら穏やかに時間は進んでいった。


ルイーゼが頭の中で簡単に発見された当時のことを振り返っていると、ジャンヌが笑いながら話し始めた。


「アレクシスが面倒みるなんて、おもしろいこともあるわよね~」

「それなんですけど、団長さんって団長さんっぽくないですよね。参謀感があるというか・・・副団長みたいですよね。頭脳派な人ってなんとなくニコラウスさんみたいな人のサポートってイメージが強くて」


自分のイメージとは真逆だった団長さんと副団長のニコラウスさんについてジャンヌさんに聞いてみようと思い、言葉を繋げた。するとジャンヌさんは、手を叩いて一人で腹を抱えて笑い始めた。


「あははは!アレクシスがサポート?無理無理。あいつは、物語の主人公みたいなやつよ。むしろ、ニコラウスじゃないとあの第三騎士団は崩壊しているはずだわ。」


笑ったことで浮かべた涙を拭いながら、おかしいと言いながら、団長の優秀さと副団長の優秀さの違いを説明しながら、ルイーゼのイメージが全く異なることを教えてくれた。


「げ、それって・・・ニコラウスさんの方が安全な気がするんですけど・・・」

「ふふ、そんな物騒なこと言ったら、斬られちゃうかもよ?」

「ひぃ!」

ジャンヌは、面白がってルイーゼを脅してみるとしっかりと悲鳴を上げて怖がっている姿をみて爆笑していた。そんな中でもルイーゼが目を輝かせている話題があった。


「でも、あの団長さんが魔導師団長ってなると話は変わってくるんですよ!」

「そう、なの?」

首をかしげて理解できない顔をするジャンヌは、なにがどう変わるのか全く理解できていなかった。


「私、魔法を使いたいんです!だから、魔法の師匠を探していることもあって、魔導師団長ってことはそっち方面もすごいってことですよね!無表情すぎて怖いですけどね!」

魔法への熱を前のめりになり近づいたジャンヌにも伝えようと熱意を注いで話し始めた。

「怖いわよね、あれは。師匠って柄でもないと思うけど、魔力量でいったらアレクシスくらいしか適任はいないんじゃないかしら?」

ルイーゼからの熱をうまくかわしながら、ジャンヌは腕を組んで考えるように言った。


「魔力量?」

「そう。だってルイ-ゼちゃんの魔力量、ニコラウスより上よ?」

気づかなかったの?とジャンヌは、ルイーゼにとっての爆弾発言をした。


「......え?」


固まったルイーゼをみて、ジャンヌは口をつけていたティーカップを置き、慎重に口を開いた。


「アレクシスからも言われると思うけど、魔力はなるべく隠すものよ。命が一番大事だもの。」

「隠すんですか?」


全く理解できていない表情を浮かべるルイーゼをみて、同情するように悲しんだ顔をしたジャンヌは簡単にこの世界での魔力の扱い方について教えてくれた。


「魔力の扱いを学ばせてもらえなかったのね。困るのはルイーゼちゃんなのに、周りの大人はなにをしていたのかしら。」


まず、この世界では魔力を持たない人間はいないということだった。

子供が産まれると、大人たちは魔力の扱いを小さなときから教えていくこと。

魔力量が多ければ多いほど、普通の生活が出来なくなることが多いため、平均値の魔力を纏えるように訓練する国民が多いこと。

この世界でも人身売買みたいなことがあり、魔力量が多いと価値が上がるため、それを防ぐためにも魔力が多いことを隠して生きるのは常識なんだそうだ。


どの世界も出る杭は打たれるのか、と思うと私の魔法使いの目標は厳しいものになる気がした。


「…いのちだいじにを心がけます。」

肩を落としながら、ルイーゼは紅茶をすすった。


「そういえばルイーゼちゃん、成人前よね?いくつなの。」

「私はさn・・・18です。」

急な質問に日本での年齢を言ってしまいそうになったが、なんとか口を噤み、

全く自分の年齢など分からないのに、ジャンヌが成人前というからなんとなくで数字を決めてしまった。


「そう、じゃあ、四神聖に選ばれちゃうかもしれないわね!そうなった大騒ぎよ!」


ジャンヌは椅子から立ち上がると、書類机に置いてあった水晶から蝶を飛び立たせた。

ルイーゼはぼーっとその蝶を目で追っていると、目の前にジャンヌの顔があった。


「わっ!」

「お腹、さすがに空いたでしょう?ごはん、食べましょっか。」

ニコッと笑い、手をつないでいつの間にかジャンヌを部屋を出ると、宮殿のような建物の中をジャンヌと一緒に歩いていった。

心配をかけないよう気丈に振舞っているルイーゼをジャンヌは心配そうに見つめ、元気を出してもらおうと励ますことにした。


「いろんな地域の食べ物を食べてみたら、なにか思い出すかもしれないし、腹が減っては戦が出来ぬっていうでしょ?」

心配をかけさせないように声をかけてくれるジャンヌにルイーゼは感謝しかなかった。


私は、このお姉ちゃんに出会えて、幸せ者かもしれない。

ジャンヌが扉を閉めて、ルイーゼだけを部屋に連れ込んだ後・・・


「ジャンヌ様、楽しそうでよかったわね。」

「それにしてもルイーゼ様、とても磨きがいのある方だったわ。」

「着ていた服は…一応洗濯して保管しておきましょうか。」

ふふふとメイドたちは楽しそうに部屋に戻っていった。


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