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異世界生活の開始

先ほどとは変わらない姿勢で書類をみている団長とあくびをしながらソファーに座る副団長を目の前に静かな空気が漂っていた。


ルイーゼと名乗ったるいは、居心地の悪さを感じながらも待つしかなかった。


ーコンコンコン

「ジョルジュです、お連れしました。」

「入れ。ジョルジュは仕事に戻っていい。」

「はっ」

ガシャガシャと来ている装備が当たる音が遠ざかっていった。ジョルジュの代わりに入ってきたのはスタイル抜群の女の人だった。


「やっほー!私を呼んでどうしたの~」

茶髪のロングヘアーふわふわと巻いた女性が挨拶もなしに入室し、ソファーに座った。

驚いているルイーゼをみつけ、その女性は目を輝かせた。

「やだ、なにこの子、さらってきたの~?」

ケラケラと笑いながら話す女性は、アレクシスに笑えない冗談を投下していた。


「黙れ、ジョン」

「ジョン?!」

軽くあしらうアレクシスとジョンと目の前の女性が同一人物ということに驚いたルイーゼは名前を叫んでいた。

「やめてよ、ジャンヌって呼んで♡」

ガハハハと笑うニコラウスは、いつも通りという風にジョンをみていた。

「ルイーゼをうちでみる。頼んだ。」

「えっ?!」

アレクシスの方を振り返り、またもやルイーゼは声を上げた。


「さっきから驚いてしかいないな、ルイーゼ。ガハハハハ」

「安心してね!ルイーゼちゃん!」

そういってぎゅーっとジャンヌはルイーゼを抱き締めた。

ルイーゼは驚き、身体を固めた。


「ちょっ・・・こんなに冷えてどうしたの!?こんなんじゃ風邪引いちゃうわよ!」

ルイーゼの身体の冷たさに驚いたジャンヌは、両腕をさすって温めようと動き始めたが、寒いと実感したルイーゼはくしゃみをしてしまった。

「だいじょう・・はっくしゅん!」


くしゃみをしたルイーゼを見て、キッと団長、副団長へ鋭い視線を送るジャンヌ。ずるずると鼻をすすっていたルイーゼを抱き締めたまま、連れてきたと思われる副団長を責めた。

「ほら!見なさい!ニコラウス!寒いと思わなったの?こんな薄着の女の子!」

「あ、あぁ・・・森の中から連れてきたからな・・寒いと言ってなかったし・・」

タジタジになりながら言い訳を重ねるニコラウスを制して、団長にも牙を向いた。


「言わなかったじゃないの、アレクシスもよ!体調くらい分ったでしょ?」


アレクシスは微動だにせず、「だからお前を呼んだんだろ」と言い放った。


「この男どもはつかいもんにならないわね!まったく!いくわよ!」

立ち上がろうとしたルイーゼは、身体が軽くなったかと思いきやお姫様抱っこをされていた。

「お、重いですよ!歩けますから、ジャンヌさん!」

「黙りなさい。」

鬼のような形相でお叱りを受けたルイーゼは、静かにジャンヌの腕の中に収まった。

ジャンヌの腕の中の暖かさが冷えた身体に染みこんでいき、まぶたを開け続けることは出来なかった。


ーーー


「おかえりなさいませ、ジャンヌ様。」

「この子、キレイにしてちょうだい。着替えが終わったら私の部屋に連れてきてもらえる?」

「かしこまりました。」


睡魔に襲われている中でジャンヌが誰かと会話しているのが聞こえた。


「ルイーゼ様、失礼いたします。」

お湯が張られた浴槽に数人のメイドたちによってルイーゼの身体は温められ、キレイに磨かれていった。

「(あったかい・・・マッサージ気持ちよすぎるぅ~いい香りだな、これは何の花の香りだろう・・)」

「髪を洗い流していきますね。」

優しい口調の声がはっきり聞こえ、美容室でのシャンプーのように返答していた。

「は~い」

数人のメイドが砂や枯れ葉の汚れを取り、髪の毛もキューティクルが蘇るようなケアを息巻いてやっていた。髪の毛や身体といった全身を触られているにも関わらず、微動だにせず寝ているルイーゼをみて、メイドたちは、決心を固めた。


「眠られているようね、普通なら起きてしまわれるはずですのに・・・」

「よほどお疲れなんでしょうね。」

「原石のような方ですもの!ジャンヌ様の命ですから、隅々まで磨いていきますよ!」

「「「「はい!」」」」

メイドのリーダーが、ルイーゼを担当しているメイドたちに喝を入れ、より一層団結したチームプレーでルイーゼを磨いていった。


徐々に明らかになる、白い陶器肌やブロンドよりも薄いベージュのような透明感のある髪の毛は、メイドたちのやる気を底上げしていった。



うたた寝をしているくらいにしか考えていなかったルイーゼは、両腕を誰かに揉まれていることに気づくと、目の前の鏡に映った自分の姿をみて、華麗な二度見を決め、目を見開いた。

そこには、ホワイトブロンドのような髪色をしたロングヘアーが揺れ、バスローブ姿でメイドたちに香油を腕全体に塗られていた西洋人形のような女の子の姿だった。


「いや、ちょ、まったぁ!」


急に叫びながら立ち上がったルイーゼにメイドたちは驚いたが、手を止めることなく業務を再開した。

「止まらないよ、このメイドさんたち・・・」

「ジャンヌ様からのご依頼です。もう少しで終わりますのでもう少々お待ちくださいませ。」

メイドのリーダー的な人から冷静に返答され、反抗するのが無駄だと悟り、ここで騒いだら迷惑をかけてしまうと判断したルイーゼは、ストンと素直に椅子に座って身体を預けることにした。


時折、温かい風や冷たい風が髪の毛を揺らしていたが、マッサージのように丹念に香油を塗りこんでくれているのが気持ちよくなり、寒さでがちがちにかたまった筋肉たちがほぐれていくのを感じていた。


「いかがですか?ルイーゼ様」

呼びかけられ、顔を上げると、ストレートヘアーのように映っていた髪の毛は、ふわふわにゆるく巻かれ、化粧がなくとも化粧映えしている顔立ちが印象に残った。


「・・・だれ?」

るいの記憶が強い今、色白は変わらないが、ミルクティ色にも見えるホワイトブロンドと言われる髪色のロングヘアーに琥珀色の瞳、さすがに30歳とは見えない、20歳手前の女性がいた。


「とっても素敵です。ルイーゼ様、これからジャンヌ様のお部屋にご案内いたしますね。」


現状を理解できず、飲み込めないまま、メイドの言う通りにジャンヌのお部屋に向かうことにした。

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