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レベルアップ

「ふわぁ~今日もいい天気ぃー!」


レースのカーテンが靡いて、新鮮な朝の空気が私の身体を目覚めさせてくれる。

レオンの助手として3か月くらい経過した。いろんなことを言われていたけど、毎日穏やかに過ごすことが出来ていた。それに魔力を身体に巡らせる感覚はほぼ掴めた私!素晴らしいよルイーゼ!


普通は魔術書を読んで、家庭教師や学校にいって学んでいくみたいだけど、もう私は18歳で学校なんて行けるわけがない。でもなんとか平均的な貴族令嬢の所作までは、ジャンヌさんやミランダから教えてもらえて、意外と忙しかった。レオンの部屋には医学書しかないし、この国についての本もあまり読めなかった。結局、魔力循環の訓練とこっちの世界に来る前からやっていた想像力を持ち続けるための瞑想は続けている。ひとまず、魔力も安定してるみたいだし、看護師だったときの知識がレオンの手伝いには役立っているから、これがチートなのかと内心楽しんでいた自分もいた。


まだジャンヌさんのお家にお世話になってるけど、団長さんや騎士団に顔を出していないことも忘れられたのかなと思うほど、音沙汰はなかった。

でも日々変わっていることは一つだけあるんです!

それは・・・お弁当がレベルアップし続けているのだ!!!

かなり私の味覚に合うメニューが増えて最高なの!厨房に毎日言って御礼を言っているけど、それだけでは足りないくらいに美味しい。レオンにも朝食を持っていくこともあるけど、私の分まで食べられることもある。男の人だし、足りないのは申し訳ないけど、レオンも偉そうだし専属シェフがいてもおかしくないのに。

美味しい料理は正義だし、笑顔が溢れて、前向きになれる気がして、私にとっては感謝しきれない。


メイドさんたちに身だしなみを整えられることも慣れてきて、いつものように騎士団の診察室に向かう。


「おっはようございまーす!」

「今日の飯はなんだって?」

「挨拶よりお昼の心配なんてひどいんじゃないの?」


いつものように嫌味を言いながらエプロンをつけて、掃除と医療器具の整備を進めていくルイーゼはをみて、笑顔が増えてきたとレオンは安心していた。


医師としてもルイーゼの働きぶりには感心しているし、何より、俺の動きをある程度分かっていないと出来ない動きをするから、かなり働きやすい。空いてる時間は、何が面白いのか俺の医学書を読んで、知識を蓄えているようだが、その本に書いていないことまで理解しているときがある。

それに、魔力循環以外の基礎魔術は、ラーデが直接指導しているらしい。あいつが指示がいいと言うんだから、センスはあるんだと思う。


「こっちに来たのは正解だったな」


負傷した騎士たち、患者を扉まで送り、扉に札をかけているルイーゼには、レオンの声は届かなかった。

特に休憩時間を設けてはいないが、騎士たちが昼休憩の時間に合わせて昼を取ることが多い。ただ、俺がいるときはいつでも診察できるようにしているため、昼と訓練終了予定時間の17時ころには、診察室扉には札をかけておくことにしている。


「レオン、そろそろお昼どう?」

「そうだな、休憩にするか」


パチンと指を鳴らすとテーブルセッティングが完成した。

「ようやく成功か?」

「うーん、ギリ失敗」

肩を落としながら、曲がったランチョンマットを直して、バスケットの中身を並べていく。

スープとサラダに今日はハンバーガー!サクッとカリカリパティにしっかり胡椒がきいている大人バーガーだ。がぶっとかぶりつくことに慣れていなかったレオンも今ではもう私よりうまく食べられていると思う。悔しい。


「相変わらず、美味いな。さすがにここでしか食べられないな」

「ナイフとフォークで優雅に食べられるけど、美味しさ半減だね」


一度も残すことなく食べてくれて内心嬉しいルイーゼは、次は何を作ってもらおうかと脳内旅行にでていた。


「ふっふふ」

「今日も平和だってことだな」


ルイーゼが脳内旅行にでている間にレオンが昼食を片づけると、午後の診察準備を始めた。


「今日も無事に終了ですか?レオン様、ルイーゼ」

「ラーデさん!みなさんケガが多くなくて嬉しいですよね!」


灰色の長髪が窓からくる風に揺らされながら、診察室に入ってくる魔導師団副団長のワートルラーデは、今日もキラキラしていた。初めて会った日から毎日業務時間が終わると来るワートルラーデをレオンはいつも無視して医学書を読みながら、日課のようにルイーゼが淹れた紅茶を飲んでいた。なんで日課になったかというと簡単。ある日紅茶が飲みたくなって淹れたけどミランダみたいに美味しくなくて、レオン発案で毎日紅茶を淹れる練習をしている。


「前より飲めるようになったな」

「やった!」

「褒めてない」

「素直に成長したって言えばいいじゃん!」


隣に座って紅茶口論をしている二人を尻目に3つめのティーカップの中身は減っていった。


「茶葉の種類で淹れ方が変わりますから、茶葉の特徴さえ理解できれば問題ないでしょうね」

「ほらあー!」

「とても成長していますよ。ルイーゼは、勉強熱心ですから大丈夫です」

「あんまり甘やかすな」

「レオンはもう少し褒めてもいいんですぅ!」


はいはい、とでも言うような表情でレオンは医学書に目を落とし、ルイーゼの声をシャットダウンした。


「レオン様は自分にも厳しいですからね」

「なんか偉そうだけど、本当に偉そうだし。でも信用は一番できるかなとは思ってるんだ」

「ルイーゼ様の実力は認めてらっしゃいますよ」

「そうだといいけどね~」

「さ、昨日のおさらいをしましょうか」


ルイーゼとワートルラーデは向かい合わせになって、前日の訓練の復習を始めた。


目を閉じ、深呼吸を重ねて集中力を上げていくルイーゼ。

身体に纏わせている魔力はそのままに、手のひらを上に向け、軽く指を組むと、魔力を集めて同時に5属性の羽を作った。ゆっくりと目を開けると、手のひらにはそれぞれの属性を纏った羽が浮いていた。


「成功ー!昨日より安定してるでしょう?」

「一気に5属性ですか。成長率は本当にずば抜けていますね。」

「ふふっ。ラーデさんは褒めてくれるからやる気がでるのー!」

「これは団長も難しいかもしれませんよ」

「じゃあ、これはどうだ!」


勝ち誇ったような顔で自信満々に手のひらに作った魔力の羽を混ぜ合わせ、桜吹雪をイメージした魔力の花びらが診察室全体を風に乗って舞った。物に当たると花びらは霧散していった。


「これはこれは…」

「どう?実際の花びらだともっと幻想的で綺麗なんだよ」


室内はルイーゼの魔力で充満し、それに気づいたレオンが医学書から顔を上げた。

「なんだこの魔力濃度は。ルイーゼ、なにをしたんだ」

「花びらにしたの、綺麗でしょ?」

笑顔でさらっといいのけたルイーゼを素晴らしい才能ですね!と感動するワートルラーデに呆れながらもレオンは、「濃すぎるからもっと薄めろ」と部屋の隅にある鉢植えを見ながら、医学書に目を戻した。


「薄めろって言われてもなあ」

部屋中の私の魔力を薄めるって、吸うの?減らせばいいんだから固めてみる?いや、固まるのかな。


パキン


部屋の中から、なにかが割れる音がした。

「ルイーゼ!魔力をそのままにしてはいけない!」

焦った声でワートルラーデがルイーゼに言った。

「そのままって?」

え、魔力って使ったら消えるんじゃなかったっけ?!

パキパキと空中に漂うルイーゼの魔力が少しずつ固まり、キラキラとした結晶になっていった。

「いや!それでは、だめです!」

「え、だ、め…?!えぇ!」


ふと視界の右側に真っ赤な丸い実が急に実り、周りの枝が揺れながら徐々に大きくなっている気がした。


「ルイーゼ!固めた結晶を全て自分に取り込んで下さい!ではなければ…!」

「モット、マリョク、ホシイ...ホシイ...」

ワートルラーデの目の前に移動していた赤い実をつけた植物から声が聞こえた。


「ただの木だったじゃん!君どこからきたのさ!きもいって!えぇい!魔力よ戻ってこーい!」

「なんですか、それは!そんなんで魔力が戻るわけないだろう!」


浮遊している魔力の結晶たちがルイーゼに呼び寄せられるように近づき、手のひらから吸収されていった。すると、徐々に木は小さくなり、動かなくなった。


「ぷはぁーあれなに!恐怖!」

「あぁ、こんなに汚れてしまって、掃除しなければ」

ルイーゼは、ぺたんと床に力が抜けて座り込み、木が変な生き物になった事実を認めたくなかった。

ワートルラーデは、割れた鉢を直し、元の位置である部屋の隅に戻していた。


「むやみやたらに魔力を撒き散らすからだぞ」

「ちょっと、なにそれ、聞いてない!」

「あ?花びらにして魔力を放出していただけだろう。滞留させたら魔力濃度が濃くなるに決まってるだろ」

「え、そうなの」


パタンと音を立てて医学書を閉じると、床に座り続けているルイーゼの前に立ちはだかった。


「え、な、んでしょうか」

無表情のままルイーゼの頭上に大きな水の塊をつくり、割ることなくそのままを保った。

「ちょ、こわいって、水!!」

「お前がしていたのはこういうことだ」

「・・・あ!」

「これを落としてお前が水浸しになれば、魔力は使われて消失する。だが、このままだと魔力がずっと滞留していることになる。これが花びら状態だったんだ」

すぅーっと水が消えると手のひらにレオンの魔力が戻っていく様子が見えた。

「べ、ベンキョウにナリマシタ」


アクシデントもレベルアップしたルイーゼだった。



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