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ルイーゼの選択

あけましておめでとうございます!

やっとこさ、投稿再開してすることができました。ゆっくりですが、投稿進めていきます!


すこし長めです・・!そして早速、改稿すみません!



レオンの診察室に突撃朝ごはんをしたルイーゼは満面の笑みでサンドイッチを頬張っていた。

「はぁ~今日も美味しいぃ!」

「アドルフ、腕を上げたか?」

「そうなの。口に合う料理を食べられるのは最高でしょう?」


多くの薬品や書類で溢れる部屋の一角で若い男女が朝食を共にしている。

傍から見れば、親密な関係とも取られかねない状況であることに気が付くこともないルイーゼは、あと一口を残してレオンに声をかけた。


「ねぇレオン、次の課題ってなに?」

「まずは食べ終わってからにしろ」

縁から食べていったと分かるいびつな一口分のサンドイッチを見つめ、ルイーゼは惜しむように口に入れた。ごちそうさまでした、と両手を合わせ、食事をする喜びを感じていた。そんなルイーゼをみてレオンは、見た目と所作のギャップに頭を抱えた。


「はぁ。令嬢がそんなはしたない食べ方をするもんじゃない」

「じゃあ、明日からここにきていい?」

いつの間に食べ終わったのか、呆れたようにため息をつくレオンを気にすることなく、間髪入れずに質問を重ねることにした。

レオンは私の質問に表情を崩すことなく呆れた声のまま、最初に提案された、いや半ば強引だったけど、承諾していない案を推奨しているような質問が返ってきた。


「文脈というのを知らないのか、まったく。アレクシスの養子になる話はどうした。契約書も準備していたと聞いているが?」


座面と太ももの間に手を入れた状態で足をぶらぶらと揺らしながら、ルイーゼは窓に首を向けた。レオンの言葉を思い返し、アレクシスの手を取ることが自分にとって正解ではないことを目の前に座る男に言うべきかどうか決めかねていた。ただ、この世界で魔法を使うためには、権力のある家に庇護を求めなければならない。急に現れた身元不明の非常識な異世界人なんかに無条件で生き延びる策はない。どんなに現実離れした無茶苦茶な設定だとしても、今、私の目の前で起きていることはすべて真実で現実だ。逃げることは出来ない。痛みも寒さもご飯の美味しさも人の温かさもすべて、「ルイーゼ」の人生を彩る材料になってしまっている。それならば、私は、悔いのない選択をしていくしかない。


「私は、あなたの手を取りたい。ここで生きていくために」


空気が変わった。

さっきまでの天真爛漫さの欠片もない。

別人かのように大人びた雰囲気を纏い、ただまっすぐに琥珀色の瞳が俺を捉えていた。


無言を肯定と認識したルイーゼは、すくっと立ち上がり、片方の握った拳を天に伸ばした。

「よし!やるぞー!」

先ほどの空気は一瞬にして消失し、朝食を片づけると窓を開けて、物の位置を覚えるように診察室内を観察し始めた。


少しツンとする独特の香りの診察室と称されるこの部屋は、きっとレオンの城だ。この部屋の奥、朝食を取っていたソファーの周囲には、レオンが使っているだろうデスクがあり、乱雑にカルテや研究書類、医学書のような本も無数に積み重なっている。まるでジェンガだ。どこに重心があるのか分からない。書類には、たくさんのメモが書かれており、見たことのない言語や書き殴られた数式のようなものが見えた。


診察室をはいってすぐには、待機できるように長めのソファーがあり、少し入ると、診察するためのデスクや椅子、休むためのベッドが置かれていた。レオンのデスクとは異なり、無駄なものはなく、すっきりとしていた。ベッドのシーツも皺ひとつなく、真っ白でピシッとしている。

薬品や器具は専用の棚に収納され、ちゃんと医者やっているんだなと感心してしまった。


「魔力循環は常に続けろ」

白衣を羽織ったレオンは、私の知らない医者の顔をしていた。

ぼけーっとその姿をみていると、怪訝な顔をしたレオンから業務が下りてきた。

「ひとまず、掃除と書類整理をやってくれ」

「はいっ!先生!」


敬礼をする勢いで返事をし、どこからともなく出してきたメイド用のエプロンを付け、仕事を始めた。

掃除はほぼすることがないくらいにキレイで、レオンのデスク周囲の書類整理をすることにした。

本やら書類やらごちゃまぜになっているため、本と書類に分け、そこから種類別に整理していくことにする。


「へー、これがこの世界の医学書みたいな感じか。やっぱりカラー画像なんてないよね。手書きでこの量は恐れ入るわ。臓器のデッサンの授業があるなんて先輩言ってたっけな。」


本の大きさも厚みもバラバラ、宝石がついている高いに決まっている本から古文書がというくらいに古びた本もあり、取り扱いには要注意だ。それにパラパラと中身をみるとすべて手書き。気の遠くような作業を想像し、お疲れ様です、と勝手に作者たちを労った。

書類たちは、カルテとそれ以外に分けていった。個人情報保護法はどこいったんだ、本当に。カルテはどうやってまとめようか。カルテ番号があるわけでもなく、騎士団関係者の所属なんて知らないし、困ったものだと腕を組んで大量に積んだカルテとにらめっこをしていた。


「へっ?!」


目を見開いたルイーゼは、素っ頓狂な声がでた。カルテに意思があるの・・・?


「まとめられているのが分かれば、こうやって自動で戻る」

レオンは診察しながら、当たり前とでも言わんばかりの声色で端的に説明してくれた。

やっぱり魔法って便利でかっこいいいいいい!でも、仕事、終わっちゃったな。

本と書類で溢れていたレオンのデスクは、診察デスクと同様にスッキリ片付いていた。


暇になったルイーゼは、診察室入口のソファーに座り、患者が来た時の案内役をすることにした。

毎日のように訓練でケガをした騎士たちが来るようだが、今日は5人と倍以上に少ないらしい。


診察室に来る騎士たちは、ケガをしているにも関わらず、恐る恐る診察室を窺いながら入ってくる人たちばかりだった。


「あのぉ~」

「さっさと入ってこい」

偉そうに座っているレオンをひと睨みして、いまだに入ってこない騎士に営業スマイル全開で声をかけた。

「こんにちは!こちらにどうぞ!」

「え?オンナノコ?」

「お、とこではない、ですね?」

呆然と立ち尽くす騎士と入口で質問を質問で返していると、奥からレオンに入室を催促された。


「お前もっと筋肉つけた方がいいぞ」

問診と触診をしながら、ぶっきらぼうに言うと次々と薬草を棚から出し、飲むための薬草と貼り薬を患部に貼り、騎士を帰らせた。


レオンがカルテに診察内容を記載しているのを見ながら、ルイーゼは、気になっていたことを聞いた。

「魔力、使わないの?」

「薬で治るものに魔力は使わない。これは基本だ」

「ふーん」

記載途中で羽ペンを置いたレオンは、大きな息を吐いて横で覗いているルイーゼに体を向けた。

「傷を治すってのは、簡単なことじゃない。人を消耗品にしたいのか。魔力、止まってるぞ」

忘れていたと言わんばかりに目を見開き、ルイーゼは深呼吸をして魔力循環を再開させた。出来ることがなくなったので、レオンのデスクで整理した医学書を読み始めた。


互いに無言のままゆったりとした時間が進み、カーテンを揺らす冷たい風にレオンは肩をすくめた。いつまで換気をしているんだと医学書に夢中になっているルイーゼを一瞥し、窓に足を進めると、昼前の訓練が終わった騎士たちの会話が聞こえてきた。


***


「おい、聞いたか?昨日、騎士団の悪魔ことレオン先生が笑ってたらしいんだ!人体実験に成功したらしくて、絶対に今日はケガをするなと全員が気を引き締めてたろ?大丈夫だったのか?」

「今日はいつも通りにみえた。ただ・・・」

「「「ただ・・?」」」

「女の子がいたんだ。可愛かった」

いつもは訓練後バテてるこいつが、にやにやしてるだと・・・おかしい

「お前、気づかないうちに人体実験されたんじゃないか?あんな消毒臭いところにそんな女がいるわけないだろ」

まったく、冗談も大概にしろっての。悪魔の根城に女の子なんていたら、とっくに命なんてないはずだ。

なのに、こいつは。まさか本当に可愛い女の子がいるのか?

「見間違えるわけがない!あんなに可愛い子、見たことがない!」

女に飢えている同志たちは俺らの騒ぎを聞きつけて、悪魔の根城を覗きにいくことにした。

「分かった。いいか、お前ら。これから根城へ向かう。覚悟はいいか」

「「「「おう!」」」」

訓練の時よりも統率のとれた騎士たちは、鬼気迫る表情で建物内に入っていった。


***


「暇だし、遊んでおくか」

レオンは口角を上げた。診察室の入口には、数人の気配が蠢いていた。


「こっちに来い、少し診察しておく」


ルイーゼは医学書を置いてレオンの目の前に座ると、レオンはルイーゼの手や首に触れないくらいの距離で手をかざしたりしていた。ルイーゼは、魔力循環を止めないよう意識し、じっと座っていた。


「お、おい!!本当だ、あの悪魔の根城に女がいる!!!」

「本当だったんだな、でも顔が見えない、本当に可愛いのか?食堂のおばちゃんだったりしてな」


入口の騎士から距離感の近い親密さがあるように見えるよう動き、驚く顔をした騎士たちの顔も見え隠れしており、レオンはうっかり笑ってしまった。そんな姿をみて、首をかしげたルイーゼが口を開こうとすると、入口から叱責している声が聞こえた。


「貴様ら!なにをしているのだ!騎士ならば、威厳のある立ち姿を見せないか!」


突然の大声にびくっと肩を揺らし、ルイーゼは野次馬根性で椅子から離れた。

入口の前には、仁王立ちの長髪メガネが騎士たちの顔色を青に染めあげていた。


「ま、ま魔導師団副団長ぉ?!!」

「な、なぜ魔導師団副団長様がここへ?」

「ほう、私がここに来てはならぬと?」

「い、いえ!そういうことではなく・・・」


もじもじとしている騎士たちは、長髪メガネに歯向かうことは出来ないようだ。

可哀想に。南無南無。


「入るのか入らないのか!はっきりしたまえ!」

「「「す、すみませんでした!」」」

「まったく。これだから脳筋のやつらは気に食わん」

慌てて逃げる騎士たち数人の後ろ姿を可哀想にと見送りながら、頭頂部に刺さる視線に気づいてゆっくりと見上げた。


「貴様!ここで何をしている!」

質の良い革靴に黒地にシルバーの縁取りがあるジャケットとマントを羽織った、長髪メガネが私を視線で射殺そうとしていた。いや、むしろこの圧で今日の私は死んだも同然かもしれない。偉そうなこの人が満足するような答えが思いつかず、レオンに視線を送るも、俺は関係ないというようにしっしっと手で払われてしまった。


「おい!答えないか!」

全身がビリビリとするくらいの大声で催促され、ルイーゼは腹を括った。

動け動け!私の身体!これは、私の命がかかっているんだから!!!

硬直した身体をなんとか奮い立たせ、セバスチャンに習った挨拶を思い出し、全力でやった。


「お、お初にお目にかかります。ルイーゼと申します。レオン様の助手として本日よりこちらに勤めさせていただいております。」

身体が軋みながらもなんとか姿勢を保つが、まだお気に召さないようだ。

「家名は」

「…現在、ヴァロリアント家ジャンヌ様にお世話になっております」

「家名は、と聞いているのだが?」

「家名は......」


えええええ!どうしよう!家名ないよ!ってか、早く面を上げさせて!腰、足が悲鳴をあげてる!この人絶対、貴族じゃん!また平民いびりが始まる!あ、バランス崩しそう。踏ん張れ!

ジャンヌさんの名前も出したら収まると思ったのにぃ!


「か、家名は」

頭を下げたまま、考え続けるがジャンヌ以外の家名を覚えていない。

これは、詰んだ。


「言えないのか。まさか、家名がない、とは言うまいな?貴族以外でこの場所にいてよいのは、騎士団団員のみ。お前のような女がいていい場所ではない!」


口が開けず、黙ったままのルイーゼから視線をレオンに向けた。

「レオン様、いつから助手なんぞを雇われたのですか?危険です!警備兵に突き出して参ります!」

長髪メガネは、カーテシーをしたままのルイーゼの襟を掴み上げ、診察室の外に出そうとした。

「痛い!痛いってば!やめてよ!」

髪の毛も一緒に掴まれたために痛みを我慢できず、ルイーゼは大声で反抗した。

「女が大声など。見苦しい!ここへは立ち入るな!」

痛みで涙を浮かべ、感情が高ぶったことでルイーゼの魔力が長髪メガネを敵と判断した瞬間、レオンがやっと口を開いた。


「はぁ、落ち着け。そいつは俺の助手らしい」

レオンの声がピリピリとした空気を割くと、長髪メガネの力は急に弱まった。

「し、しかし!家名を名乗らず、身分も明かさないのですよ?」

「俺がいいと言っている」

その静かな声は長髪メガネを制止し、手を離してそれ以上の言及は避けた。

レオンの一言でやっと長髪メガネから逃れられたルイーゼは、走ってレオンの後ろに逃げこみ、恨み節を吐いた。

「あいつなんなの。騎士団は暴力男しかいないわけ?早く助けてよね!痛かったんだから!」

首の後ろをさすっているとレオンは、その上から手をかざし、治癒魔法をかけてくれた。

「この選択に後悔するなよ?」

レオンはいじわるに口角を上げた。




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