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レオンとルイーゼ



ジャンヌの家の前でアレクシスを黙らせたことに笑いが止まらないレオンは、自分の城でもある医務室で鼻歌を歌いながら診察をしていた。その姿をみて、治療を受けた団員から怯えられていた。


「ふんふ~ん♪」

「え…?」

「もう治ったぞ~、もう来るなよ~♪」

「あ、はい。ありがとうございました?」

訓練で手当てを受けに来た騎士たちは、レオンの鼻歌なんて聞いたことがないからか、いつも以上に恐怖を覚え、震えながら治療を受けた者もいたほどだ。いつも通りに治療のレベルは高い状態であるが、あまりの不気味さに、ここ数日は医務室には近づかない方がいいと、騎士団全体の噂となっていた。


***


レオンが診察したあと、ベッドの中で魔力循環の練習をしていた。

あの星空に花畑、魔力って本当になんにでも変えることが出来るなんだ、と意気込んでいた。

寝る間も惜しんでレオンが帰ってからずっと自分の手をみながら、魔力の光を薄く引き出し、身体に纏わしていくということを幾度となく繰り返していた。

「これかな、いや、こんな感じ?でもうまくいってる気がするんだよな…循環、循環、魔力を自分の身体に纏わせて一定方向に動かす、っと。こんな感じじゃない?!いけてる!いけてる!レオンに見せにいかなきゃ!」

ガバッとベッドから起き上がり今にも走り出しそうなルイーゼは、扉を開けたメイドたちと目が合った。目を見開きながらメイドたちは足音を立てずに近づき、あっという間にルイーゼを捕まえた。

「ルイーゼ様、おはようございます」

「ルイーゼ様、そんなに急いでどちらに行かれるのですか?」

「あ…えっと…?」

ルイーゼをゆっくりとベッドに座らせると目線に合わせて優しく笑いかけてくれた。


「あまり寝ておられないようですが、ご体調はいかがですか?」

色白が故、目の下のクマが青白く色づき、寝ていないのが明らかなルイーゼをみて、チクっと刺すように質問をすると、急いで目元に手を当て指の隙間からメイドたちを覗いた。

「ひ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。それにレオンに御礼を・・」

「ルイーゼ様。ひとまず、湯あみをしましょう。その恰好では風邪を召してしまいます」

ルイーゼはメイドたちには黙って従い、身体の芯までポカポカと温まり至福の時間を過ごした。


「レオン様にはご連絡しておきますね」

「ありがとうございます!朝ごはんは、手軽なものを持って行ってもいいですか?」

「朝食を持っていかれるのですか?」

驚くような顔のメイドを見て、まさか家では食べずに持っていくだなんてはしたなかっただろうか。でも、いまはこの時間をも惜しいのだ!さっき出来た魔力操作を早くレオンに見せたいの!

「レオンが食べなかったら私が食べますけど、早く会いたいんですっ!」

「まぁ、楽しみですね」

うふふ、と微笑みながら、ルイーゼは椅子から降ろした足をぷらぷらと動かし、レオンのところに行くことへのわくわく感をメイドたちも察していた。

そんな私の気持ちを察してか、冬の装いには珍しく、春色のワンピースにブーツとコートを着て、ふんわりと巻いた髪が春の暖かさを感じるようだった。

アドルフのつくった朝食代わりの軽食が入ったバスケットを持ち、玄関でいってきますと挨拶をすると、いつの間にかセバスチャンが隣に立っていた。


「わっ!セバスチャン!」

「おはようございますルイーゼ様。体調は良いようで安心いたしました。私も用事がございますので、ご一緒しても?」

セバスチャンはバスケットを持ってくれ、護衛のように一歩下がって一緒に歩いてくれた。

「もちろん!ありがとうございます」

「いえ、私はなにもしておりませんよ」

「ふふっ、とても優しいんですね」

まっすぐ前を向いて進んでいくルイーゼを見て、セバスチャンは目を細め、口角が上がった。

「ねぇ、セバスチャン。レオンってやっぱいすごい人?昨日ね、天井を星空にしてくれたの!」

天井の星空を思い出しながら身振り手振りですごさを伝えようとした。

「そうでしたか。レオン様がそこまでロマンチストとは思いませんでしたね」

「レオンっていじめっこみたいで初めて会ったときはあんまり好きじゃなかったんだけどね」

「ルイーゼ様は可愛らしいですから、つい構いたくなってしまうのかもしれませんね」

穏やかな時間を過ごしているとあっという間に騎士団本部へ到着してしまった。セバスチャンからバスケットを受け取って分かれた。

「セバスチャン!気を付けてね!」

「ええ。ルイーゼ様もですよ」

「はーい!」


笑顔で片手を私に振り、診察室に向かうルイーゼ様は、令嬢らしからぬ行動をする方だが、非常に大人びたところも持ち合わせている不思議な女性だった。ここ数日でレオン様のところへ向かう表情とアレクシス様のところへ向かう表情は全く変わっていたことに改めて確認できました。やはり、あれはまだ、私が預かっていることにしましょう。私が責任を持って。


ルイーゼはセバスチャンと分かれ、足早に診察室に向かっていると不審な顔をして出ていく何人かの騎士たちとすれ違ったが、立ち止まらずに開いていた扉をくぐった。

「レオン!おはよう!」

「おい、もっと静かに入ってこれないのか。見た目は貴族令嬢だぞ」

レオンは呆れるような声でこちらも見ることなく、私は怒られた。それでも私はめげずに声をかけ続けた。

「朝ごはん!ここで食べてもいい?」

「はぁ、会話の仕方も忘れたのか?まったく、大して寝ていないんだろう、どうせ」

明るい顔がすっと真顔になり、目線を伏せたルイーゼの顔が勝手に上がった。目の前には前髪で目の合わないレオンがいて、私の目の下のクマを確認していた。

「まさかとは思うが、ずっと練習してたわけじゃないよな?熱出てたのにな?」

「うっ…」

レオンと目を合わせないように目線を泳がせるルイーゼは、魔力の循環を始め練習の成果を見せることにした。ぼわぁっと全身を光らせ、魔力循環をやってみせた。

「うまくなった、でしょ…」

昨日の手元だけが淡く光っただけとは思えないほどに、魔力が身体に馴染み、無意識にでも魔力を循環することができていた。


「......おいおい、どれだけやったら一晩でここまで馴染むんだよ」

「じゃあ合格?!」

「まずは身体を休めろって言ったよな?」

分かってんのか?!というようにルイーゼの頬がこれでもかというほどに伸びていった。

寝る間も惜しんで練習をしたとしてもこんなにも早く魔力が身体に馴染むとは思っていもいなかったぞ。これはさすがに才能か。アレクシスに言ってたよりも早く魔力管理を習得できそうだ。


「毎日8時間は寝ること。これが次の課題への条件だ」

「…そんなことでいいの?」

「昨日、大して寝ていないやつがなにを偉そうに」

「…おっしゃる通りです」


肩を落としているルイーゼを横目に、レオンはパチンと指を鳴らした。

するとランチョンマットが敷かれ、簡易的なテーブルセッティングが完成していた。

「レオン!すごい!私もパチンてしたい!」

「まずは食べるぞ。わざわざ持たせてくれたんだろ?」

「うん!ここで食べたいってお願いしたの!」

「甘やかせすぎだな」

「天井の星空!あれ私もやりたいから!先生!一旦休戦です!」


無邪気にバスケットの中で待っていたサンドイッチやスープを見るたびに目を輝かせているルイーゼに影響されたのか、レオンは自然と笑えていた。




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